新たな発見と不安
石板を手に、僕とミナは神殿の広間に立っていた。先ほどの光の中で何が起こったのか、まだはっきりとしたことはわからなかった。けれども、石板がもたらした変化は確かにあった。それがどんな意味を持つのかは、これからの歩みの中で明らかになるだろう。
「何か、力を手に入れた気がする…」とミナがぽつりとつぶやいた。彼女の目には、少し不安げな色が浮かんでいる。
「僕も、少しだけ違う感覚を覚えた気がする」と僕は答えた。「でも、何がどう変わったのか、まだわからない。もしかしたら、何か試されているのかもしれない」
ミナは黙って頷いた。彼女の表情には、どこか決意が見え隠れしている。僕たちがこれから向かうべき場所は、ただの村ではなく、何か特別な力を秘めた場所なのだと、二人とも無意識に感じ取っていた。
「まずは、石板が示す場所を探さないとね」と僕が言った。「もしこれが村の秘密と関係しているのなら、それを解明しない限り、何も進まない」
「うん、でも…どうやって探せばいいの?」とミナが尋ねる。
「石板の模様に何かヒントがあるはずだ。それをもう一度詳しく見てみよう」と僕は言って、石板を手に取る。
石板の表面には、細かな模様が刻まれている。それをじっと見つめていると、かすかな光が再び模様の中に現れた。手で触れると、その光が少しずつ広がり、石板に描かれた模様が一つずつ明確に浮き上がっていった。
「見て、また光が!」とミナが声を上げる。
その光の中から、一つの文字が浮かび上がった。それは古代文字で、僕には読めないが、どこかで見たことがあるような気がした。
「これ、もしかして…」と僕は言葉を切った。
「何か思い当たる節でも?」とミナが尋ねる。
「この文字、村の神殿に飾られている絵に似ている。確か、あの絵にも同じような模様があったはずだ」と僕は言った。
ミナはすぐに顔を輝かせた。「それなら、絵を見に行こう!きっと何か手がかりがあるはず」
僕たちは神殿を出て、村の中心にある神殿へと向かうことにした。道中、ミナは少し興奮気味に話し続けていたが、僕はどこか冷静に考えていた。石板から感じたあの力、そして浮かび上がった文字。何か大きなことが動き始めているのを、僕は感じていた。
神殿に着くと、あの古びた絵が飾られている壁に向かった。絵は数世代前に描かれたもので、村の歴史を物語っているようだった。その中に、先ほど見た文字と非常に似た模様が描かれている。
「ほら、これだ」と僕が指を指す。
ミナが目を凝らして見る。「本当に、同じ模様だ。これは…」
僕は少し息を呑んだ。「これが、石板の秘密に繋がっているんだ。もしかしたら、これが示す場所がどこかにあるのかもしれない」
「でも、どうやってその場所を見つけるの?」とミナが心配そうに聞く。
「これから、絵に描かれた場所を辿ってみるしかない」と僕は決意を込めて答えた。「村のどこかに、きっと何かが隠されている」
その時、突然、村の広場から大きな声が聞こえた。僕たちは驚いて顔を見合わせ、急いで外に出ると、村の人々が集まっているのが見えた。
「どうしたんだろう?」とミナが言った。
「行ってみよう」と僕は答え、急いで広場に向かう。
広場に着くと、村の長老が立っており、彼の周りには村人たちが集まっていた。その様子から、何か大きな問題が起きているのが伝わってきた。
「何かあったんですか?」と僕は尋ねた。
長老が顔を上げ、僕に気づくと、深刻な表情で言った。「実は、村の周囲で奇妙な現象が起こっているんだ。これまで平和だったこの土地に、何か大きな力が働きかけているようだ」
その言葉に、僕は思わず背筋が伸びた。もしかしたら、僕たちが触れた石板の力が、村に影響を与えているのかもしれない。
「これからどうすれば?」とミナが不安そうに尋ねた。
長老はゆっくりと答えた。「まずは、その力が何かを知る必要がある。しかし、どこからその力が来ているのかがわからない限り、村を守ることはできない」
その言葉が、僕たちの冒険の新たな一歩を告げる合図となった。
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