第19話 セバスチャンとアンナ

ふう…恐ろしいお方だ。


マーリン様が自室に戻った後、思わずそうおもってしまった。


おそらくあの一瞬で我々のことを見抜いてしまわれたのでしょう…


私が隠し持っている暗器の位置。

私が得意としている武器が何か。

それに、メイドの中に紛れ込ませているアンナの存在も。


今回、王家からの久々の「仕事」の指令がくだり、マーリン様を「執事」として表からも裏からもしっかり支えよとのことでしたが…


流石は、賢者様ということなのでしょうね。

最近しばらくは息子に仕事を任せて後進の育成にばかり時間をさいていたせいか、私も鈍っていたかもしれません。


マーリン様のさきほどの言葉もきっとそういうことなのでしょう。

久しぶりに訓練しなおしますかね。


そんなことを考えていると、

スッとアンナが私の横に現れた。


「…親方様、申し訳ありません。」


アンナが少し元気のない声、といっても付き合いが長くなければわからない変化なのだが、そんな声で話しかけてくる。


アンナはマーリン様に瞬時に正体を見破られてしまったので少し落ち込んでいるようだった。我々の中でも、特に優秀なアンナを今回のチームにいれたのだが…。


「相手が悪かったのです。私も見破られました。」


「っ!?」


「お互い鍛え直す必要がありますね。マーリン様からもそのように指摘されましたし。気を引き締め直していきましょう。」


「…はっ!」


そう返事するやいなや、

アンナはその場からスッと自らの持ち場へと移動したのだろう。その場から消えていった。


さて、私も自分の「仕事」に戻りましょうかね。





……






「マーリンの動向を探らせていた影たちはやられたか。」


「はっ。…一夜にして全滅です。」

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