賢者様は魔法が使えない

kumagoroku

第一章

第1話 マーリン

私の名前はマーリン。

ただのマーリンだ。


とある王国の山奥の田舎でひっそりと暮らしていただけの、そこら中にいそうな、ただのおっさんだ。


長身・イケメンでもなければ、

実は服の下は筋骨隆々な身体だ、ということもない。(むしろ最近たるんできている)


魔力もあるわけでもない(むしろなにもない)し、これといった特殊技能があるわけでもない。(欲しい)


一つだけ、他の人と違うところがあるとしたら、いわゆる『異世界転生者』であることだけだ。


勘違いしないでほしい。


別に何か特殊なスキルや能力を女神様から授かっているわけではないし、


ステータスウィンドウなんて開けない。

(昔、何回も試したがわからなかった!)


レベルアップシステムなんてないようだし、

(なにかステータスが上がっている感覚なんてなにもない)


この世界の設定や未来や主人公の情報がわかるわけでもない。(そんなのわかったらイージーゲームだね)


え?


本当にまるでただのひとですね、だって?


だから、何度も何度も言っているだろう。


ただのマーリンだって。


なにも魔法も使えないし、


何かを成し遂げたわけでもないし、


ただ山奥の田舎でのんびり暮らしていただけだ。


なのに何故!?


何故、いま自分は王宮に連れてこられて、


何故、王様をはじめ偉い人たちに囲まれて、


何故、王様から『賢者』の称号を授けられているのか?


断れない雰囲気ですよね?


『賢者』って魔法を使うひとたちのトップオブザトップのような存在ですよね?(って王宮に来るまでに色んなところから聞いた)


何故、魔法を使えない私が『賢者』に?




その日、

王国中で、

歴代最高の『賢者』マーリンの誕生を祝う声が鳴り止まなかったという。




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