第13話 真っ暗な空間

 周囲は真っ暗で、自分の体がそこにあるのかも分からなかった。

 まるで無限の暗闇に放り込まれたような感覚だった。

 ここはどこだろう。

 不意に、文字が現れた。

 現れた文字は3つ。

 ゲームオーバーと大きな文字で書いてあって、その下に小さく『Retry』『ニューゲーム』とあった。

 Retryには、よくレトロゲームにある、右向き三角があった。

 目の前に浮かんだ『ゲームオーバー』という文字に、思わず息を飲んだ。

 ここは一体何なのか?

 現実とも夢ともつかない光景に、背筋がぞわりとした。

 『Retry』の文字に手を伸ばしながらも、胸の奥で何かがざわめいていた。

 これを選んだら、またあの終わりが待っているのではないか――そんな不安が頭をよぎった。

 『ピロン』と響いた電子音が、暗闇にぽつんと孤独に響く。

 何かのゲームの中に入り込んだような不思議な感覚が、私の中に広がっていった。

 こういうとき、前にもあったことがあるな…、とぼんやりと考えた。

 なんだけ、こういうのをデジャヴって言うんだっけ。

 とも考えた。

 視界が開けてきたけど、私はまだ余韻のなかにいた。

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