第8話 冒険者ギルドにて

「今回もマーリンの旦那がやってくれたみてえだな」


「ええ。見事なものです。おかげで、今回の魔物の同時襲撃で冒険者に負傷者は多くでたといいつつ、当初想定されたよりも被害は少ないと言ってよいでしょう。」


「【千里眼】【神出鬼没】の魔法使いの通り名は伊達じゃねえな。すぐに駆けつけてくれるとは思ってはいたが、まさかほぼ四方面同時に魔物を撃退してくれるとは、な。しかも戦略級の魔法を四発ぶっ放すたあ、一体全体旦那の魔力はどうなってんだ?改めて人外じみてるぞ。人間じゃないと言われたほうが納得できるぞ。」


「まさに賢者、ということなのでしょう。魔法師団長のエレナさん曰く、魔法の深奥に達しているマーリン様だからこそできる境地なのだそうです。」


「あの姉ちゃんがそういうなら、そういうもんなんだろうな。」


「ええ。それにしても今回もマーリン様は報酬を辞退されるのですかね?」


「おそらく、な。いつも自分はやってない、自分にはそんなことはできない、って苦しい言い逃れを繰り返して報酬を受け取りやがらないからな。」


「本当に困ったものです。以前から、低ランクの薬草採取の依頼を受けるついでに、誰もが手を出しづらい依頼を知らないうちにこなしちゃう方ですからね。」


「ああ。自分は薬草を採取していただけだから、こんな報酬はもらえないだなんて、よく言ったものだぜ。あれだけ、厄介なモンスターを討伐しておいて、な。」


「ええ。ですが、おかげでなかなか高額な報酬金額を払えない村々も助かっていますし、我々が検知する前に被害が広がるのを食い止めてくれますからね。それを薬草採取の報酬金額でやってくれるのだから、もう聖人ですよ。」


「ああ。だが、流石に今回ばかりかは、目立ちすぎたからな。戦略魔法をあんなに連発で撃てる奴なんてこの国にマーリンの旦那しかいねえ。今回ばかりは報酬金を受け取ってもらうしかねえな。むしろ報酬金額を受け取ってもらわねえと、冒険者ギルドは何をやってんだって、王国民から苦情が殺到するぞ。下手すると王宮からも。」


「そうですね。なんとしてでも受け取っていただきましょう。そしてかねてより話していたいS級冒険者の称号も与えてしまいましょう。」


「そうだな。そうと決まったら、そう動くとして、今回の魔物の襲撃についての調査報告を聞こうか。」


「ええ、それについては……」




こうして、マーリンに対して、莫大な報酬金額とS級冒険者の称号が冒険者ギルドから与えられたのであった。

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