第17話 洞窟

__ファルシュを仲間に加えるか否かを判断するため、共に森の奥へ向かうことになった一行。エルが強く否定する訳とは__


「みんな揃ったわね、さぁ行きましょう!」

若干の気まずい雰囲気を打ち消すように、ライリーが元気にそういった。


そうしてしばらく森の奥を歩いたが、何とも出会うことなくただ時間だけが過ぎていった。

[ねぇ、ルカ]

ライリーが近づいて来て、小声でそっと私に声をかけた。

[どうしたんだい?]

[なんだか気まずいね。]

そう言ってライリーはクスクスと笑った。


[アキラはショウと話してるし、バロンはファルシュに絡まれてるし…]

そういって突然、当たりを見渡した。

[ねぇ、ルカ。エルは?]

ライリーがそう聞くのとほぼ同時に近くから声がした。


「みんな、たぶんこっちだよ!」

その声の方を見ると、エルが洞窟の前に立っていた。

「かなり深そうだな」

バロンがそう言って洞窟を覗き込んだ。エルもそれに頷いた。

「なんかヤバそうなのがいるような気がすんだ。どうする?」

「このあたりに全くいなかったんですもの、きっとこの奥よ!入ろうよ!」



洞窟の奥は薄暗い、細い道が続いていた。ショウがどこからか松明を2本取り出し、それをライリーとファルシュに手渡した。

「ライリー、これ持っててくれるか?ライリーなら魔法で付けたり出来るだろう?」

「ええ、任せて!」

ライリーはそう言って松明を受け取り、火をつけた。

「ファルシュも持ってくれるか?戦える人が持つより、治癒役が持っている方がいいと思うんだが…」

「お任せください。ライリー、こちらにも火をつけてもらえるかな?」

ライリーは「任せて」というとファルシュの持つ松明にも火をつけた。


「私前を歩くから、ファルシュは後ろをお願いね!」

ライリーはそう言うとエルのもとに駆け寄った。

「エル!一緒に前歩いてくれる?」

ライリーの言葉にエルは笑って頷いた。


「アキラ、共に歩いてくれるか?」

ファルシュの問いにアキラは少し戸惑って、

「あー、悪いけど僕は遠距離武器を持たないからさ。ライリー達の後ろにいるよ」

と断った。


結局先頭にライリーとエル、その後ろにアキラと私。さらに後ろにバロンとショウ、後尾にファルシュが歩くことになった。

「治癒役が最後尾というのはいかがなものでしょう?」

ファルシュが不満を漏らした。

「大丈夫だ、何かあれば私が助けるし、遠距離ならショウがいる。お前はただ明かりを灯してくれればいい。」

バロンがそう冷たく言った。なんだかみんなファルシュに対して棘がある気がする…。


突然、前方で大きな音がした。

その刹那エルが短刀を抜いた。当たりに緊張が走る。

[ライリー、松明を消して]

エルがそっとライリーに伝えた。ライリーは慌てて灯りを消した。


[ちょっと見てくる。アキラ、来てくれるかい?]

アキラは静かに頷き、2人で先へ進んでいった。

[ルカ、どうする?]

[帰ってくるまで待とう。ライリー、後ろの松明も消してくれるか?]

ライリーは頷くとそっと灯りを消した。

[暗い灯りもつけれるよ?]

ライリーがそう言うのでお願いした。ライリーは微かに周囲が目視できるほどの灯りを灯した。


しばらくして金属のぶつかる音がして、ライリーは慌てて松明に火を灯し、私達はその音の方へ走った。

「"ルカ"!ライリーにバリアを頼む!」

私はそう言われて慌ててライリーにバリアを張った。

「ライリー!コイツは"魔法の塊"だ!」

アキラにそう言われてライリーはハッとした。


「アスタナヴィーツ(魔法よ止まれ)!!」

ライリーが詠唱とともに杖を振った。杖の光がモンスターに目掛けて飛び、モンスターの動きが止まった。

「ショウ、アイツは魔物だ。体の奥に透けて見えるやつがあるだろう?」

バロンが指を差した先に、確かにクリスタルのようなものがあるのが見えた。

「アレを壊せばアイツは消えるんだ。俺は剣しか持ってないから無理だが…。狙えるか?」

バロンに聞かれ、ショウは頷いた。


ショウが弓を引いた。

「あの日の、塀を撃ち抜いた時よりももっと強く魔力を込めて撃てるか?」

ショウは黙って頷き、魔力を込めた。黒い稲妻みたいなものがあまりに走りだした。


「もう止められないわ!動き出す!!」

ライリーが叫んだ途端、ショウは弓を射た。

矢はクリスタルのようなものに刺さり、ヒビが入った。その瞬間バッと大きな音がして、緑の光が走り、クリスタルは粉々になった。


「さすがだな、ショウ」

エルがそういいながら砕けたクリスタルを取り出した。

「エルが射た弓のおかげだ」

そういって倒れた魔物の元へ歩き出した。私達もショウに続いた。

「コイツにヒビが入ったのはアンタの弓の威力がすごかったからだよ。アタイはただヒビに刺しただけさ」

そういい終わる間に、クリスタルを全て拾い上げた。その途端魔物は灰のようになって、消えてしまった。


「バロンはアイツのこと魔物って言ったけど、モンスターとは違うの?」

「魔物はモンスターと違って魔王が生み出した生き物だ。弱点は"核"と呼ばれるあのクリスタルみたいなやつだ。壊せば死ぬ」

「コイツは高く売れたり、装備になったり、取引に使えたりするんだ。ショウ、預けてもいいかい?」

ライリーの頼みにショウは頷き、クリスタルを受け取った。それを腰に着けていた小さな袋の中へ入れた。


「恐らくこの洞窟の中はああいう魔物が沢山いるよ。それでも進むかい?」

エルがライリーにそう聞いた。

「私がおりますから、大丈夫ですよ」

ファルシュがそう答えた。

「今ライリーに聞いていただろう?わからないのか?」

エルがそう冷たく言い放ったのをライリーが慌てて

「進みましょう、ね、そうピリピリしないで」

と止めた。


「エル、この洞窟にも何かお宝がある?」

アキラが目を輝かせながらそう聞いた。

「こんな深い洞窟の奥にはすごいお宝があるに決まってるさ。あんなスライムの住処なんて比にならないほどね」

エルの言う例えにイマイチピンと来なかったが、アキラはそれが伝わったのだろう。「本当に!?」と嬉しそうに言った。


「さぁ気を取り直して進みましょう!」

ライリーがそういって先へ進んだ。

「奥にはきっとボスみたいなやつがいるだろうから、気を抜かずにな」

バロンがそう言った。


その後は(エルはファルシュに冷たいままだが)和やかな雰囲気で洞窟の奥へ進んでいった。

それがまさかあんな事になろうとは、この時はまだ知らなかった___

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