第5話 狙い

「なぁ、みゆき」

「はい、?」

「俺がなぜ扉を壊してまであそこへ行ったか、わかるか?」

 ――というと、態々扉を壊して、あそこへ行ったの…?どうしてそこまで…。

「俺は、イチを止めたいんだ。イチが何を考えているのかは分からねぇ。でも、この儘だと彼奴は、この世界を壊す…」

 ニさんは目を伏せ、苦しげに拳を握りしめながら呟いた。その手はわずかに震えていた。

 「私達はそれを止めたいんです。そしてそれをできるのは――みゆきさん、あなただけです。」

 みぃちゃんも、ニさんも私を見ていた。

「私なんかがこの世界を救うなんて…とんでもない、と頭の中で何度も否定した。だけど、ニさんとさぁちゃんの真剣な眼差しを前に、言葉が喉に詰まる。

 痺れを切らしたのか、沈黙を破ったのはさぁちゃんだった。

 「うん、急に大変なことを頼んでごめんね。でも、一緒にやっていこう?」とさぁちゃんは、穏やかな笑顔でみゆきの手をそっと包み込んだ。

 心の中では逃げ出したい気持ちもあったが、ニさんとさぁちゃんの期待に応えたい、そんな思いがほんの少しずつ力をくれた。

 静かな室内には、私を見つめる二人の視線だけが感じられ、少し息苦しく感じるほどだった。

 

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