第22話 神父①
「自分で歩ける、降ろしてくれ」
「だめだ、時間がかかるだろう。」
エルの頼みをショウは一蹴した。エルはその後何度も降ろせと言ったが、ショウは聞く耳を持たなかった。
「あのダイコン、アキラは連れて行くと言ったがずっと手に持ってるつもりなのだろうか?」
教会へ走りながら、その道中にショウが聞いた。
「なんでも袋プレゼントしてあげないとな」
えるがそういった。
"なんでも袋"というのは物体収容が出来る袋の事で、規定量ならなんでも入れられるのだ。
「そういえば、ショウはすでに持っているのだな」
私は魔物のクリスタルをショウが袋に入れていた事を思い出した。
「あれは、私が渡したごくごく普通の袋だよ」
エルがそう言う。普通の袋にしてはやけに多く入っていたような…?
「女神様がくれた俺のスキル、物体収容なんだ。だから袋に入れたフリしてスキル使ってる」
ショウが説明を付け足した。
「物体収容のスキルはバレたら厄介だからね」
エルがそう言って笑った。
しばらくして、やっと教会へ着いた。歩いてなら1日はかかるだろう道をよく半日で来たと思う。
扉を開けようとノブに手を近づけた瞬間、勢いよく扉が開いた。モンスターがふっ飛んできて、扉にぶつかり開いたようだ。私はそっと私の中をのぞいた。
「オイ、よくも神聖な教会に入ってきやがったな」
そういいながらズルズルと大きいハンマーのようなものを引き摺って神父が出て来た。
それを見たモンスターはふらふらとしながら遠くへ走り去ってしまった。
[あれは、神父なのか…?]
ショウが小声でそっと呟いた。
「エイダン?何があったんだい?」
エルが彼にそう話しかけた。
「ん?なんだ、えるじゃあねぇか。どうしたんだそのザマは」
彼はそう言いながらそっとエルの傷口に手をかざした。するとみるみる内に傷が消えた。
「ちょっとした喧嘩さ」
エルが彼の問いにそう答えた。
「ちょっと換気しようと扉開けてる間にあの野郎が入ってきてよぉ」
そう言いながらそっと視線を持っているハンマーに移した。
「やべっ、神像の武器取っちまった」
そう言って慌てて持っていた武器を神像の手に持たせた。
「なんだお前ぇ、見ねぇ顔だな」
ガラ悪く彼はショウを睨み付けた。
「そらつい最近ここへ来たからな」
ショウは冷たくそう答えた。どうしてすでに仲が悪いんだ…。
「おい、年上には敬語使えよ。そんな事もわからんやつが勇者だなわて笑わせる」
「なんだ、勇者だと知っていて尚その態度か。それに多分俺の方が年上だぜ?」
「あ"?お前ぇいくつだよ」
「今年で35になった」
「お、思ったより年上だな…悪かったえっと…?」
突然エイダンはおとなしくなった。
「影内宵だ」
そう言ってショウはそっと手を差し出した。
「俺はエイダン。今年で29になる」
彼は差し出された手を握りそう言った。
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