少年法を改正し「懲役30日」より怖い終身刑が存在したら…?終身刑に身を隠した裏の真相が明らかになった瞬間(とき)

天川裕司

第1話少年法を改正し「懲役30日」より怖い終身刑が存在したら…?終身刑に身を隠した裏の真相が明らかになった瞬間(とき)

タイトル:(仮)少年法を改正し「懲役30日」より怖い終身刑が存在したら…?終身刑に身を隠した裏の真相が明らかになった瞬間(とき)


▼登場人物

●夢川シンジ:男児。小学校6年生。12歳。生れ付いての殺人鬼と言われている。恐ろしく聡明で、恐ろしい程の美男子。8歳の頃から実の母親に体を売られる。生まれ付き、既に家庭崩壊している環境で育った。

●夢川奈美恵(ゆめかわなみえ):女性。シンジの母親。42歳。夜の店で働いており、金への執着が凄まじい。シンジを金儲けの道具にしか見ておらず、美男好きな大人達にシンジを売って金儲けをしていた。夫とは死別(シンジが産れる以前)。

●美男好きな大人達:30代~60代の男女。不特定多数のイメージで。

●小学生13人:シンジを食い物にした大人共の子供。全員8歳~12歳。全てシンジに殺される。

●横島 猛(よこしまたける):男性。38歳。夕夏の父親。シンジを心底から恨む。しかしこの猛もシンジを食い物にした事がある。

●横島夕夏(よこしまゆうか):女児。8歳。シンジに殺される。

●キャスター:女性。30代。一般的なニュースキャスターのイメージで。

●上司:男性。55歳。弁護士事務所の上司。

●桜田裕子(さくらだゆうこ):女性。35歳。弁護士。シンジの弁護をする。

●記者:男性。40代。一般的なメディアレポーターのイメージで。

●裁判長:男性。60歳。一般的なイメージで。

●警察:男性。30代。一般的なイメージで。少々過激な印象。


▼アイテム

●モルグアイ:健常人を植物人間にする試験薬。「モルグ」は「morgue(遺体安置所)」から採っています。


語りは夢川シンジとナレーションとに分けてよろしくお願いいたします。



メインシナリオ~

(メインシナリオのみ=4313字)


ト書き〈ニュース報道〉


キャスター)「えー本日の午後4時に、稀代の殺人鬼として知られる『小学生13人連続殺人』の犯人が逮捕されました。なんとその犯人は12歳の小学生だったと言う事で、日本の犯罪史上では最年少かつ、最悪の犯罪と呼ばれています」


上司)「…ふぅむ。なんともやり切れんな。あの連続殺人の犯人がまだ年端の行かない小学生の子供だったなんてな」


桜田)「本当に」


上司)「じゃあ頼んだぞ」


桜田)「少年法の適用範囲に落ち着きますよねやはり…?」


上司)「普通はそうなるだろうがな。しかし今この国では、少年法そのものの改正に踏み込んでいるらしい。どうなるかは裁判後にしかわからんよ」


語り:ナレーション)

この国では202X年において、少年法の改正が施行された。

「少年であっても死刑が執行される」という噂が、政界を取り巻くジャーナリズムの間で頻繁に取り上げられるようになっていた。

しかし政府はまだその制定内容を公にはしていない。

少年法において「終身刑」を取り入れた段階で終わっている。

実はこの「終身刑」が、実質的に死刑と同じ効力を持っていたのだ。


ト書き〈接見〉


桜田)「こんにちはシンジ君」


シンジ)「…」


桜田)「今の心境はどう?自分がした事、反省する気持ちになった?」


シンジ)「…俺は自分で計画して俺と同じようにしている小学生のあいつらを殺したんだ。今さら法律に守って貰おうなんて虫のいい事は考えてない」


桜田)「そう。悪い事をした、って罪の意識は今あるのかな?罪の意識ってわかるわよね?」


シンジ)「だから俺は悪い事をしたんだよ。法の裁きは覚悟してる」


ト書き〈シンジの生い立ち〉


語り:桜田)

僅か小学6年生で13人もの同じ小学生を殺した稀代の殺人鬼、この夢川シンジを、おそらく誰も許す事は無いだろう。

しかし私は、どうしても一方的にこの少年を責める気持ちにはなれなかった。

それは夢川シンジの悲惨すぎる生い立ちに理由があった。


語り)

シンジは生れ付いた時点から、既に家庭崩壊した環境で生まれ育った。

父親はシンジが産れる以前に他界しており、シンジの母親・夢川奈美恵は夜の店で働く傍らで、実の息子であるシンジを商売道具に使っていた。

シンジは生れ付きかなりの美男子で、また頭も良かった。

奈美恵はその息子の器量を利用した上で、そう言う子が好きな大人達(男女)に売りさばき、裏で多額の報酬を得ていたのである。

初めにシンジが売られたのは僅か8歳の時。

住む家も無く、奉公先を転々とする毎日の中、学校へも行かせて貰えず、心許せる仲間も友達もいない。

そんな中をずっと生き抜いたシンジであって、それまで積み重ねられた憤懣が遂に爆発した…そんな印象が強烈に漂うのである。


ト書き〈遺族による怒り〉


猛)「私はたとえ犯人が小学生であろうが、彼を到底許す事は出来ません!アイツに殺された私の娘は僅か8歳でした!小学3年生の可愛い盛りで、これから夢に向かって羽ばたこうとしていたあの子の命を、アイツは…あの夢川シンジは冷酷に奪ったのです!少年法など消えて欲しい!少年法に守られて出て来ても、私はきっと釈放された翌日にアイツを殺します!」


記者)「あなたのお気持ちは痛いほど分かります。しかし相手は小学生…子供を殺すという事に罪悪感やその辺りの…」


猛)「関係ありません!私の娘は殺されたんだその小学生に!私はもう生きる希望を奪われました!ここで自分の人生を終わりにしても何の悔いもありません!」


記者)「しかし別の情報によれば、あなたはシンジ少年と過去に、何らかの接点があったという噂もありますが、その辺りはどうなんですか!?あなたも少年を売買するような、そんないかがわしい店へ行かれた事があるんじゃないですか?」


毅)「な、なにを言ってるんですか!そんな事実は一切ありません!どこの情報ですかそれは!根拠を示して貰いたいですね!」


語り:ナレーション)

世間の反動は相当なものだった。

誰も殺人鬼・夢川シンジの生い立ちや経歴など見る者はいない。彼に同情を寄せようとする者すらいなかった。


ト書き〈夢川奈美恵と桜田が会う〉


桜田)「お母さま、シンジ君に1度お会いになられませんか?シンジ君はいま心を頑なに閉ざしています。他人を信用しません。特に大人に対する憎悪は酷いのです」


奈美恵)「チッ!あのくそガキ、余計な事しやがって…!」


桜田)「え…?」


奈美恵)「…OKOK♪会いに生きましょ。あの子に会わせて下さいな」


桜田)「…」


語り:桜田)

この女性がシンジの母親。

その様子から見て、我が子が13人もの小学生を殺害した事への悲哀や罪の意識など、微塵も見られなかった。


ト書き〈接見室で写真を撮り始める奈美恵〉


語り)

こうして取り敢えず母・奈美恵はシンジに接見する事になったのだが…


桜田)「ちょっと、困りますよ!何してるんですか?」


奈美恵)「いーからアンタは黙ってなよ!ほーらシンジくぅん、こっち向いてぇ~♪」


語り)

なんと母・奈美恵は接見室に入りシンジが目の前に来るなり、いきなりバッグの中からカメラを取り出し、シンジの様子を写真に撮り出したのだ。


桜田)「ちょっと奈美恵さん!」


奈美恵)「っるさいわね!こういう写真高額で買ってくれる専門の雑誌社があんのよ!いいじゃない!この子私の息子なんだし!私がどうしようと勝手でしょ!?」


桜田)「えぇ…?」


語り)

私は開いた口が塞がらなかった。

この期に及んでまでこの母親は、自分の息子を金儲けの道具にしか見ていなかった。

そうして何枚か写真を撮り終えると…


奈美恵)「じゃあもう用は済んだからね♪バ~イ」


語り)

そう言って帰って行った。


桜田)「シ…シンジ君…」


シンジ)「ふん、母さんらしいや」


桜田)「ごめんなさいね」


シンジ)「別にアンタが謝る事ないよ。元々ああいう女なんだ俺の母さんてのは」


語り)

奈美恵が帰った後、シンジは表情を1つも変えずまた房へと戻って行った。


ト書き〈事件の詳細〉


語り:ナレーション)

シンジが小学生13人を殺した経緯については以下の通り。

・13人の子供達は皆、シンジを食い物にして来た大人達の息子や娘だった。その中に横島夕夏が混じっていた。この夕夏は、犯人に怒りの声明を記者会見で公表した横島 猛の娘である。

・殺害理由は「自分と同じ小学生でありながら、奴らが自分とはまるで違った幸せそうな生活を送っていたから」という感情と、「自分を食い物にした大人達の子供だから」という憎悪によるもの。

・殺害方法は、13人の小学生に友達の振りをして近付き、皆にジュースを振舞った。そのジュースに睡眠薬を入れて皆を眠らせ、持参したカッターナイフで1人ずつ喉を切り裂いた。


ト書き〈裁判〉


裁判長)「主文、被告人・夢川シンジは小学生でありながら13人もの尊い子供の命を奪った上、自ら反省の弁が1つも無く、今後の更生は難しいと考えられる。しかし被告人は現在12歳の少年であり、極刑の判決には至らない」


裁判長)「よって被告人・夢川シンジを無期懲役に処す」


語り)

精神鑑定の結果は正常。つまり夢川シンジは犯行当時、一般的に「責任能力がある」となる。

しかし完全なる未成年。

未成年である以上、しかも12歳という年齢にある以上極刑を言い渡す事は出来ない。

しかし…


警察)「あいつはきっと又やりますよ!心の中でせせら笑ってるに違いない!」


世間の声)「たとえ小学生であっても13人も殺したのは罪が重過ぎる!しかも何の罪もない子供を殺すなんて!同じ目に遭わせろ!極刑でも生ぬるい!」


猛)「殺せ!殺せぇ!もし法が裁かないんなら私がこの手で八つ裂きにしてやる!」


語り)

夢川シンジの生い立ちを詳細に知る者はほとんどいない。

たとえ弁護側から出た情報が週刊誌等に載ったとしても、「きっとどこかのガセネタ」程度に見、それを本気で信じる者はごく少数に限られた。

その結果、世論は警察を含め、完全に少年・夢川シンジへの非難に傾いていた。


ト書き〈植物人間にされたシンジ〉


執行人)「それでは夢川シンジの刑を執行する」


シンジ)「…俺は終身刑じゃなかったのか?」


執行人)「君の生い立ちを見るとなんとも痛ましいが、それでも君は13人も罪の無い子供の命を奪ってしまった。この事は償わなければならない」


語り)

執行官はそう言って、1本の注射器を取り出した。

シンジは薄暗い個室のような場所に連れて行かれ、手足を縛られ、身動き取れないまま椅子に座らされている。

そしてシンジの左腕に静脈注射が打たれた。

それは「モルグアイ」というこの実刑用に開発された新しい試験薬で、シンジがその被検体に推奨されていた。


執行人)「今度目覚める時は、君の自我は完全に失われているだろう」


語り)

夢川シンジはその後、植物人間になった。

新しく少年法が改正されると同時に、国は医療分野において法廷における国選医師というポストを設け、彼らに新しい実刑の執行人に携わらせていたのだ。

その実刑が「健常人を植物人間に置き換える」という処刑法である。

夢川シンジは無期懲役に表向きは処されていたが、その犯行内容の重さから実質的に終身刑にすり替えられており、裏でその為の処刑が執行された。無論この一連は世間に公表されない。

獄死等が普通に見られる現在である。牢獄の中で囚人がどうなろうと、一般の目には通常の出来事にしか映らない。

又この際には情状酌量の点も当然考慮されたのだが、やはり「13人」という被害者の多さからそれは掻き消された。


ト書き〈弁護士事務所にて〉


上司)「まぁ彼の生い立ちはどうあれ、現状ではどうにもならない案件だったな。今回も弁護士の限界を思い知らされたろ?」


桜田)「でも彼は、噂によると植物人間になったとか…言われています」


上司)「…ふむ。何かそういう処刑法が、この国の編み出した新しい『少年法改正』の為の秘策らしいな。現在、法に携わっている古い友人からの確かな情報だ。そういう実態があるらしいぞ」


桜田)「そうなんですか?…でもそんな事が市民の平等を担う法律において許される事なんでしょうか?」


上司)「そりゃ法律を作ってるヤツラに言ってくれ。それにまだある。あの怒りの声明を公表してた…名前なんつったっけ?」


桜田)「…ああ、横島 猛さんですか?」


上司)「そうそう、そのオヤジな。どうやら彼もその昔、あの夢川シンジ君を1度買った事があったらしい。そういう噂も実しやかに流れてるんだ」


桜田)「え?!そんな…」


上司)「なんとも歯切れが悪いじゃねぇか。なぁ?得意顔して怒りの声明なんてぶちまけてた割りにゃ、ちゃんと裏でヤル事やってたってんだから。やっぱりこういう事件はやり切れんよ。シンジの母親は母親で鬼畜以下のクソだったしな…」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=NI5a4YTtU0U

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少年法を改正し「懲役30日」より怖い終身刑が存在したら…?終身刑に身を隠した裏の真相が明らかになった瞬間(とき) 天川裕司 @tenkawayuji

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