天清 光

__スーツの男…勇者が兵士数人を連れモンスターを退治しに国を出るのを見届け、結界のヒビを確認しに回った。しかし跡形もなく消えているのを見て王はホッと胸をなでおろした。__


 熟考の末、彼には紅茶をご馳走することにした。私はつなぎの男を誘い、一国の王にすれば少し質素な茶会を始めた。

 

「ところで、貴殿の名は何という?」

まだ名を聞いていないことに気づきつなぎの男に問うた。

「えっと、僕…私は天清 光(あますが あきら)と申します」

「そうか。天清殿、この度は巻き込んでしまって申し訳ない」

「あっいえ、そんな…。王様は別に悪くないですから」

そうして私は天清 光と名乗る男をまじまじと見つめた。天清殿には申し訳ないが、やはり勇者らしからぬ…はっきり言えば国民の中にもこの様な男は何人もいそうな外見である。ただ、人当たりの良さそうなどこにでもいる青年。どうして彼がここへ来てしまったのか。私は不思議でたまらなかった。


 聞けば天清殿と勇者は何の面識も無いようだ。勇者の歳は知らないが恐らく30代後半。一方彼は今年で22歳になったという。そして彼は小さな町の電気工場で働いていたようだ。少なくとも彼はその町で、勇者の姿を見たことはないらしい。

 面識がなく、歳も職業もそして住む町も違う2人がどうして召喚されてしまったのだろうか__



 どうやら彼らの暮らす世界に魔法というものが無いようなので、天清殿に私と仲の良い魔法使いを紹介することにした。


 城の庭へ向かうとやはり、紫のマントを身にまとった黒髪の少女が花に水をやっていた。

「ライリー、少し良いかな?」

その少女…ライリーの名を呼ぶと彼女はすぐに振り向き、こちらへ駆け寄ってきた。

「アルヴィン様、こんにちは!」

屈託のない笑みを浮かべ彼女がお辞儀をする。そして私の後ろに立つ天清殿に目をやり、彼は?と聞いた。

「初めまして、天清 光です」

「アキラ、ね!初めまして、私はライリーよ。あなたが噂の勇者様ね?」

天清殿は笑って誤魔化した。

「ライリー、彼は魔法を見たことがないらしい。君なら素晴らしい魔法を見せてあげられるだろう?」

彼女は勿論よと胸を張った。

「もう少しで討伐隊が戻る時間だから、少しの間私は席を離す。その間頼んだよ」

彼女にそう言って私は1人その場を後にした。

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