異世界からの来訪者



遺跡の内部へと慎重に進む亮たち。石壁には奇妙な文様が刻まれ、周囲に漂う冷たい空気が三人の緊張感をさらに高めていた。


「ただの遺跡じゃなさそうね…」とリナが小声で呟いた。


そんな中、突然、遺跡の奥から鋭い声が響いた。「立ち止まれ、異世界から来た者たちよ」


亮たちが警戒して振り返ると、そこには異様な雰囲気を纏った男が立っていた。彼は黒いローブに身を包み、目には冷徹な光が宿っている。


「俺たちに何か用か?」亮が毅然とした態度で問いかけると、男は不敵な笑みを浮かべた。「俺はこの遺跡の守護者。そして、異世界の力を持つ者の動向を監視する役目を負っている。お前たちがここに足を踏み入れたことが誤りだと気づかせてやる」


カイが盾を構え、すかさず身構えた。「戦うつもりか?俺たちもただ引き下がるつもりはないぞ」


すると、男は静かに片手をかざし、複雑な印を空中に描いた。「我が力、『時空の影』よ…」その言葉と共に、男の周囲に黒い影が現れ、次々と実体化していった。影たちは異なる形を取り、まるで多次元から出現したように動き始める。


「『時空の影』…?」リナが呟く。彼女の目には、影たちが異なる時空の力を宿しているのが見て取れた。影の動きは速く、不規則で、通常の攻撃では捕えられない。


「これじゃあ、まともに攻撃が当たらないぞ!」カイが焦る中、影の一体が彼に向かって突進してきた。


亮は「パラレルワールド」のスキルを使って瞬時に空間を移動し、カイを庇うように立ちはだかった。「くそっ…ただの影じゃない、時空を自由に行き来できるスキルか」


男は冷笑しながら言った。「さあ、お前たちの力を試してやる。俺の『時空の影』に触れることができれば、褒めてやろう」


亮は鋭い視線を投げ、リナとカイに指示を出した。「リナ、魔法で影の動きを封じることはできるか?」


リナは頷き、手をかざして炎の魔法を発動した。だが、炎の壁が影に届く前に、影はその場から瞬時に消え、別の場所から現れた。


「くっ…こいつら、時間と空間を飛び越えるスキルを持っているなんて!」リナが歯を食いしばる。


亮は深呼吸をし、再び「パラレルワールド」のスキルを使って影たちの動きを追い始めた。「俺のスキルも異世界の力…だからこそ、奴らの動きに追いつけるはずだ」


影が再び彼に襲いかかる瞬間、亮は空間の歪みを利用して、別の時空から影の存在を見破った。時空を行き来する影の一体に、彼はすかさず反撃の拳を叩き込んだ。


影は苦しげに消え去り、男の表情が一瞬驚愕に変わった。「お前、その力…まさか、時空をも超越するとは」


亮は不敵に笑い、「俺も異世界から来た存在だ。この世界を救うため、何としてもお前を超えてみせる!」


亮の言葉に触発されたカイとリナも、それぞれのスキルを最大限に発揮し、影に挑んでいった。亮たちは互いの力を結集しながら、異世界の守護者の強大なスキルに立ち向かっていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る