第11話 マーリン(3)
ミラとお茶をしながら話していると、ドタドタと4人の子どもたちが外から帰ってきたようだ。
「おかえりなさーい!!」
「帰ってくるの遅くないですか?」
「おっかえり〜!お土産は〜?」
「……おかえり。」
いちばん最初に飛び込んできた、元気ハツラツなのがサラだ。
燃えるような赤髪の活発な娘であり、4人の子どもたちのリーダー格でもある。
2人目の青髪の礼儀正しい娘は、ディーネだ。ぱっと見、氷のように目つきが鋭くて冷たい印象を受けやすい外見や口調が厳しめで怖がられやすいが、実はただのツンデレってやつだ。
3人目のおちゃらけてるのがシルフィ。
いたずら好きで、風のようにあっちこっち行っちゃうような自由な子だ。個性的な帽子を日替わりでかぶっているが(今日は猫の被り物だ)、帽子を取ると綺麗な翡翠色の髪色をした子だ。
4人目の引っ込み思案なのがムウ。
ダークブラウンな髪の甘えん坊の末っ子だ。無口な芸術家肌で、最初は何作ってるかわからないこともあるが、完成したものをみると天才的な物が多い。たまに変なものもつくるのもまた御愛嬌、な子だ。
髪色の違いから分かるように、
私とミラと子どもたちの間に血の繋がりはない。
だが、そんなの関係ない。
私たちにとって大切な子どもたちだ。
いまはミラ、4人の子どもたち、私の6人で暮らしている。
前までは、他のこどもたちもいたんだけれども、順番に巣立っていって、それぞれの場所で活躍している。そう思うと、あとこの子たちだけかあ、としみじみ思ってしまう。
「ふふ。ちょうど、子どもたちが帰ってきたわね。彼女たちに今後のことについてお話しましょうか。」
ミラは微笑みながら、四姉妹を席につかせた。
なになに?と興味津々な子どもたち。
「おほん。みんなに大事な話があるんだ。実はね、王様から賢者という称号を授ていただいたことはみんなも知っていると思うんだけど、さらに王様から魔法学校の理事長になってくれないか?と頼まれちゃってね。王様たっての頼みだし、国のために力を貸してほしいって言われたら断れないしね。どこまで期待に応えられるか、わからないけれど、頑張ってみようと思うんだ。」
珍しく静かに話を聞いている子どもたち。
「そこで、住み慣れたこの家を出るのはさみしいけど、しばらく王都で暮らそうと思うんだけどどうだろうか?」
ピシっと。
部屋の空気に緊張がはしる。
「…ひとりで王都に行っちゃうの?」
と、サラが代表しておずおずと聞いてくる。
「いいや。みんなも一緒だよ。ちょっといままでの生活とは違うから戸惑うこともあると思うから、みんながよければだけど。」
と答えるやいなや、
「もちろん行きます!!!」
と、前のめりに机をばん!と叩きながら、サラ。
「断る理由がないしね。」
と、相変わらずのツンデレディーネ。
「王都楽しそう!!じゃあ、あれもこれも…ふふふ。」
と、早速なにか企んでるらしいシルフィ。
「……うん。」
と、無表情に見えるがソワソワワクワクのムウ。
「もちろん、私もOKだわ。」
と、微笑みながら頷いてくれるミラ。
みんな、慣れない土地へ引っ越すから少なからず不安に思うだろうに。
こんな自分についてきてくれるなんて、本当にありがたいことだなあとおもう。
「ありがとう。みんな。では、今日はゆっくりして、早速明日から引っ越しの準備をしようか。」
「あと、しばらく王都にいくなら、孤児院から巣立っていった子どもたちにも手紙を出しておきましょうか。私たちが王都に行っている間に、訪ねてきてしまうと悪いですものね。」
とミラ。いつもミラはしっかりしている。
「ああ、確かにそうだな。みんなに手紙を出そう。」
巣立って行ったみんなは元気かな?
「それよりも、王宮でのお話聞かせて!!」
と、子どもたち。
こうして、今日もマーリン家での暖かい時間がゆっくりと過ぎていくのであった。
………………
その頃の王都では、
「なんと?またマーリンは突然いなくなってしまったのか?まあいつものことか。きっと今頃もう自宅にいることであろうよ。(お師匠様は毎度の如く移動が早いなあ、余程家族に会いたかったのだろうな)。」
と呟く王様と、
「えええ、最新式の移動手段のプロトタイプを試してみてくれるって言ったのに……。」
と、がっくりうなだれるエレナ。
「………はっ!もしかして…!?こうしてはいられない!失礼します!!」
と、急にエレナは元気を取り戻して、ドタバタと走っていくのであった。
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