隣の豪邸の男の子

石田空

因習村よさようなら

 母が倒れたという連絡を受けて、電車で半日かけて実家に帰ることにした。

 実家には新幹線は通っておらず、車で帰ると高速道路の値段がすごいことになる。結局は電車とバスを乗り継いで帰るのが一番近かった。

 地元では働き先はほぼなく、あるとしたらほとんど縁故採用のみの郵便局と市役所くらいだった。地元には娯楽らしい娯楽がなく、地上波はNHKしか映らない。ネット回線は不安定だし、スマホもときどき使えなくなる体たらく。

 今日やった失敗は次の日には村全域に伝わっているものだから、それに嫌気が差した子たちから順番に都会に出て戻ってこなくなる。

 私も母が倒れたなんて聞かなかったら帰ってきたくはなかった。

 私が出て行ってから十年近くは経つというのにほぼ代わり映えのない景色。

 田んぼは税金対策でやっているものの、農家としては間違いなく食えない程度にしか獲れないようなのを見ながら、私は「あれ」と足を止めた。

 田舎の昔ながらのガタンガタンと不快な音を立てて開閉する横開きの扉の家ばかりが並ぶ中、この田舎にそぐわない豪奢な家が建っていたのだ。

 和風な街並みに、近代建築の豪邸は目立つ。私はそれをまじまじと見ていたところで、豪邸の二階にあるバルコニーから信じられないものを見た。

 狐面を付けた、白地に青い模様の入った浴衣を着ている男の子が見えたのだ。

 私はそれをポカンとして見ていた。

 田舎に豪邸が建っているから勝手に自分の作り出した妄想かと思っていたものの、どうもわからなかった。

 わからないなりに、家に帰っていった。


「ただいま……」

「ああ、せつな。やっと帰ってきた!」

「なに、お母さんは……」


 いつまで経っても結婚の決まらない一番上の兄……長男は必ず家を継がないといけないから、村を出ていきたい女は長男ってだけで無視を決め込んでいたのだ……は心底ほっとした顔をした。


「母さんがぎっくり腰になって倒れたから、家事をやってほしいんだよ!」

「……は?」


 呆れて言葉が出なかった。

 母は元々この村の学校に赴任してきた新人教師であり、村で畑作業をしていた父がひと目惚れして追いかけまわして結婚に持ち込まれた人だった。

 この村の因習をわかっている人たちは、こぞって母を止めたらしいけれど、まだ社会に出たてであり、田舎の因習を全く知らなかった母は、わからないまま了承してしまったらしい。それから母は、大きな買い出しのとき以外はほぼ村から出ることなく生活していた。

 母は私に口酸っぱく言っていたのだ。


「真面目に勉強して、この村を出てきなさい。お母さんを捨ててもいいから。あなたが村を出たと同時に、お母さんは死んだから、もう戻ってこなくていいからね。周りがどれだけ薄情だと言っても、葬式にも来なくていいからね」


 母はこれだけ言ってくれたというのに。さすがに母が倒れたとなったら、戻ってきてしまった。

 私は何度も抗議をした。


「会社はどうするの! いきなり辞めるなんてできないでしょ」

「どうせ人は都会に余ってるんだから、お前がいなくても回るだろ」

「そんな訳ないでしょ!?」


 この村には新しいものは入ってこない。この村に入ったらどれだけ斬新なものだって、どれだけ価値観をひっくり返すものだって、風化してしまってただのそよ風になってしまう。そよ風ではこの村にこびりついた因習は払いのけられない。

 兄はさっさと私の会社に連絡を入れ、無理矢理退職を決められてしまった。

 母はぎっくり腰のせいで、部屋で倒れていた。

 呆れたことに、父も兄も、本当に歩くこともできないほど弱った母に、食事どころか水分を与えることもしておらず、母は私が見に行ったときにはかなり弱っていた。


「……なんで帰ってきたの」

「お母さん、大丈夫? 今経口補水液用意するから」

「駄目じゃないの。あの人たち、本気でなんにもできないのに」


 母も最初は父や長兄に家事を教えようとした。今は結婚して転勤を機にさっさと村を出て行った次兄は要領がよくてすぐ覚えたものの、父も長兄も家事は母や私がやるものだったから、なんで覚えないといけないのか、本気で理解ができなかったようで、電子レンジの使い方はもちろんのこと、お湯を沸かすことすらまともにできなかった。

 母がぎっくり腰で倒れてわずか三日で生活がガタガタになってしまったせいで、私が呼び戻されたんだった。

 私はなんとも言えない顔になる。


「お母さんが倒れたら、あの人たちはお母さんの面倒見ないことはわかっていたから、嫌だったよ」

「馬鹿な子ねえ……」

「そういえば、隣に豪邸できてたけど、あれなに?」

「道楽金持ちってとこねえ。税金対策でうちの隣の家買ったみたい」


 隣の家が何者なのか、一度話せば一日で村全域に情報は伝達されるというのに、隣の家の住民は朝に出かけて夜に帰ってくる以外、なにもわからないという。

 一度あまりに訳がわからなくて、村の住民がその家を覗いていたらしいが、やけに顔のいい執事に丁重にもてなされて帰されてしまったから、それ以降詮索しなくなったとのこと。

 唯一わかっているのは、隣の家は「小泉さん」ということだけだった。

 それからというもの、私は小泉さんの家を眺めながら、家事をする毎日がはじまった。

 私が実家に帰ってきたことで、結婚相手の見つからない村にいる長男たちがこぞって父や長兄に「せつなちゃんうちにどう?」と声をかけに来るようになったのが不愉快だった。

 父も長兄も今は母がぎっくり腰で起き上がれないから私に家事をやらせたいために乗っかることはなかったが、母が治ったらまずわからない。

 母に濡れタオルを用意し、寝転がりながらでもかろうじて食べられるおにぎりを用意し、医者に処方してもらった湿布を貼る。

 掃除や洗濯もほぼ毎日出るのに溜まる一方で、洗濯機を毎日回してもなくなることはなかった。


「はあ……」


 私は洗濯物を干しながら隣の家を見た。

 隣の家からは誰も出てくることがない。洗濯物も外に干してないってことは、きっと乾燥機があって、それで乾かしているんだろうと察してムカムカする。

 どうにか最後のカゴのものを干し終えたところで。


「あ……」


 ハンガーに干そうとしていたタオルが一枚、突然吹いてきた突風にあおられて小泉邸に流れ込んでしまった。

 私は慌てて小泉邸の前に立つものの、周りを見て躊躇する……近所の人に見られたら最後、明日中には私が小泉邸に出かけた話が広がってしまう。

 勝手に厄介な噂を流されても困るな、この村の人たちは基本的に陰険で揚げ足取りが大好きなんだから。

 私はうろうろうろうろしながら、困り果てていると。


「どうかなさいましたか?」


 執事服の男性に声をかけられた。同じ日本人とは思えないほどにスラリとした体躯で、色香のある声だった。


「……ええっと、隣の八島です。敷地に洗濯物が入り込んでしまって……」

「おやおや、それは大変ですね。どのようなものでしょうか?」

「タオルです……バスタオル」

「かしこまりました。すぐに探してまいります。しかしこれだけ暑い中、玄関でお待ちいただくのも忍びないですし。よろしかったらお茶しながら待っていてくださいませ」

「えっ」


 私はあれよあれよという間に、執事さんに小泉邸に入れられてしまった。

 近代建築なだけあり、空調がよく効いている。うちの家は古くて隙間風はぴゅーぴゅー入り込む癖に空調が全く回らず、私も母も暑い部屋に追いやられて父と長兄だけが空調の効いている部屋で涼んでいるというのに。

 執事さんが淹れてくれたのはルイボスティーで、ついつい私が辞めさせられるまで働いていた都会のことを思い出して、まだひと月も経ってないのに懐かしくなり、独特の苦みと甘みを飲みながらも、やりきれなくなって少し泣いてしまっていた。

 そんなときだった。


「お姉さんどうして泣いているの?」


 こちらにくぐもった声をかけてきたのに、私はビクンと肩を跳ねさせた。

 いつか見た、浴衣の狐面の男の子だった。家の中でまで狐面を外していないとは驚いた。

 私は慌てて目尻の涙を拭った。


「君は? 私は隣の八島せつな」

「ぼくは小泉八雲」

「……嘘でしょう?」

「親が文芸かぶれだったんだよ。なにも怪談作家の名前をつけなくてもよかったのに」


 八雲くんは肩を竦めた。


「それで、お姉さんはどうして泣いているの?」

「……もう外には行けないからだよ」

「どうして?」

「外から来た君は知らないかもしれないけれど、この村は男尊女卑が激しいんだ。だから私が一度村を出たら二度と帰ってこなくてもいいって母には言われていたけれど、母を人質に取られてのこのこ帰ってきたら、外につくった居場所を根こそぎ奪われてしまったんだ。だから私はもう、どこにも行けないんだよ」

「今ここに来ているのは?」

「……本当は危険なんだよ。この村で立った大きな事件は、一日で村中に伝わってしまう。君たちみたいな外から来た人のことなんて、常日頃から監視されているから、もしかすると私は明日から家に監禁されるかも。嫁入り前の女がふしだらなことするなって、埃のかぶった言葉を今でも普通に言っているところだから」

「ふーん。もうすぐ嵐だね?」

「……ええ?」


 唐突に話が変わり、私は驚いて目を瞬かせた。

 八雲くんは狐面を被ったまま言った。


「嵐が去ったらなにもかも上手くいくよ。一日はつらいかもしれない。ただその一日で絶望しないで。なにもかも上手くいくから」

「う? うん」


 話が途切れたタイミングで「大変お待たせしましたっ」と執事さんが現れた。


「お待たせしました。タオルがございましたよ。少し汚れていますが、こちらで洗濯乾燥の後に返却という形も取れますが、いかがなさいますか?」

「けっ、結構です! 大丈夫です、ちゃんと家で洗い直しますから!」

「さようでございますか。それでは八島様、どうぞお気をつけてお帰りなさいませ」


 そう挨拶をして、丁重に送り出された。

 ルイボスティーはおいしかったし、小泉邸の人たちは皆親切だった。

 結局どうしてこんな辺鄙な村に引っ越してきたのかも、聞き出すことはかなわなかったけれど、多分訳ありなんだろうと、そうっとしておくことにした。

 家に帰ろうとするタイミングで、近所のおばちゃんと鉢合ってしまった……最悪だ、既婚者子育て終了済みが一番スピーカーとして機能するのだから。


「あらあらあら、せつなちゃんもマセてるのねえ。小泉さん家の執事さんに?」

「ち、違います。ただ飛んで行った洗濯物取りに行っただけで……」

「その割には長いことかかったのねえ」


 どうも私が小泉邸で待たせてもらっているタイミングからずっと私が出てくるまで見張っていたらしい。最悪だ。


「ほんっとうに違います! お茶をごちそういただいただけで」

「あの家、お坊ちゃんと使用人さんくらいしかいないはずなのに。男しかいない家に招かれるなんてのは」

「ほんっとうに違いますから!」


 駄目だ。暇な人はどれだけ本当のことを言っても簡単に面白そうな方向に曲解してくる。

 私は何度も何度も「本当に違います!」と言ってから逃げ出したものの、心臓がドッドッドッドッと嫌な音を立てているのを止められずにいた。

 ……きっと今日が終わる頃には大変なことになるだろうと、そう思いながら。


****


 案の定、スピーカーおばさんのおかげで、父も長兄も怒り心頭だった。普段ならかばってくれる母は寝込んだままで、未だに起き上がることはできない。


「嫁入り前がなにをやっているんだ!?」

「だから、洗濯物を取りに行っただけで……」

「なんで人に家にわざわざ入るんだ? やましいことがあったからだろう?」

「他にどうしろと? 玄関で待たせてもらってても噂されるし、中に入っても噂されるし、勝手に敷地に入っても噂されるじゃない。こんなんどうしろっていうの?」

「口答えするんじゃない!」

「いった!」


 髪を掴まれ、そのまま蔵に放り込まれる。

 普段畑の機材一式を入れている蔵は、当然ながら空調はない。そこに外から鍵を付けられてしまった。それに私はバンバンと戸を叩く。


「やめて! 暑い!」

「ここで反省していろ!」

「お母さんの世話のために私を呼び戻した癖に、言っていること無茶苦茶だよ!?」

「うるさい! 親の言うこと聞かない女は知らん」

「私のことはさておいて、お母さんの世話くらいちゃんとしろー!?」


 さんざん文句を言ったものの、結局取り合ってもらえず、私はかろうじて開けることのできた蔵の窓を開け、そこで涼んだ。細い通気口からしか風は通らないものの、風さえ通っていれば蒸し殺される心配はなさそうだ。

 私は風の通る場所に陣取り、三角座りをした。

 そういえば。嵐が来るって八雲くんは言ってたけど。今日の天気は晴れだし、NHKでやっていた天気予報でも晴れのままだったはず。あれは本当だったんだろうか。

 私はわからないまま、少しだけ寝てしまった。

 人間、どれだけ悲しくとも苦しくとも、眠っているときだけは自由なんだ。


****


 天気予報では嵐なんて全く言っていなかったのに、本当に蔵なんて簡単に潰されるんじゃという恐怖が来るほどに、突風が吹きつけてくる。

 暑くて苦しいけれど、結局は通気口を閉じ、私はじっとするしかできなかった。

 お腹が空いた。喉も渇いた。三日までは飲まず食わずでも生きられるはずだから、あと一日は生きられるはずだと希望を持って待つしかなかった。

 そんな中、あちこちから悲鳴が聞こえた。

 いったいなにがあったんだろう。あいにく窓なんてない蔵からでは外の光景なんてまるでわからず、私はただ座り込んでいた。

 そういえば、蔵の中には水はちっとも入り込まなかったんだけれど、これはいったい?


****


 翌日、私の閉じ込められた蔵は唐突に開いた。正確に言うと、嵐でなぶられ続けて、経年劣化も相まって錠前が壊れただけだった。

 私は外に出て、愕然とした。

 水で見事にあちこちが浸水して、温泉のように漬け込まれている。あれだけ丹念に育てていた畑も、これでは水を抜いても追いつかないだろう。

 なによりも、畑に使うトラクター一式が、どこの家のものも流されて使い物にならなくなってしまっていた。


「おしまいだ……おしまいだ……!」


 あちこちの家から絶望の声が聞こえ、このままではこの村でどこかの家を皮切りに心中でもはじまるんじゃないかという凄みを感じた。

 私はまだ実感がわかないまま、呆然としていたら。

 いきなり手を叩かれた。


「皆さま、ご安心ください。すべての家の機材、畑の作物の保証、全て我が小泉家が賄います!」

「……はい?」


 小泉邸の執事さんいわく、小泉家は代々金にならないものを買い上げて、金になるようにしてから手放すことで財を成した家らしい。

 私にはよくわからなかったけれど。でもこのままじゃ機材の買い替えに賄えなくなってしまった一年の生活費を巡って、どの家からも自殺者が出てもおかしくない状態だった。

 皆が皆、我先に我先にと、小泉家の申し出に飛びついだのだった。

 ただ私だけは、これはあまりにも出来過ぎな展開に、呆然としていた。

 普通に考えれば、嵐ひとつでなにもかも台無しになってしまった村を、たまたまやってきた金持ちが助けたハートフルストーリーになるけれど。


「お姉さん、これでお姉さんは助かったよ」

「……ありがとう。でも、これ……」

「やっぱりお姉さんは賢いね。これが詐欺だって気付いたんだ?」


 彼はクスクスと笑って、家の中ですら外さなかった狐面をやっと外した。

 顔の半分は鱗で覆われ、目の色は金色……どう見てもそれは、人の顔ではなかった。


「あなた……一体誰?」

「村の因習に染まった人間はわからないし見えないけどね。君の場合は外から来た人との間に生まれ、一度は外に逃げ出したから見えるんだろうね。村に染まった人たちは、もう誰も気付かないけどね。ぼくはこの村の社に供えられて神の権能を与えられた現人神だよ」


 思わずまじまじと彼を見た。


「人身御供なんて……いったいいつの話?」

「誰も覚えてないくらい前の出来事だよ。気付けば執事だってできていたし、世話役だっていたけれど、久々に故郷に帰ってきても誰も覚えてないんだからさ。本当に大昔だったんだろうさ」


 まさか……と思う。


「天気予報にも乗っていなかった嵐を起こしたのは……」

「ぼくだね」

「おかしいと思った。タイミングよく村の人たちが全員機材を外に出したまんまのタイミングで嵐で壊れるなんて」

「ここの村人たちは、愚直に昔ながらの生活を維持していたからね。だから神の声なんてもう聞こえないし、ありがたがらない……子供を社に供えていたことだって、もう忘れてしまっているよ。だからぼくに復讐されている事実にも、もう誰も気付きようもないのさ」


 八雲くんはクスリと笑う。

 ……要はあれか。これだけ立て替えたのだから、もう村人は何人たりとも、小泉家に逆らうことはできない。事実上の村の乗っ取りだ。

 彼らは勝手に小泉家を讃える。そして彼に少しでも違和感を持った人たちは、スピーカーだらけのこの村だとやっていけず、勝手に私刑にかけられ、村から居場所を奪われる。

 誰もここで思考誘導されていることに気付けないし、気付いたところで、借金の肩代わりを辞められてしまったらもう生活ができない。だから気付かなかったことにするしかない。

 誰もかれもが忘れてしまった現人神の復讐は、誰もかれもがわからないままに決着がついてしまったと。


「……そっか」

「どうするせつな? 今なら君は自由だ。ぼくが君のお母さんを治してあげるから、君のお母さんと一緒に出て行っていいし、このままぼくのところに嫁いでもいい」

「そうだねえ……まずはお母さんを治して」

「うん」

「それからねえ……私が欲しかったからって、私から逃げ場を全部奪って、恩義だけを与えるのはよくないよ。私が欲しいなら、ちゃんと毎日口説いてね」


 それに八雲くんは、目をパチクリとさせた。

 あれだけ派手に住んでいるにもかかわらず、違和感こそあれど誰もかれもが彼を追求できなかった理由。

 それはきっと、八雲くんは私が帰ってくるまでは、復讐する気もさらさらなく、誰もかれもが供えられた彼のことを忘れてしまった感傷と共に、この村で生き直してこの村で死ぬつもりだったんだろう。

 たまたま隣に私が帰ってきて、たまたま私がひどい目に合っているのを見なかったら、彼はこのまま神様としての力だって使わなかっただろうに。

 私よりもなんでもできる力を持っておきながら、私よりも甘っちょろい神様を、私は不憫に思ってしまった。

 憐憫は恋にはまだ程遠い。

 私が八雲くんを好きになれるように、いつか口説いてね。

 それに彼は真っ白な肌に少しだけ朱を差したような色をさせて「うん」とだけ頷いた。


<了>

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