連携プレー
三人は再び旅路へと足を踏み入れ、森を抜けて次の町へと向かっていた。道中、カイが亮に話しかける。
「亮、お前の『パラレルワールド』はすごいけど、移動が激しい分、体力を消耗しやすいんじゃないか?」
亮は肩をすくめ、苦笑いを浮かべる。「まあ、そうだな。スキルを頻繁に使いすぎると、疲れも溜まる。特に長時間使うと動きが鈍くなるんだ」
リナは亮の言葉を聞いて少し考え込む。「じゃあ、戦闘のときはできるだけ私たちがサポートするわ。亮は相手の不意を突く役割に集中したほうがいいかもしれないわね」
亮はリナの提案に頷く。「それがいいかもな。ありがとう、リナ」
話しながら進むうち、三人は小さな村の入り口に差し掛かった。しかし、村の様子が妙に静かで、普段の活気が感じられない。
「なんだか、不気味だな…」カイが周囲を見渡しながら言った。
リナも警戒を強め、周囲に意識を巡らせる。「もしかして、魔物か何かが出たのかもしれないわね。村人たちが避難しているのかも…」
その時、村の奥から悲鳴が聞こえてきた。三人は一瞬目を合わせると、無言で駆け出した。
村の広場に到着すると、そこには巨大な魔物が村人を襲っている姿が目に入った。魔物は体長数メートルの狼のような姿をしており、鋭い牙と爪を持つ凶暴な様相だ。
「うわっ、デカい狼だな!」亮が少し驚きの声を上げたが、すぐに気を引き締める。「でも、今の俺たちなら…!」
「よし、俺が前衛を引き受ける!」カイが勢いよく前に出ると、竜の力を解放し、魔物に向かって突進した。
リナは亮に向かって指示を出した。「亮、私が後方から援護するから、あなたは魔物の注意を引いて!」
「了解!」亮は「パラレルワールド」を発動し、一瞬で魔物の背後に移動して、その隙をついた攻撃を仕掛ける。
魔物は亮の突然の出現に驚き、方向を変えて亮に襲いかかろうとしたが、その瞬間、リナが火の矢を放ち、魔物の注意を分散させた。炎が魔物の背中に当たり、怯んだ隙にカイが猛然と拳を叩き込む。
「これでも食らえ!」カイの拳が魔物の胴体に直撃し、その衝撃で魔物が大きく後退する。
しかし、魔物は耐久力が高く、まだ立ち上がって三人を睨みつけていた。亮は息を整えながら、もう一度「パラレルワールド」を使って位置を変え、次の一手を考える。
「…カイ、リナ!俺にいい作戦がある!俺が魔物の正面で注意を引くから、二人で左右から挟み撃ちにしてくれ!」
亮の提案に、カイとリナは頷いた。そして、亮が魔物の視線を引きつけている間に、二人はそれぞれの位置に移動し、タイミングを見計らって一斉に攻撃を仕掛けた。
カイの強烈な拳とリナの火の魔法が同時に命中し、魔物はついにその場に倒れ込んだ。静寂が戻り、村の人々が隠れ場所から顔を出してくる。
「ふぅ…何とかやったな」亮が息をつき、額の汗を拭った。
リナも満足そうに笑顔を浮かべる。「亮、いい指示だったわよ。これで村の人たちも安心できるわね」
カイは亮の背中を叩きながら笑った。「お前、意外と戦略的だな!その『パラレルワールド』、戦術に活かせるんじゃないか?」
亮は照れくさそうに笑いながら、「まあ、まだまだ試行錯誤だけどな。でも、こうやってみんなと一緒なら、もっと活かせる気がする」と答えた。
こうして三人は、少しずつ信頼と協力の絆を深めながら、次の冒険へと向かっていくのだった。
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