天清光のひとりごと①

 その日はたまたま、帰りが遅くなった。

ド田舎にあるこの小さな町の電気を携わる、大事な仕事。好きではないが嫌いでもなかった。明日は休みだ。同僚の話によれば、明日の夜神社で祭りがあるらしい。気分が乗れば行ってみようか、なんて考えながらスマホの時計を見た。


23:45


家に何か食べるものはあっただろうか?

スマホから目を離し、前を見た。


 突然、耳をつんざく大きな音がして、音の鳴る方を見た。

大きなトラックと、慌てたドライバーが目に映る。

時間がやけにゆっくり進んでいるように感じた。



 目を開けると真っ白な世界が広がっていた。

『初めまして、わたくし、とある世界を統べる女神でございます。』

女神と名乗るその女性は、どこか神々しい、それでいてどこか温かい。そんな女性だった。

『勝手な事情で申し訳ないのですが、少々お力添えをお願いしたく思います。嫌ならばそれでも良いのですが…』

「さっき、僕は死んだのでしょう。それでもなにか僕に出来ることがあるのなら、お力添え致しますよ」

僕はそう答えた。


女神の言うことを要約すると、その国にはモンスターがいて、国がピンチらしい。だからその国に転生して欲しい。お礼として少しだけだが神の加護を授けよう。 というものだ。


僕がわかったと答えると女神は微笑み、目の前が真っ白になった。



 再び目を開けると、見知らぬ光景と見知らぬ人、そして同じタイミングでここに来たらしいスーツの男がいた。不思議な格好をした男が僕と彼を見比べて、そして彼に手を差し伸べ別室へ向かった。

僕も慌てて着いていこうとしたら、強そうな、恐らく兵士であろう人に止められた。どうやら僕はお呼びでなかったらしい。


 国王はいい人だった。紅茶をご馳走してくれて、そしてライリーと名乗る魔法使いを紹介してくれた。

ライリーは魔法使いの15歳になる少女で、見ず知らずの僕に優しく接してくれた。少し距離が近いのが考えものだが…。


 国王の勧めで護衛のバロンと3人で国の外にある教会に向かった。道中バロンから、"ステータスオープン"と念じると自分のステータスがわかることを教えられた。


天清光 Lv.1  AP:0


役職:なし    HP:5000

魔法:???   МP:5000

スキル

一瀉千里 Lv.1:通常の3倍レベルが上がり

        スキルを手に入れやすくなる

鳶目兎耳 Lv.1:通常の3倍遠くの物を見聞きが

        出来るようになり、

        また悪意のある者に気付ける


 恐らくスキルというのが女神の与えてくださったものなのだろう。名前くらい聞いておけばよかったと今になって後悔した。


 バロンに護られながら教会に辿り着いた。洋風な美しいその教会の壁に無数の傷が入っているのを見て、こんなところにまでモンスターは来るのかと思った。


 神父はエイダンと名乗り、不思議な石版に手をかざすように言われた。手をかざすと突然、石版に文字が浮かんだ。

「貴方の持つ魔法は光の魔法だ。闇に対抗する、聖なる魔法。ですが、レベルの低いうちは使わないほうが良いでしょう。貴方に神のご加護があらんことを。」


 教会を出るとバロンに絶対に1人で使うなと釘を差された。


 城に戻り、バロンに礼を言って僕とライリーは図書室へ向かった。

「ねぇ、アキラ。私と特訓しない?その魔法を使いこなして、みんなにちゃんと認めて貰おうよ!」

僕は少し考えたが、1人でやるなと言われはしたが2人ならいいか。と思った。それに周りの態度に嫌気が差していたので、ライリーの言葉に頷いた。


 訓練所へ行くと女性と、召喚された時に見た男がいた。どうやら彼は闇魔法というものをもう使いこなしているらしい。ライリーが事情を説明すると、エルと名乗る女性が見守ると行ってくれた。

 彼女の話通りに魔法を出す。手のひらから光が出て、壁にある的へ飛んだ。だが光は的に当たる前に消えてしまった。

 みんながもっと強く!と言ったので、僕は力いっぱいの魔法を出そうとした。

 でもまさか、こんなことになるとは思っていなかった。光が勢いよく壁に当たり突然爆発したかと思うと、真っ白な、稲妻のような光が次々に飛び出した。それがエルの腕に当たり、血しぶきが飛ぶ。エル達は僕から離れたが、僕の後ろでライリーが座り込んだ。腰を抜かしたのだろうか?どうすればいいんだ、早く止めなければ。彼女に当たらないという確証はない。頭が真っ白になった。


 その時、城の方から国王とバロンが走ってきた。

バロンがエル達の前に立ち盾を構える。国王はライリーを立たせるとバリアのようなものを展開した。

そしてライリーがハッとして杖を振った。


 ライリーの杖から出る光が僕を包んだ途端、光が出なくなった。僕はホッとして、力が抜けた。そのまま地面に座り込んだ。


 事の顛末をライリーとエルが2人に話し終えると、エル達は城へ向かった。その後バロンから話を聞くとどうやら僕の持つこの光魔法は相当強いものらしい。


 結局僕は召喚されたもう一人、影内宵と名乗る男とバロンの元で特訓する事になった。

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