第2話 マーリン(2)
ようやく自分に割り当てられた客室まで帰ってきたときには、もう何もする気も起こらずそのままベッドに倒れこんでいた(この世のものでもないくらい柔らかくてずっと寝ていたい)。
王様から『賢者』というまったくもって不適格な称号を授かったあとは、それはもう散々だった。
誰と何を話したもんだかわからないパーティに参加させられ、いかにボロを出さないか必死すぎて何を言ったか何も覚えていない。
貴族の一人が、魔法の指導をしていただきたいと言って来たときは本当に焦ったね。
その言葉を聞きつけたほかの貴族たちが、「こら、抜けがけするんじゃない」「私の息子を先に弟子にしてください」「いや、私のほうが先だ!」と目を血走らせながら殺到してきたときはやばかったね。何あの人たち怖いんだけど。
さすがに夜も遅く、マーリン殿もお疲れでしょうから明日にしましょうか、と特にオーラのある王族の方が場をしきってくれなかったら、今なお質問攻めにあっていたことだろう。
そもそも魔法が使えないのだから、何も教えることないし!
絶対彼らのほうがはるかに魔法のことわかるんじゃないのか!?
(むしろ魔法を使えるように1から教えてほしいくらいだ)
ああ胃がキリキリしてきた、、
もういっそのこと、魔法使えないって言ってしまおうか、、
ああ、早く家に帰ってゆっくりしたい、、
そんなことを考えていたら、だんだんまぶたが重くなってきて、ふと気づいたら夢がはじまっていた。
家のお留守番をお願いしているミラと子供たちの夢だ。
こんなにストレスまみれな状態でも寝られるなんて意外と自分って神経図太いのかも?
そんなことを夢の中で思いながら、そのまま夢の世界に身を預けることにした。
ちゅんちゅん
いつもの小鳥たちのさえずりが聞こえる。
なんだか暖かいような、それでいて優しいような、そんなぬくもりを横に感じた。
目をこすりながら目を開けて横をみたら、
そこにはいつものようにミラが寝転がってほほえんでいた。
「おはよう、マーリン。」
「おはよう、ミラ。って、あれ?」
朝、目が覚めたら、自分の家のベッドで寝ていた件。
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