石板の秘密

神殿の中、僕とミナは手にした石板を見つめながら、静かな空気に包まれていた。石板は無刻の平らな面が光を反射し、何もないように見えたが、何かが内側に隠されているような気がしてならなかった。


「これ、本当にただの石板なんでしょうか?」とミナが不安そうに言った。


「いや、ただの石板じゃないはずです。あの光、見ましたか?明らかに何かが起こりそうな予兆です」と僕は答えた。


僕は石板を手に取ってじっと見つめていた。表面に見えるものは何もなかったが、裏側には細かい模様が刻まれていることに気づいた。手でなぞると、模様が微かに浮き上がり、まるで生きているかのように反応を見せた。


「これ、すごい…」とミナが声を漏らす。彼女もその変化に気づいたのだろう。


「試しに、この模様をなぞってみよう」と僕は言い、指先で模様を辿り始めた。


すると、突然、石板からまばゆい光が放たれ、僕たちの周りを包み込むように広がった。瞬間的にその光に引き寄せられるように体が動き、次の瞬間、目の前の景色が一変した。


周囲は暗闇に包まれ、足元には荒れ果てた土地が広がっていた。村とはまるで異なる、何もない平原のような場所だ。目の前には巨大な石造りの建物が立っており、その上に光る文字が浮かび上がっていた。


「こ、これは…?」とミナが驚いた声を上げる。


僕もその景色に驚き、周囲を見回した。どうやら、僕たちはこの石板を触ったことによって、何か異次元的な空間に引き寄せられたようだった。


「この場所、どこなんだろう?」と僕は言った。「まるで、村の歴史の中に入り込んだみたいだ」


すると、目の前に立つ石の建物から、どこからともなく声が響いた。


「訪れし者よ、覚悟はできたか?」


その声は不思議と温かみを感じさせるものだったが、同時に何か重圧のようなものもあった。僕たちは思わず一歩後退し、反射的に顔を見合わせた。


「誰かいるの?」とミナが尋ねた。


「わからない。でも、この場所が何かの試練を受ける場所であることは間違いない。きっと、村を守る力を授けるための…」と僕は思いを巡らせた。


すると、再び声が響いた。「試練を乗り越えし者こそが、真の力を手に入れることができる。だが、その代償を支払う覚悟があるか?」


その言葉に、僕の心が震えた。試練という言葉には、何か重要な意味が込められている気がした。


「代償…?」とミナが小さく呟いた。


「何かを得るには、必ず何かを失うという意味かもしれません」と僕は言った。


「でも、試練を受けるって、どういうこと?」とミナが恐る恐る尋ねる。


「わからない。ただ、ここに来たからには、試練を受けるしかないと思う」と僕は答えた。


その時、石の建物の中から突然、光の柱が立ち上がり、僕たちを包み込んだ。その光はまばゆく、何か大きな力が解き放たれる瞬間のように感じられた。


「覚悟を決めろ、訪れし者よ」と再び声が響く。


僕は深呼吸をして、ミナに向かって言った。「大丈夫、きっと乗り越えられる。覚悟を決めて、一緒に進もう」


ミナは少し迷ってから、うなずいた。「はい、私も覚悟を決めました」


光が強くなり、僕たちはその中心に吸い込まれるように引き寄せられた。次の瞬間、光が消え、静寂が訪れた。僕たちは再び、石板が置かれていた神殿の中に立っていた。


「え、戻った?」とミナが驚いて周囲を見回す。


「どうやら、試練が終わったみたいですね」と僕は静かに答えた。


僕たちは、無事に試練を終えたことを実感し、安堵の気持ちが広がった。しかし、あの光の中で何が起こったのか、何が変わったのかはわからなかった。だが、僕たちの中に何か新しい力が宿ったような気がした。


「これからどうする?」とミナが尋ねる。


「まずは、この石板が示すものが何かを見極めないといけませんね。まだ、この村に隠された秘密が残っているはずです」と僕は言った。


その言葉通り、僕たちはこれから始まる新たな謎を解くため、再び歩みを進めることになった。


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