第15話 出会い
__エアスト村での方針をライリーが決めることになり、明日の別行動に向け一行は眠りに__
朝、突然の大きな音で目が覚めた。
耳をつんざくような鋭い音が部屋に響く。
「起きて!朝ご飯食べたらすぐ行くわよ!!」
ライリーの元気な声が聞こえる。
「あと5分だけ…」
どこからか眠そうな声がとぶ。私もそっと頷いて布団を深くかぶった。
「ほら、さっさと起きな!置いてっちまうよ」
エルに布団を剥がされ、渋々体を起こした。他のみんなはまだ攻防を続けている。
「一番遅くまで寝てたやつが腕立て100回な」
エルがそう言うとさっきまで寝ていた3人が慌てて、同時に起き上がった。
数分後、朝ご飯を食べ終え私達は宿を出た。
「私達は訓練をするから、あっちの広間にいるわ。帰ったら寄ってね」
「もちろんだ。それじゃあ行ってくるよ」
私がそう言って発とうとすると、慌ててバロンが止めた。
「アルヴィン、やはり3人じゃ不安だろう。私も付いて行こう」
「バロン?」
ライリーのひどく冷たい声にバロンは「冗談だ」と慌てながら言った。
門の前に着くと一人の男が立っていた。
「お待ちしておりました、勇者様方」
男は私たちを見るなりそう言うと、深々と頭を下げた。
「勇者様一行が魔物退治に一役買ってくださるとお聞きしましたので、ここで待っておりました。単刀直入に申し上げますが、私もぜひ仲間に入れていただきたく思っている次第です」
彼の言葉に私達は顔を見合わせた。
「他に仲間がいるから、今決めるわけにいかない。貴方の言う通り、今からモンスターを退治しに行く。着いて来てくれればいい判断材料になると思うが…?」
「もちろん、皆様と話し合って決めていただければ結構です。よろしければご同行させてください。」
彼の言葉に私達は頷いた。
「僕はアキラ。あっちの紫っぽい髪色の男がショウ。それからその隣がモナルカさん、みんなはルカと呼んでるよ」
アキラか一通り私達の名前を彼に教えた。
「ありがとうアキラ。私はファルシュ。エアスト村の神父をやっています。治癒ならどうぞお任せください。」
彼の言葉に私は驚いた。唯一私たちに足りないと思っていた治癒。それを使えるものが共に冒険をしたいと申してくれるとは。
「神父?神父は治癒が使えるんです?」
アキラの困惑している声に、彼は少し考えてからそっと口を開けた。
「"治癒"とは女神様の祝福なのです。そして我々神父は女神様と人とをつなぐのが役目。その"つなぐ"という行為の中に治癒も含まれるのです。」
アキラは彼の説明に「なるほど…?」とわかっているのかよくわからないようか返事をした。
「よくわからないが、怪我を治してくれるのなら剣を扱う練習をしておきたいな」
そう言ってショウが剣を鞘から抜いた。
「ほう、ショウ様は剣と弓を扱うのですね」
ファルシュの驚いたような声にショウは笑いながら答えた。
「エルに比べれば、まだまだひよっこだけどな」
「なら僕も盾と剣をもっと上手く使いこなせるようにしたいな」
そう言ってアキラも剣を鞘から抜き、背負っていた盾を取った。
「ルカ様はどう致しますか?」
「うーん、そうだな…。私は特別長けているわけではないが、剣の扱いは慣れているからね。適当にやるよ」
私がそう言うと彼が頷いた。
「私は治癒専門、残念ですが戦えません。怪我をされたらこちらへ来てくださいね」
30分後、当たりにいたモンスターをあらかた退治した。
「奥に強いのがいるんだろうけど、如何せん3人じゃ不安だな」
「そうだね、バロン達と一緒の方がいいと思う」
2人の会話を聞いてファルシュが何か考え出した。
「私は治癒を専門としていますから、もし怪我をしても治せます。今奥へ行っても問題ないのでは…?」
彼の提案にみんな考え出した。
しばらくして、最初にアキラが口を開いた
「やっぱりみんながいないと。」
ショウもそれに頷いた。
「バロンみたいな強さも、エルみたいなモンスターへの知識も持ち合わせていないからな。それに方針を決めるのはライリーだ。勝手に動いたら怒られる」
2人の会話に私も賛同した。ファルシュは「そうですか…」と少し残念がっていた。
「さ、ライリー達のもとへ戻ろう。ファルシュを紹介しないとだしね」
アキラがそう言って来た道を戻る。それに私たちも続いた。
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