第10話 討伐

__天清・影内の武器を揃え、一行は解散した。明日は2人が討伐に向かう日だが、王は溜まった仕事を見て、城へ残ることにした__


次の日、私は朝食を済ましてすぐに業務を再開した。そろそろ討伐隊が城を出る時間だろう。


すると突然、勢いよく扉が開いた。

兵士が息を切らして飛び込んできたのだ。扉の外で護衛が心配そうに見ている。

「陛下!大変です!モンスターの大群が南より攻めてきました!!」


私は話を聞いてすぐに兵舎へ向かった。幸いなことに討伐隊はまだ兵舎にいた。どうやらエルとライリーも来ているようだ。

並んでいる兵士達の先頭で指揮をしていたバロンのもとへ駆け寄り、先程の話を伝えた。


「全員馬舎へ!馬に乗ってすぐここを発つ!!」

バロンの怒号で兵士が一斉に馬舎へ向かった。


馬舎に着くや否や、兵士達はそれぞれの馬に飛び乗った。

「エル、馬は居るか?」

バロンの問いにエルは頷いた。

「ここまでアタイの愛馬で来たんだ!ライリー、アタイの前に乗りな」

そう言ってライリーを馬に乗せた。

「アキラ!魔力の制限はちゃんとできるか?」

バロンにそう聞かれ、アキラは黙って頷いた。

「わかった、ならアキラは私の後ろに乗れ」

バロンは馬に乗りながらそういった。その後ろにアキラが乗る。

「私は国王やライリーと違って魔法を抑える力はない。前に乗るから揺らぎも見えない。それでも大丈夫だな?」

「ベア太郎持ってるので大丈夫です!」

アキラは頷きながら答えた。バロンはベア太郎…?と小さく呟いていた。


「ショウは私の後ろへ。乗馬の経験は?」

「上司に連れられて一度」

「君の上司はえらくアクティブだな。コイツは少し凶暴でね、ちゃんと捕まっていてくれ」

ショウは静かに頷いた。


全員が馬に乗ったことを確認すると一行は南へと向かった。


「私は中央からバリアを貼る。ショウは援護を頼む!」

ショウはわかったと答えた。


しばらく草原を走っていると突然、エル達が近付いてきた。

「ショウ!アンタに渡すつもりだったもの、渡しそびれちまったからここで渡すよ!受け取れ!」

そう言うと袋を投げてきた。

「後衛から狙うならソイツが適任だ!ありがたく使いな!」

そう言うとエル達は私達を抜かして前へ行った。

エルが渡したのは弓と矢の束だった。


さらにしばらく走るとモンスターの群れが見えてきた。


バロン達含む兵士達が前衛として、エル達が後衛として援護、私達がその中央でバリアを貼る。

しばらくは順調にモンスター達と交戦していた。


ふと視界の上の方に赤い何かが映った。

「ドラゴンだ!!」

どこからか誰かが叫んだ。その瞬間青い光の線が一直線にドラゴン目掛けて走った。

その後二本の矢が空を飛んだ。


ドラゴンは攻撃をもろともせず、こちらに向けて炎を吐いた。

炎は私達のすぐ横を通り、地面に燃え広がった。

あちこちから悲鳴が聞こえてくる。


「総員撤退!態勢を整え次第すぐに討伐に向かう!」

バロンの指示で全員向きを変え、全速力で馬を走らせた。

私達が引き返すのを見て、ドラゴンは飛び去ってしまった。


城に着き、それぞれ愛馬を馬舎へ戻す。馬の数も兵士の数も明らかに行きより少なかった。

「国王、今回の討伐にドラゴンが来てしまった以上、次の討伐は大人数で行くわけには行きませんが…。どうしますか?」


もし今回ドラゴンが来た理由が私達を遠くから見たからだとすれば、次の討伐も同じ結果になるだろう。

突然大群が押し寄せてきた理由も全て魔王の指示だとしたら…。

「討伐隊の出動は一旦見合わせよう」

私がそう言うとバロンは静かに頷いた。


ドラゴン。

討伐の際見かけることはほとんどなく、人里離れた森の中で暮らすという。見た目に反して温厚なものが多いが、極稀に非常に凶暴なものもいるらしい。そういうやつは大抵小さな村の近くに巣を張り、村の食料を奪って暮らすというが、王国の近くまで来たのは初めてだった。


バロンの指示で兵士達はみな兵舎に戻り、馬舎の前には私とバロン、ライリー、エル、そしてアキラとショウの5人だけが残った。


 私はふと気がついた。国一番の戦士とそれに匹敵する実力を持つシーフ、そして魔法使いと勇者。

回復役が居ないのは少し残念だが、4人くらいなら私のバリアで守れるだろう。そう考えると現在登録されている全てのパーティーよりもバランスのいいチームなのではないだろうか…?

 それに5人なら空から見ているドラゴンの目に映るリスクも少ないだろう。


私はそれをバロンにそっと伝えた。

しかし一番に反応したのはエルだった。

「名案じゃあないか!」

その言葉を聞いて他の3人はきょとんとしていた。

「今日の2人なら戦力も申し分ないだろう。国王が国にいないというのは少し気になるが…」

「その間の国のことは息子に任せるさ。跡取りとしてふさわしいかのテストだとでも言えばヘタな事はしないだろう」


私は同じ話を3人にも話した。

3人とも了承してくれた。ただ一つ懸念があるとすれば……。


冒険者ギルドに登録しに向かった。

受付の女性はひどく驚いていた。その後軽く説明を受けた。テストに合格すれば登録完了、パーティー申請はその後にすぐできるというらしい。

そしてテストの内容は王国の外、森の中にいるモンスターを1人5匹倒すというものだ。


私達は冒険者ギルドの従業員に連れられて森へ向かった。

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