愛の温もり

葬式から帰ったトキは家の中を見てまわり

思い出に浸った。この家を買った時ハルカは「私たち二人だけのお城ね」と喜んだ。

畑は2人で花や野菜を育てた、たまにこっちの方がいいとかあっちの方がいいとか喧嘩もしたけれど結局後から2人が納得するものが見つかって仲直りした。玄関の傘立てには傘が2本

入っており赤色の小さいクマのぬいぐるみの

刺繍が入った傘はトキが初めてハルカに

プレゼントしたものだ 生まれて初めての恋人に何をプレゼントすればいいのか分からなく

悩んだ結果傘にした その日の帰り雨が降り

一緒に傘に入って「ありがとう」と優しく

微笑んだハルカはトキにとって太陽だった。

もう1本の紺色の傘はハルカがトキにプレゼントしてくれたものだ「トキの剣の鞘と同じ色にしてみたの。」生まれて初めてのプレゼントが嬉しくて泣いて喜んだキッチンでは

ハルカがいつもご飯を作ってくれたたまに

トキが作ったり2人で作ったり。できるだけ

一緒に食べることを心がけていたがどうしても食べれなかった時はトキが紅茶やコーヒーを入れる代わりに一緒に居てくれた。

寝室を見た途端涙が出るつい数日前までは

一緒に寝ていた手を繋いでどちらかが寝るまで話していた「……ハルカ」大切な大切な

いつもの日常が思い出になってしまった。

家の中は寂しくてそれでも微かにハルカの

温もりが残っている 今すぐにでも「もう、

トキ何心配してるの?買い物に行ってただけじゃない」と帰ってきてくれないかと

「もう、まさか騙されたの?」と笑って

現れてくれないかと考え、願ってしまう。

いつもの明るい優しい声で「トキ」と名前を

呼ばれることを「もう、またなの?」と呆れてくれることを「トキ ベッドで寝なさいってば!」と怒ってくれることを望んでしまう。

生まれて初めて恋をした人の温もりが自分から離れていくことが怖くて共に愛し生きていくと誓った人の声を忘れゆくのが恐ろしくてトキはただ泣き崩れるしかなかった。

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