6 村の知恵と自然の恵み

収穫祭から数日が経ち、花咲き村の日常がまた静かに戻ってきた。祭りでの出来事が心に残り、村の人々の温かさと、この土地の豊かさを改めて感じていた。そんなある日、朝から穏やかな陽射しが降り注ぐ中、村の畑で作業をしているミナの姿を見つけた。


「ミナ、おはようございます。今日は畑仕事ですか?」


「おはよう!そうよ、今日はハーブの収穫をしているの。よかったら手伝ってくれる?」


ミナの誘いを快く受け、一緒にハーブの収穫を手伝うことにした。彼女が教えてくれたのは、この村で育てられる数種類のハーブについてだった。ローズマリーやカモミール、ミントといったおなじみのものから、この土地独特の香りを持つハーブまで、畑にはたくさんの種類が植えられている。


「このハーブたちは、村の人たちにとって欠かせないんだ。料理に使ったり、お茶にしたり、薬にしたりと、いろんな使い道があるのよ」


ミナが摘んだミントを手渡してくれたので、葉を軽くこするとさわやかな香りが漂ってきた。その香りを胸いっぱいに吸い込むと、不思議と気持ちが落ち着く。


「こういう自然の恵みが生活に根付いているのって、素敵ですね。都会だとつい忘れがちなものです」


「そうね。この村では昔から、自然と共に生きることが大切だと教えられてきたわ。たとえば、風邪を引いたときはカモミールティーを飲むとか、虫に刺されたらミントを使うとか。昔からの知恵が受け継がれているの」


しばらく収穫作業をしていると、畑に別の村人がやってきた。年配の男性で、村の薬草に詳しいヒルダさんだ。彼は、収穫したハーブを慎重に調べながら、それぞれの効能や使い方を教えてくれる。


「これが村で昔から伝わる知恵なんだ。自然は私たちに必要なものを与えてくれる。もちろん、我々もそれに敬意を持って、無駄にせず大切に使わねばならん」


ヒルダさんの言葉には重みがあり、村の人々が自然と調和して生きていることを強く感じさせられた。自分も都会の暮らしに慣れ、効率や便利さを追い求めてきたが、こうして自然の中で過ごすうちに、それだけが全てではないと気づき始めている。


その日の夕方、ミナに教わりながらカモミールティーを淹れることにした。摘みたてのカモミールをポットに入れて、お湯を注ぐと、部屋中に柔らかな香りが広がった。湯気とともに立ち上るその香りは、どこか懐かしくて優しい。


「どう?これが村で人気のカモミールティーよ。夜に飲むとぐっすり眠れるわ」


ミナと一緒にお茶を飲みながら、今日の収穫や、ハーブの使い道について話をした。ゆっくりと流れる時間の中で、自然の恵みと村の知恵が日常に溶け込んでいることに、心が満たされていくようだった。


ふと、村での生活を始めた頃には想像もしていなかった、穏やかで心豊かな時間を過ごしていることに気づいた。花咲き村の人々の知恵と自然の恵みに触れながら、これからもこの村での日々を大切にしていきたいと、静かに心に誓ったのだった。


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