第6話 帝国にて

「今回も失敗だったようだな。」


「はっ!魔物をつかっての4カ所からの同時襲撃がことごとく撃退されてしまった模様です。」


「またしてもマーリン、か?」


「はい。マーリンも人の子、4カ所の同時襲撃であれば流石に対応できなかろうと策を練りましたが………。」


「マーリンにしてやられたということだな。」


「はい。敵ながらあっぱれと言うほかないかと。王国内で仕掛けていた工作部隊によると、北の魔物には火の戦略魔法、東の魔物には土の戦略魔法、南の魔物には水の戦略魔法、西の魔物には風の戦略魔法が惜しみなく使われ、まるでこちらに力を見せつけるような、圧倒的な魔法だったとのことです。それに、移動時間も考慮すると、おそらく瞬間移動なのか時空を歪めているのかわかりませんが、なにか特殊な魔法をつかっていることは確かです。」


「こちらから仕掛けたつもりが、逆に力を思い知らされるばかりか、王国の士気をあげる格好の場となってしまったというわけか。」


「まったくもって人外じみています。正真正銘の化け物ですよ。」


「工作部隊を使って内側から揺さぶるつもりが、これでは隙はないな。」


「はい。当初の計画は変更し、工作部隊および第2陣の国境付近の軍は急ぎ撤退させました。第2陣まで壊滅させられてしまってはたまりませんゆえ。」


「賢明な判断だな。それにしても帝国を一人で相手どるか。我が配下に加えられるものなら加えたいものよな。そうすれば、我が帝国を阻むものもなくなるであろうに。平和ボケした王国にはもったいない傑物よ。」


「まさしく。してザガレス様。シンフォニア王国はいかがしますか?」


「しばらくはシンフォニア王国は後回しでよい。あわよくばとおもったが、今回の戦果としては十分であろう。今回新しく領土に加えた2国の統治を優先させよ。どうせマーリンは王国より外に出て、こちらに進撃してくることはあるまい?」


「ええ。あれだけの力を持ちながらなぜか王国外には全くでてきませんからね。それだけが救いかと。こちらから攻めるとこっぴどくやられますが…」


「本当に面白い存在だよ。いつか直接対峙してみたいものよな。」




皇帝ザガレスは不敵に笑みを浮かべながら、

シンフォニア王国がある方をギロリと睨んだあと、踵を返して帝都に戻っていくのであった。

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