★エルのひとりごと①
バロンはアルヴィンサマの護衛だ。一緒に行くと言う気がしていた。さて、アキラとショウを一緒に行かせるわけには行かないがライリーが心配だという気持ちもある。
「じぁあライリー、ショウを任せてもいいかい?」
ライリーはもちろんと答えた。きっとこれで無理はしないだろう。
「任せるよ」
私の言葉にショウは頷いた。もしものことがあってもショウの弓のウデならきっと大丈夫だろう。
森に入りしばらくすると洞窟が見えた。
「アキラ、ここに入ってみるかい?」
アタイの質問にアキラは驚いていた
「そんな洞窟、絶対強いのが住んでるんじゃ…」
洞窟をしばらく眺めた。何かいるにはいるだろうけど強いやつって感じはしない。
「大丈夫だと思うよ。こういう洞窟にはお宝が眠ってたりするんだ」
アキラが渋々わかったと言ったからアタイ達は洞窟の中へ進んだ。
思った通り、ここはスライムの強化版みたいなやつの住処らしい。
「赤い角の生えたスライムが出てくると思う。角を狙えば剣でも倒せるが、アンタの魔法ならどこ狙っても一撃だよ」
アキラは難しい顔をした。そんなにアタイは信用ないのかね…?
「疑うってんなら試してご覧よ。後ろにいるからさ」
アタイの言葉に驚いてアキラが後ろを振り向いた。
アキラは慌てて魔法を出す。それはスライムの体に当たり、スライムは溶けた。
「な、本当だろ?そいつはオグロスライム。鬼のような風貌の、スライムの強化版さ。角と光魔法が弱点だよ」
「疑ってごめん、スライムの体は魔法を吸収するって今朝兵士から聞いたから…」
「確かに他の魔法なら吸収するよ。でもアンタの持つ魔法は普通の魔法じゃあないからね。スライムはどいつも光魔法が弱点だから覚えとくといいよ」
今度は素直に頷いた。
洞窟の最奥に着くまでに3体ずつ倒した。
最奥には思った通り質素な箱が置いてあった
「オグロスライムはキラキラしたものを集める習慣があるからね、何かいいものが入ってるかもしれないよ」
アタイが開けてごらんというと、アキラはそっと箱を開けた。
中にはクリスタルのような小さなものが入っていた。
「大切に持っときな。きっといつか必要になるよ」
その小さなクリスタルのようなものは恐らくシュムックスライムというクリスタルのようなものでできたスライムだろう。
そしてオグロスライムは住処の周辺以外移動しない。
ということはこの周辺にシュムックスライムがいる。アイツらは宝石が多くある地下洞窟を好むからきっとこの辺にソレがあるはずだ。
この事はまだアキラには内緒にしておこう。どうせいつか行くことになるだろうから。それにまた疑われても面倒だ。
アタイ達は洞窟を出て更に奥へ向かった。
道中で一体ずつスライムを倒した。
「ここはスライムしか出ないのか?」
「奥に行けば強いモンスターに遭遇するよ。ほとんどの冒険者はここが初めてになるから、合格しやすいようになってるのさ」
アキラはなるほどと呟いた。
そして…。スライムばかりが暮らすということは、ソレをおとりに狩りをするモンスターが近くに住まうということだ。
アタイ達はだいぶ奥まで来た。そろそろ出会ってもおかしくないが…。
アルヴィンサマとバロンに出会ってすぐ、思った通り悲鳴が聞こえた。
「てっきりライリー達になにかあったと思ったんだけど…」
なんて思ってもない嘘を言った。
ライリーは責任を感じると途端に慎重になる子だ。恐らく手前の方で安全にスライムを狩ってるのだろう。
バロンがスライムを細切れにしたのは驚いたが、その後も数匹スライムが出てきた。
みんなに怪我を負わす訳には行かない。スライムを倒しながら、来た道を塞ぐ草を切った。
「あと一匹出てくれば試験が終わる」
アタイがわざと声を張ってそういうと、思った通り虎みたいなモンスターが出てきた。
それからしばらく走って、みんなが離れたのを確認してアタイは立ち止まった。
「もっと速く走って!追いつかれちまうよ!」
万が一にも怪我をさせちまう訳には行かない。そのまま森を出てくれ。
そんな思いと裏腹に、みんながこちらに気付いて戻ってこようとしている。
「アタイはまだ5体目を倒していないからね。コイツを5体目にするよ」
とっくに5体目は倒したけどどうせ誰も見ていないだろう。
幼い頃、父に右肩の傷について聞いた。
冒険者ギルドに登録するためのテストで、虎に襲われたと。
左前足を斬った瞬間、右肩が血を噴いた。
慌ててベルを鳴らして事なきを得たが、その後再挑戦をする事はなかったようだ。
コイツが、コイツがいなければ父は今頃冒険者のはずだ。左前足の古傷に目をやった。
仇ってほどじゃあないが、同じ様なやつが出てくるのも不愉快だ。
深呼吸をして、虎に向かって走った。
目を潰して首を斬り、3発射た後で心臓を目掛けて魔力を込めた弓を放った。
あっという間に死んじまったソレを見て、えらく拍子抜けした。
ギルドに戻る道中でライリーにかなり怒られた。
無茶はしないでと。
それから家へ帰る前、バロンに呼び止められた。
「わざとだろ?」
「何のことか分からない」と答えたが信じちゃいないようだ。
「これからは仲間なんだ。あまり一人で抱え込むなよ」
そう心配するバロンに「考えすぎだ」と笑ってごまかした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます