第16話 マーリン

自己紹介がおわったあとも、

どうやらエレナは緊張しているようだった。


普段は結構「天才魔法使い」と「魔法バカ」の境界ぎりぎりの変人ぶりを発揮してミラや子どもたちがドン引きしないか内心ソワソワしていたが、意外と人見知りなのかもしれないな。

まあ、はじめましてだし。


お茶でも飲みながら、

一息ついている間にちょっとずつ緊張もほぐれていくことだろう。


そうだ、

緊張を和らげるためにも、

新しい移動手段について褒めちぎっておこう!



「いやぁ、改めてエレナが言ってた新しい移動手段には驚いたよ。結構画期的なものなんじゃないかな?とても素晴らしいと思うよ。」


「えっ?ありがとうございます……。まさか褒めていただけるとは。むしろたくさんご指摘をいただくんじゃないかと、思っていましたよ。ははは。」

と、驚きながらも嬉しそうなエレナ。


「いやいや、本当にすごいことだよ。本当にエレナは天才だなって。だってあっというまに孤児院に着けたしね。ミラもそう思うだろう?」


「ええ。思ったよりもはやくてびっくりしましたわ。エレナさんは優秀ですわね。」


「ええっ?!結構時間がかかっちゃったかとおもったんですけど……。ありがとうございます。お二人に褒めていただけるなんて感激です。もっと精進します。」



「ちなみに、あれってもしかして量産されるのかい?そうなると結構世の中を変えるくらい、すごいことになりそうだけれども。」



「そうなんですよ!!あれが量産された暁には…!ただ、今回のことで、いろいろ改良の余地があるなと気付かされましたので、まずはそこの改修が必要かなと。」


「そうなんだね。期待しているよ。」


「はい!」


だんだんエレナの緊張がほぐれてきたようだ。



「王都のことやエレナさんのことについて、是非お話聞きたいです!」

とサラ。


こういう時はお姉さんなサラが頼りになる。


ほかの子どもたちもサラに続いて、話の輪に入ってきた。


うんうん。

どうやらうまく馴染めそうだ。


今後王都に引っ越す場合は、ミラたちもエレナと顔合わす機会も多くなるだろうし(弟子になっからね)、不慣れな王都での暮らしの面でも何かしらエレナにサポートしてもらえることになるだろうから、


はからずも今日顔合わせできたのはよかったかもしれない。


そんなことを考えていると、




「エレナさん、あなたからみたマーリンの王都での活躍のことを私たちにも話していただけますか?マーリンは一応話をしてくれたのですが、恥ずかしいのか、謙遜な言葉が多くてね。あなたからも話を聞きたくって。」


突然、ミラがそんなことを言い出した。


「任せてください!ミラ様!お師匠様の英雄譚ならどれだけでも話せますよ!!」



エレナが突然立ち上がり、

「賢者」の大活躍の様子をまるで吟遊詩人のように語り始めた。


目を輝かせる子どもたち。

ミラも、どこから取り出したのかノートにメモを取りながらふむふむと、質問をしながら聞いている。



誰だよそれ。

って思うくらいの「賢者」の大活躍。


自分は何もやってないのに、

何故こんなことに………


聞いててソワソワしてくるので、

自分はキッチンに言ってお菓子とお茶のおかわりを作ってくることにしよう。


うん、そうしよう。

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