第14話 エレナ(2)

この飛行船ならば、

すぐにお師匠様の家までひとっ飛び!


と、出発時に強気だった自分の心も、

何回折れそうになったかわかりません…



お師匠様が住んでいるところは、

「王都からちょっと離れた、何の変哲もない、ただの山の麓の孤児院」とのことで、

地図を見る感じ飛行船ならそんなに時間がかからないはずだったのですが……


流石、お師匠様。


孤児院がある山付近のエリア全体に魔法を展開して、外敵をに近づけさせないようにしていますよね?


私にだってこれくらいはわかりますよ!


濃霧の魔法で視界を奪いながら、

風の魔法で気流を変えているから、


真っ直ぐ飛んで濃霧を抜けたとおもっていたら、気づかないうちに元の場所に戻っていたなんてことが起こるんですね。


ええ、わかりますとも!

流石に何回も同じことが起これば嫌というほどね!!


しかも、時空も歪んでいるのか、

時間の感覚や距離感もおかしくなっています。


なんという、魔法の空中迷路。


これ、たどり着かせる気ないやつですよね?


でもこれを超えられないと弟子だと認めないってことですか?


いいでしょう。

やってやりますとも!




…………






何回目の挑戦でしょうか?

途中で数えるのもやめてしまいましたが、

ようやく展開されている魔法の空中迷路の解析がおわりました。


解いてしまえば、あとは突破するだけという段階になってみると、

忌々しい!と思っていたものも、

美しい魔法だったなと感嘆せざるをえない。


お師匠様は、

これを解かせることで、

魔法への理解を深めさせるとともに、

精神の鍛錬をさせたかったのではないか?


と、考えてしまうくらい、

この魔法の迷路を解いた自分は、

達成感で満ち足りて、心にゆとりができたようです。


さあ、ようやく突破です!!


………



濃霧も晴れて、

山の麓にポツンとある建物(きっと孤児院でしょう)が見えてきました。


ふぅ………



これでお師匠様にも少しは認めてもらえるだろうか?

褒めてもらえたら嬉しいな〜


ふへへ、とニンマリしながらあれやこれや妄想していたのが悪かったのでしょう。


思考の隙間を狙うように、

凄まじい威力の炎と氷の魔法が飛行船にむかって飛んでくるではないですか!!


まるで、油断大敵!と嘲笑うかのように。


というか、


このタイミングでいきなり攻撃なんて、

酷すぎますよぉ、師匠おぉぉぉ!!!





泣き叫びながら、

必死に飛行船の魔力障壁を最大出力にしたことで、なんとか機体へのダメージを減らせて航行には異常ないかと思いきや、


あまりに飛行船に無理させすぎたのか、

動力源周りからけたたましい音とともに煙がではじめたではないですか!!


ボンッ!!


あ、動力源が壊れた……




「あわわわわわ」



ここからは、

無我夢中でしたが、我ながらよくやりました。


風魔法を展開し、飛行船がゆっくり地上に降りられるように制御に成功!


土魔法を使って墜落地点をふかふかのクッション状の土に変え、墜落の衝撃を和らげられるように成功!


そして動力源と墜落時の飛行船の底面を水魔法で冷却し、延焼したり、爆発したりしないようにすることに成功!


そうこうしているうちに、

無事、孤児院からちょっと離れたところに着陸できたようです。


あああ……本当にやばかったです……



なんとか飛行船から這い出してみると、


孤児院から人が出てきたようでした。


念願のお師匠様とのご対面です。


ですが、


「お師匠様ぁ〜!!!いきなり攻撃するなんてひどいじゃないですかぁ〜!!」


つい口に出してしまいました。


だって!


あんな難しくも美しい魔法の空中迷路解いて、達成感に浸っているタイミングで攻撃してくるなんて、酷すぎるじゃないですか!!!






「すまない」


お師匠様はしばらく考えたあと、


不思議そうな表情を浮かべながら、

そう口にしました。

あんまり申し訳なさそうにはみえませんね。


なにかいろいろ考えていたように見えましたが……


もしかしてお師匠様は、私であれば、あれくらい防げるだろうとおもっていたのだろうか?





……




まあ、いいでしょう。


油断した私が悪いってことですね!

そうでしょうとも!


十分すぎるくらいに今回の試練で学ぶことが多かったのでよしとしましょう。


もっと研鑽積んでいきますよ。


が………


壊れてしまった飛行船どうしましょうか……


うん。


なにはともあれ、

お師匠様の住む孤児院に到着することができました!



お師匠様には、飛行船の感想についてじっくり聞くことにしましょう。どうせずっと監視魔法で見ていたんでしょうからね。

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