第19話 ボス戦
__ボスの倒し方に気づいた一行はついに、ボスの下へとたどり着く__
「さぁ、入るよ」
そう言うとエルは扉を開け、バロンと共にボスの元へ走った。
「アスタナドラコって名前のくせに全くドラゴンらしくねぇと思っていたが…」
「コイツは紛れもないドラゴンだねぇ」
バロンとエルが言う通り、先程まで見ていた魔物たちとは違い、翼の生えた黒い大きな体から、2つの光を怪しく放っていた。
「飛ぶってのは予想外だが、倒し方は変わんねぇな」
そう言うとバロンは壁を伝い上へあがると、ボスの頭に剣を突き刺した。
ボスの苦しそうな声が洞窟内に木霊する。
私達は洞窟の少し上にあった出っ張りの上でしゃがんでいた。
[ルカ、アイツ、頭に刺さった瞬間…ほんの一瞬だけだけど魔力を吸い込むのを止めた]
突然ライリーがそっと小声で呟いた。
[止めたってずっと見ていたのか?]
私がそう言うとライリーはそっと頷いた。
[ずっと微力な魔力を出してたの。ずっと吸い込まれ続けてたんだけど、バロンが刺した瞬間一瞬止まった。…あっ、もう出してないから安心して]
私はライリーを見つめた。子供だと思っていたが、頭のキレる賢い子だ…。
[もう一度誰かが刺した、その一瞬間で"魔法を止める魔法"を出せるか?]
私の質問にライリーは頷いた。
[やってみるわ。任せて!]
ボスがエルとバロンを追うその瞬間、ショウの矢がボスを目掛けて飛んだ。
「アスタナヴィーツ(魔法を止める魔法)!!」
刺さる瞬間、ライリーが魔法を唱える。
しかしライリーの魔法はボスに当たり前に吸い込まれてしまった。
[そうか、唱えてから当たるまでをあの一瞬でこなさなきゃいけないのね]
ライリーがそう呟いた瞬間、ボスの叫ぶ声が耳をつんざいた。
慌ててボスの方を見ようとした。その時、私より先に覗き込んだライリーが小さな悲鳴を上げた。
[どうしよう、私のせいだわ…ごめんなさい、ごめんなさいっ!]
ライリーの様子が明らかにおかしい。私は嫌な予感が強くなって、そっと下をのぞいた。
私はソレを見て、慌てて下へ降りた。
「アルヴィン!」
エルがかなり動揺した声で私を呼んだ。
「彼は大丈夫だ、ファルシュのもとへ連れて行く!一人で大丈夫か!?」
私の問いにエルは頷いた。
「ショウもいるから、大丈夫だ」
私はエルの言葉に頷いて、そっと彼を担ぐとファルシュのもとへ走った。
「ファルシュ、頼む!治せるか?」
「えぇ、ですが少し時間がかかります。貴方は戻ってください!」
ファルシュの言う通り、私はライリーの元へ戻った。
「バロンは…どうだったの?」
ライリーが震えた声で私にそう聞いた。
「ファルシュが治してくれるよ。大丈夫だ」
「私のせいだわ…ごめんなさい、本当に…。できると思ったの…」
ライリーはひどく動揺していた。
「ライリー。もう一度、今度は当てるまでを一瞬の内にできるか?」
私はライリーにそう聞いた。ひどい話だとは思う。だがこれはライリーにしか出来ない。そしてボスを"魔法を止める魔法"を使わずに倒すのは恐らく不可能だろう。
「ショウ!!」
突然、エルの怒号が洞窟に響いた。
「刺すから、射て!!」
エルがそう言うと壁を伝い、高く跳んだ。
「ライリー、エルが指したら、もう一度やってくれ。大丈夫だ、バロンもエルも、お前が思う以上に丈夫にできてる」
ライリーは杖をギュッと握ると静かに、だけど力強く頷いた。
エルがボスのテッペンに剣を刺したその瞬間、ライリーが唱えた魔法がボスの体を纏った。
ボスの体がわずかに透けたその瞬間、紫の閃光が宙を走り、そして当たりが白く光った。
何が起こっているのか分からず、そっと目を開けるとボスの透けた体の中にクリスタルがあるのが見えた。そしてソレを弓が貫いている。私は慌てて持っている剣をソレに目掛けて投げた。
強い風が吹いて、私の投げた剣がスピードを増し、クリスタルのヒビに刺さった。
その瞬間、ボスの苦しそうな叫び声と共にクリスタルが崩れた___
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