新しい日々
翌週、稔の生活は少しずつ変わり始めていた。昨日までの自分とは違う自分を、今日は確かに感じることができた。心地よい風が吹く朝、目覚めとともにその変化を実感した。
昨日、彼女との会話を思い返しながら、稔は自分のペースを大切にすることを心に決めた。その言葉が、これからの自分を支えてくれるだろう。焦らずに、確実に自分を進めていこう。
「今日は何をしようかな」
稔は窓の外を眺めながら、無意識に呟いた。空は快晴で、どこか新しいことが始まる予感を感じさせる。それに、昨夜寝る前にちょっとだけ思い浮かべたことを、今日から少しずつ始めてみようと思っていた。
昼過ぎ、稔は部屋を片付けながら、手にした本を開いた。物理学に関する内容だったが、今日はそれをじっくり読むことにした。最近、気になっていた内容があり、そのことについてもう少し理解を深めたかったのだ。少し堅苦しく感じるかもしれないが、こうした時間が心地よく感じるようになってきた。
「少しずつ、自分が好きなことに向き合おう」
稔は心の中で呟いた。どんなに小さなことであっても、それが自分にとって大切なことだと感じられるようになった。過去の自分が無理に大きな目標を追い求めていたことを振り返り、今は無理せず、小さな喜びを見つけながら進んでいこうと考えた。
その日の夕方、外に出ると、また彼女が公園を歩いているのを見かけた。何気なく視線を送ると、彼女は稔に気づいて微笑みかけてきた。
「またお会いしましたね」彼女は軽く手を振りながら言った。
「本当に、偶然ですね」稔も軽く返し、二人は並んで歩き始めた。今日は特に急ぐことなく、ただ歩きながら話をするだけのひとときだった。
「最近、どうですか? 生活は少しずつ落ち着いてきましたか?」彼女が尋ねた。
「はい、少しずつですね。新しいことを始めるには、やっぱり自分に合ったペースでやらないと、無理をしてしまうので」稔は自分の考えを正直に答えた。
「それが一番大事だと思いますよ。無理しすぎると、結局続かなくなりますから」彼女は穏やかに頷きながら言った。「少しずつ、自分のペースで進んでいくことが、長い目で見て良い結果につながりますよ」
その言葉に、稔は心から納得した。無理せず、一歩ずつ進んでいくこと。それが、自分にとって一番大切なことだと改めて感じた。あの時の風景や彼女の言葉が、心の中に深く残っていた。
「ありがとうございます。これからも、少しずつやっていこうと思います」稔はにっこりと笑い、歩みを続けた。
「私も、少しずつ自分のペースでやっていますよ」彼女は微笑み返して言った。「お互い、無理せずに前に進んでいきましょう」
その言葉が、稔にとって心地よい響きを持っていた。自分を大切にしながら進んでいくこと。そのことを改めて感じ、心に誓った。
日が沈み始め、柔らかな夕日が公園を照らし始める。稔はその光を浴びながら、これからの新しい日々に胸を膨らませていた。焦らず、少しずつ前に進む。そうすれば、きっと自分にとって大切な場所へと辿り着けるだろう。
「新しい日々が、きっと待っている」
その思いを胸に、稔は再び歩き出した。
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