村の収穫祭と温かなもてなし
花咲き村での暮らしも少しずつ板についてきた頃、村の広場に活気があふれ始めた。今日は年に一度の「収穫祭」が開かれる日だという。村の人々が一斉に集まり、収穫の恵みに感謝し、皆でその喜びを分かち合う祭りらしい。どんなお祭りなのか、興味津々で足を運んだ。
広場には長いテーブルが並べられ、色とりどりの果物や野菜、焼きたてのパンや手作りのチーズがずらりと並んでいる。普段は静かな村も、この日は子供からお年寄りまでが集まって賑わっている。
「おや、来てくれたんだね!」
振り返ると、ミナが手を振って駆け寄ってきた。彼女は収穫祭の準備を手伝っていたらしく、少し疲れた様子ながらも、その顔には楽しそうな笑顔が浮かんでいる。
「はい、せっかくなのでお祭りを楽しみに来ました。それにしても、すごいご馳走ですね」
「収穫祭だからね。今年の豊作を皆で分かち合うのが、この村の伝統なの。ほら、あれなんて特におすすめよ」
ミナが指差した先には、大きな鍋で煮込まれたスープが湯気を立てている。野菜がたっぷり入っていて、香ばしい香りが広がっていた。さっそく一杯もらって飲んでみると、優しい味わいで、体の芯から温まるようだった。
「うん、おいしいです!これ、村で採れた野菜なんですね」
「そうよ。村のみんなで手間暇かけて育てた野菜だから、特別な味がするのかもしれないわね」
収穫祭が進むにつれ、村の音楽隊が登場し、素朴な楽器で賑やかな音楽を奏で始めた。村の人々は音楽に合わせて踊り始め、子供たちも手をつないで楽しそうに飛び跳ねている。自分も自然と体がリズムに合わせて動き出し、村の皆と一緒に踊りの輪に加わった。
しばらくすると、鍛冶屋のバルドさんもやってきて、豪快な声で歌い出す。バルドさんの歌声に合わせて手拍子が起こり、場の雰囲気はますます盛り上がっていく。
エルダさんも楽しそうに踊っていて、普段の落ち着いた姿とは違い、無邪気な笑顔を見せている。祭りは続き、広場には笑い声と歓声が絶えない。村の人々とこうして一緒に過ごしていると、自分もすっかりこの村の一員になったような気がしてくる。
夜が更けてくると、祭りは次第に静かになり、村の人々は思い思いの場所で語り合ったり、星空を眺めたりしている。ミナがそっと近づいてきて、柔らかな微笑みを浮かべた。
「今日は楽しかった?あなたが村にいてくれて、みんなもすごく喜んでるわ」
「ええ、本当に素晴らしい日でした。皆さんが温かく迎えてくれて、心から感謝しています」
「この村はね、特別なことがなくても、こうしてみんなで分かち合うことで幸せを感じられる場所なの。あなたも、きっとこの村のことがもっと好きになると思うわ」
ミナの言葉に心がじんわりと温まった。花咲き村での暮らしは穏やかで、村人たちの温もりがいつもそばにある。それが、どんなに心を癒やしてくれるものかを改めて感じた。
収穫祭の夜、村の静けさと星空を眺めながら、自分もこの村での生活をもっと楽しみたいと、そっと決意を新たにしたのだった。
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