第6話 俺のタンク役が全く役立たずだった件

 俺たちは、ロリっ子リリサの願いにより【サータシャ浸食洞】の中ボスエリアへやって来た。


 「なんかこれ、キレイだにゃぁ~」


 超長身のうさ耳メスのヒヨの助言も聞かず、リリサは罠を発動してしまった。


 ごごっ、ごごご、ごぉ~~~ぉ!


「うん? おかしいな外れのはずだが、正面の岩戸が動き出す感じの音がするんだが!?」


「春樹! うえうえ!」


 ごぉ~~~~~ん!


「うんぎゃぁ~~~ああぁ!」


 ヒヨの警告も間に合わず、大きなタライが俺の頭に命中した。

 どうやら開いたのは天井の扉のようだ。ドリ○かよ!


「くっくっく―――。春ちゃんやるじゃ~ん! うけるぅ~~っ!」


 俺の悲鳴を聞いたリリサは、振り向きざまにクソ笑いをしている。


「何がうけるぅ~~!だ。いいか赤だ、赤に触れろ」


 そこへ、ロリっ子リリサの魔ペット、ルルが口をはさんで来た。


「せっかくクリエイトしたのに、それじゃあ盛り上がらないです」


「わかったにゃ~、それじゃ桃色のやついくお~!」


 俺はとっさに【ビンビンシブル】を唱えて、罠の発動に備えた。


 ぱっか―――。何かがぱっくり弾ける音がすると、上方から淡いピンク色の光を降りまいて、ミラーボールが現れた。すると、エロティックな香りが漂い、それに合わせたかのように薄着の妖精さんが、超長身うさ耳メスのヒヨの周りを廻りながら、ゆらりゆらりと舞い降りた。


「パンパカパーン! ハズレですわ、また挑戦してね」


 中ボスエリアからのアナウンスである。


「おい! 俺のビンビンシブルはどうしてくれるんだ」


 し~~~ん…… 誰も聞いてない。


「残るは赤ね、おいしょっと」


「僕のクリエイトした最高のギミック(仕掛け)は、すべて発動しました。ルルは満足です」


 ルルが語り終えるのを待たずに、前方の岩戸がさしたる音もなくヌーッと開いた。すると、ダンジョンの行く先は、今までのかなり広いホール状のものとは違い、トンネルになっているのが確認できた。


「おいルル! ここのボスはどうしたんだよ」


「ごめなさい、僕の一存で忘れました」


「一存で忘れるって、日本語になってねえぞ。ただ忘れただけだろ!」


「春樹~! まあいいじゃないの。ささっ、お姉ちゃんが慰めて、あ、げ、る」


 ヒヨの周りには、先ほどのエロティックな香りが、いまだ充満している。俺が全力で断っている間に、ロリっ子リリサは既に突撃を開始していた。


   ◇◇◇


 俺は既に諦めている。

 どうやらルルのクリエイトしたこのダンジョンは、リリサ一人でも無双できる設定のようだ。


「春ちゃんあそこ~! 変なおじちゃんがこっち見てるにゃ」


 【サータシャ浸食洞】のトンネルを向けた先は雪国…… じゃなくて隠し港へ続いているはずだ。やっとの思いで合流するとリリサの指さす方向には、確かに変なおじさんが変な格好をしている。決して志○ではない、だが、俺には立派な海賊のようにも見える。


「ここを通すわけにはいかねえ、ええい、やろうども、やっちまえ!」


 目を凝らすと、どうやら海賊のお頭らしい。間抜けそうな片目眼帯黒ひげのおっさんがそう叫んだのだ。


「おぉ~~~っ!」


 掛け声も勇ましく、両脇に控えていた手下どもがこちらへ向かってくる。


「ぐっはぁ~~つ! いててててっ、なかなかやるな~」


 打ち合わせでもしたかのように、手下どもは足元に転がる小石にけっつまずいて倒れてしまった。本当にやっちまった。


 だが、こちらは何もやってない。というか、リリサご自慢の鉄拳は、彼らの頭上を空しく通過してゆく。


「なんだ、君たちこそ、やるじゃにゃいか」


「ぐぬぬ、ぬぬぅ――― ここは転進だ~!」


 手下どもは、あろうことかお頭を置いてけぼりにして逃げていった。


「おい、逃げるな、戻れ戻れ~!」


 お頭の怒声はダンジョン内をこだまするが、全く効果はなかった。


「お頭強い、お頭カッコいい、お頭ヒーロ~~~!」


 もう一人、いやもう一匹手下がいるようだ。

 この手下は、背中にトンボのように4枚の羽根をばたつかせて浮遊している。体色は薄いピンクで、両翼を広げてもその幅は二メートルに満たない鳥型モンスターだ。いやらしいっ!


 変な格好をした海賊のお頭は、いやらしい相棒の声援に答えた。


「おっ、おh! いいかお前ら、今日はこの辺にしといてやる。次はねえぜ!」


 言っとくが、お頭はまだ何もしていないし、俺たちもされた記憶はない。


「お頭強い、お頭カッコいい、お頭まって~~~っ!」


 ピンク色のモンスターは、無駄な声援を送りながら、お頭の後を追っていった。

 

「ヒヨ、なんかもうコリゴリって感じで逃げていったが、どっかで見た気がしないか?」


「ああそうだな、春樹、あれは確かアルトガン大陸だったかな」


「懐かしいなヒヨ、そう言えば『我々はコリゴリ』とかいって遊んでたっけ」


「よく覚えているな、そうそう、あいつはコリゴリだ」


 俺とヒヨが懐かしがっている間に、ロリっ子リリサたちは既に姿を消していた。


   ◇◇◇


「しまった、見失ったか。おいアナキン、超速ダッシュ頼むわ」


「りょうかいです~!」


 準主人公のくせに出番の少ない、AI魔ペットのアナちゃんが、ここぞとばかりに呪文を唱えると、俺たちはダンジョン内を怒涛の如く駆け抜けた。俺たちの通過した後には、もうもうと粉塵があがっている。


「おい! お前たち、もう逃げられにゃいぞ!」


 俺たちがリリサに追いつくと、目の前に波止場が開けていた。みると、埠頭の手前で、海賊のお頭が両手の拳に力を入れてぶら下げ、リリサをにらんでいる。


「ふふふっ、かかったな!」


「かかりやがったな!」


 お頭に続けて、懲りずにコリゴリも叫んでいる。


「にゃんだって~! 大きな魚でも釣れたんか?」


 それを聞いたリリサは、右手の拳を口元まで上げて嬉々としている。腹がへっては戦も出来ぬ、といったところだろうか、よだれを垂らすその様は、全く呑気なものである。


「違うわい、お前らだよ、お前ら~~~っ! 船長あとはお願いします」


 すると、海中から水柱を上げて颯爽と飛び上がり着地すると、右手の人差し指をこちらへ向けてクイクイしてくる、かなりの大きさの半魚人の登場!


「いつでもいいぞ。―――だがちょいと待て!」


 こいつも日本語が変だ。そう言うとお頭をつまみ上げ、口元へ運ぶなりぱくんちょした。


「お頭~ トランスフォーメーションですね~! カッケ~~~!」


 コリゴリの認識も間違っているようだ、どう見たってクイクイしてきた半魚人に食われている。ごくりと船長を飲み込むとこのラスボスらしいモンスターが雄たけびをあげる。


「みなぎ~~~って、きたぜぇ~~~!」


 そう叫ぶと、放射状のエフェクトと派手な効果音が鳴り響き、場が盛り上がった。


「船長、俺たちの力を見せつけてやりましょう!」


 どうやらぱくんちょしたのは、お頭が船長に乗り込んだというか、合体変身シーンらしい。海賊たちの掛け声とともに、このフージョンともいえる合体を果たすと、みるみる筋肉は盛り上がり尾びれや背びれは鋭く突き出してきた。それに続いて、ぬるっとした体もさらに大きく変形していった。お頭はさも弱げだったが、合体なんかして効果があるんだろうか!?


「ここからが本番ですよ~。僕の作った最高傑作です!」


 ルルの解説が終わると、波止場は異様な空気に包まれ辺りが薄暗くなる。終いには「カシャ~ん」とエコーがかかった効果音と共にトバリが下りてきた。ボスエリアの封鎖である。


「おい! あいつ、どんどんデカくなっていくぞ!」


「落ち着け春樹、まずは様子を見ようぜ!」


「ぎぃ~~~、にゃぁ~~~ああ~~~!」


 お気づきでしょう、ロリっ子リリサの辞書には作戦という文字はない。

 つうか、辞書すら持っていないようだ。

 ただ突撃するのみである!


  つづく


 ◇◇◇


 次回でダンジョンはクリアするのかな? となるとその後の展開はどうしよう。元ゲームのシナリオに沿って行きたいところだが、どうなんだろう!?


 何かコメントいただけたら、次の展開のヒントになるかもしれないのだが……

星が欲っしい、コメント・ハートも欲しいのです。よろしかったら戴けると幸いです。

  10万文字目指して頑張りたい!

                            夏目吉春

 

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