第19話 笑いと幸福

「リバース」

「ニさん何枚リバース持ってるんです?」

「知らん。」

「あーもうイライラする…。」

 隊員たちは最初は控えめに見ていたけれど、途中からゲームに乱入し始めた。

 みんなで笑い合い、冗談を飛ばし合いながら遊ぶ時間がこんなに幸せだなんて、前の場所では想像もつかなかった。ここでは、いつも心が温かくなる。

 

 ――そんなことが何日か続いたある日だった。

 イチさんに呼び出された。

 また、殺されるのか、と思っていたけどそれはいい意味で裏切られた。

 「え?」

 そっと頭に触れる手と、ふわりと香る花の匂いに驚き、思わず目をしぱしぱとさせてしまった。これが、イチさんからの贈り物だなんて…。

 

「私はずっと一人でした。兄が裏切ってからはずっと、誰にも裏切られないよう、気を張っていました。」

「うん」

 イチさんは少し寂しそうに視線を落とし、「長い間、自分以外は誰も信じないようにしてきました」と静かに語った。

 だが今は違う…その思いが私にも伝わってきた。

 「でも、みゆきさんがUNOに誘ってくれて、とても楽しくて、楽しいって初めて思えたんです。みゆきさん、」

 イチさんは頬を赤く染め、視線を泳がせながらそれでも真剣な表情で私に向き直った。

 「私と、結婚を前提にお付き合いしてくださいませんか」その言葉が彼の唇から零れた瞬間、胸が熱くなった。

 『もちろんですっ…!』思わず涙が溢れて止まらなかった。

 胸がいっぱいになって、抑えきれずに彼に抱きついた。

 こんな幸せを感じられる日が来るなんて…。

 その後、さぁちゃんに嬉々として伝えたら、驚いてはいたけれど嬉しそうに「おめでとうっ!」と言ってくれた。


 

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