★ボス戦 another

【エル】

しばらくボスの攻撃を避け、ボスより高く跳び、剣や矢を刺すというのが続いた。

そしてショウがボスのテッペンに弓を射た。


その瞬間ボスが叫び、何が何やらわからぬ中、ボスが手を振り上げているのだけが見えた。

「あぁ、避けられないな」なんて悠長なことを考えていたら突然、バロンがアタイの体を力強く押した。


「バロンっ!」

アタイの声が口から出るよりも数秒先に、ボスの振り上げた手がバロンの体を裂いた。


頭が真っ白になって、ただ鼓動だけが聞こえる。

その時、視界の端からアルヴィンが走ってくるのが見えた。



「ファルシュは怪しいから、"モナルカ"って名前だけ教えた。しばらくの間はエルもルカって呼んで」

ファルシュを紹介されたその後、アキラからそう頼まれた。そんなことも忘れて、気付けばアルヴィンの名を呼んでいた。



アルヴィンが大丈夫か?とアタイに聞いた。

正直大丈夫ではなかったのだが、つい強がりを言ってしまった___



【アキラ】

どうしようもなく、ただ逃げるだけ。バロンやエルのように、飛んで刺すなんてこと出来ない。それでも勇者として来たのだから、戦わないなんてこと、出来るわけない。

少なくとも、そんなことしないだろう。


突然、ボスが苦しそうな声を上げた。

どうなったのか、まったく分からなかったが気付けばバロンが血まみれになって倒れていた。


あぁ、どうしよう。

もし僕がもっとちゃんと戦えていれば、バロンは怪我をしなかった?

もし僕がバロンを庇えるくらい強かったら、バロンは無事だった?


"勇者"なんて持ち上げられてさ。結局なんにもできていないじゃんか。僕は必要だった?


なんて考えていたら、エルがそっと隣に来て

「アキラ、大丈夫だよ。」

と呟いた。僕の声が聞こえていたのだろうか?


「魔法を使う準備をしていてくれ。ここぞって時にありったけを打てる準備を。」

エルにそう言われて僕はそっと頷いた。


エルとバロンは10年来の知り合いらしい。僕ならきっと、正気では要られない。強いな。僕も強くなりたい。


そんなこと思っていたら、エルがそっと高く飛んでボスに剣を突き刺した。その刹那、ボスが光に包まれた。


何が起こってるのか全く分からなかったけど、今なんじゃないかなんて、そんな気がして僕はありったけを込めて魔法を打った。



【ショウ】

俺がボスのテッペンに弓を射たその瞬間、ボスの叫び声が響いた。

そしてバロンを目掛けて、ボスが手を振り下ろした。


しばらくそれを呆然と眺めていたが、エルの叫び声にハッとした。


俺が弓を射たせいで、バロンが怪我をしてしまった。

ファルシュなら怪我を治せるだろうか?

もし怪我が治らなかったら…、いや、怪我が治ったとしても。バロンは俺を許してくれるだろうか…?


目の前が真っ暗になって、弓を握る手に力が入らなくなった。音さえ聞こえなくなって、ただ心音だけがうるさく響く。


どのくらいたったのだろうふとエルと目が合った。

その時、エルが俺の名を呼んだ。

「刺すから、射て!」

そう言われて、ハッとした。


「弓はどんなに弱くても、一瞬で戦況を変えられる、いい武器なんだよ」

エルが2人になったときにそう言っていたのをふと思い出した。


俺はエルが剣を刺すその瞬間、エルとバロン、ルカから教わった魔力の限界を矢に込めた。

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