第4話 魔法使いと
「イチさん!ニさん!いい加減、執務室での戦闘はやめてください〜〜〜!本部が壊れちゃいます!」
眉をハの字にして、困ったように言っていた。
なんだか小動物のようで可愛らしかった。
イチさんは、ハッとしたかのように、私に二人を紹介してくれた。
「あゝ、忘れていました。こちらの暑苦しい単細胞はニです。まぁ、単細胞とでも呼んでやってください」
ニさんは、イチさんの紹介に対して「おい」とツッコミを入れつつ、よろしくな、とあいさつをしてくれた。
「で、この女の子はサンさんです。“さん”が重複してしまってややこしいので、さぁちゃんとかサンとか呼ばれていますね。」
彼女は、ふにゃりと笑いながら言った。
「よろしくです〜。さぁちゃんって呼んでください!」
「あ、そういえば、あなたの名前を聞いていませんでしたね。失礼ですがお尋ねしてもよろしいですか?」
サンさん…、否、さぁちゃんがそう言ったことで自己紹介を忘れていたことを思い出した。
「私の名前は水野深雪です。もともといた世界では社会人をやっていました……」
「みゆきか!いい名前だな!」と、ニさんは少年のように目を輝かせ、屈託のない笑顔を浮かべた。
さぁちゃんは、大きな瞳をぱちぱちと瞬かせながら、小首をかしげて見上げてきた。
「よろしくお願いします」
軽く、さぁちゃんと握手をした。やっぱりこの子は小動物みたいだな、と思った。
―本当にこの世界でよかった、とも少し考えた。
イチさんは、にこりと笑ってこちらを見ていた。けれど、その笑顔の奥に、どこか冷たい光を感じたのは気のせいだろうか。
「じゃあ、イチ俺らはみゆきに魔法判定とか諸々の処理をするからそこで待っていてくれ。」とニさんが言った。
「…わかりました。」
にこりとイチさんがほほ笑んだ。そしていってらっしゃい、と言ってくれた。
『イチさんがいたらあまり話せませんからね』と、さぁちゃんが小声でニさんに囁いた。その表情は笑っているのに、どこか緊張を含んでいるように見えた。
「否、造作もないよ。」
からからとニさんが笑いながら言った。
何があるのか、少しだけ怖いと感じながら、二人について行った。
二人の後に続き、廊下を進むと、辺りは次第に暗く静寂に包まれていった。ランプの微かな明かりだけが揺れているが、どこか冷たい空気が肌を撫でる。
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