第20話 宝箱

エルがそっとクリスタルを拾い上げた。

その途端にボスは灰のように消えてしまった。


「ライリー、立てるか?」

魔法を打った後、座り込んでしまったライリーに手を差し出した。ライリーは頷いてそっと私の手を取った。


「バロンの様子を見にいこう」

エルがそう言って扉に手をかけた。

その瞬間、扉が勢いよく開いてエルがバランスを崩した。


「すまない、大丈夫か?」

扉を開けたのはバロンだった。

「怪我は…?」

「治ったよ。…どうしてお前がそんな顔するんだ?」

ひどく申し訳なさそうな顔をするライリーを、バロンはそっと撫でた。


「ごめんなさい、私のせいで…」

ライリーが言い終わる前に、エルが止めた。

「バロンが怪我したのはアタイを庇ってくれたからだよ」

「でもその原因を作ってしまったのは俺だ」


「やめろよ。俺は無事で、ボスは倒した。他に何が不満だ?怪我なんて戦士やってりゃいくらでもするぜ?その度に誰かが責任取ってくれんのかい?」

バロンが笑いながらそう言った。それでも納得しないみんなにバロンはそっと笑った

「大丈夫だよ。俺ァこんなとこで死なねぇよ…ってオイ、泣くなよ」

バロンは慌てて、アキラを撫でた


「ごめん…」

アキラがそう呟いた。

「こら、今やめろと言ったばっかだろ?さ、ボス倒したんなら次はお宝探さねぇと。ぼーっとしてると置いてくぜ?」

そういってバロンは先へ進みだした。


ボスの部屋を少し進んだ先に小さな部屋があった。

「行き止まり…だね」

ライリーが少しがっかりしてそう言った。

「おかしいな、ここにあるんだけど…」

エルはそう言って部屋を見渡した。


「一足遅かったり?」

「そういうこともあるわよね…。なんだか損した気分だわ」

みんな少しがっかりしている。私も残念だと思いながら部屋を出ようとした。


「いや、ここにあるんだよ」

エルが何もないところを指さしてそう言った。

「もともとあったけど今は取られたんでしょう?」

ライリーの言葉にエルは首を振った

「見えないけどあるんだって!」


「俺は何も見えないけど、魔法がかかってるってことならアレが使えるのでは?」

ショウの言葉にライリーはハッとして"魔法を止める魔法"を使った。


すると先ほどまで何もなかった空間から木製の箱が出てきた。

「すごい…、なんでわかったの?」

ライリーにそう聞かれたエルは少し気まずそうにして、目を背けた。

「さっき足ぶつけたんだよね…そ、そんなことより早く開けなよ」

そう言ってライリーを箱の前まで引っ張った。


ライリーが開けた箱には確かに靴の汚れがついてあって、中には古びた本が出てきた。


「アタイがぶつかったから古くなったんじゃないよ?」

エルが慌ててそう言った。

「それは魔導書だな。かなり古いが、読めれば使えるだろう」

バロンはそう言って、開けるよう促した。


「これは…」

「毒浄化の魔法だ」

エルが本を覗き込んでそう言った。

「これで少なくとも道中で食中毒にかかることはないわけだ」

バロンがそう言ったのにエルも頷いた。


「じゃあ帰ろう、僕お腹すいた」

アキラがそう言って来た道を戻りだした。それにみんなが続く。


「それで、私の処遇は如何に?」

日の差す広場まで戻ってきた時、ファルシュがそう言った。正直彼の事をすっかり忘れていた…。みんなもどうやらその様子で微妙な空気が流れた。

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