第5話 一回なら付き合てやっても……ってのが間違いだった

 【AIコンテンツクリエーター】のルルによって、リ・クリエイト(再作成)された【サータシャ浸食洞】へ俺たちは突入した。


 「突撃だにゃぁ~~~!」


 奇声を発して猛然と走りだそうとするロリっ子リリサを、おれは必至の思いで止めにかかった。この光景にはデジャブウ感がある。そう、あのテストゲーム内での出来事だが、その話はひとまず置いておこう。


 ちなみに「にゃぁ」の語尾を付けてしゃべるロリっ子リリサには、ケモ耳は乗っかっていない、まだな……


「止めるにゃ、止めてくれるにゃぁ~」


「どんなドラマのサビよ、RPGのゲームにはルールがある、いいか、タンクが先導してダンジョンを進んでいくんだ、この世界でもそれがまかり通っている」


「それわぁ~、なんとなく知ってるけどぉ~、それじゃあアタイたちの冒険には、にゃんちゅうか盛り上がりが足らにゃいと思うにゃ」


「にゃあにゃあ、うるさいぞリリ子。にゃあは一文で一回だけが限度、それと耳が生えるまで禁止って言わなかったっけ?」


 それを聞きつけたリリサの魔ペット・ルルが提案してきた。


「リリたん、ご希望でしたら耳をクリエイトできますが、いかがいたしましょう?」


「そうかそうか、気が利くにゃルルたん。おねがい!」


「むっしむしむし、ぴょこんのぴょ~ん」


 やっぱルルが適当にやってるのは明らかだ、そんな魔法聞いたことねえ。


「リリサさん、なんかお似合いですね。それなら、ケモ耳メイド喫茶でも人気者になれるでしょう」


 超長身うさ耳メスのヒヨの言葉とは裏腹に、ロリっ子リリサは頭に何か生えてきたのを感じたのか両手で頭をわさわさしている。すると、リリサは不満そうに口を開けた。


「ルルたん鏡、鏡出して」


「おk了解丸~!」


 ルルが右手の拳を左の手のひらに打ち付けたと思うと、今回は無詠唱でポンとリリサの右手に鏡が出現した。すると、顔を左右に傾けて両耳をチェックする。


「だめだめ、これじゃあない感、ぱないにゃ! もっとピーンとした奴がいいにゃ」


「わかりました、それじゃあ、こんこんぴんころのぴ~ん」


 今度こそはと期待を込めて鏡をのぞき込むと、ロリっ子リリサは満面の笑みを浮かべ始めた。どうやら気に入ったようだ。


「これよこれ~! やっぱ耳はシャキーンとしてなきゃね」


「なんでぇ~! それって猫ちがくね? タマオカチューシャじゃん」


 そう、それは妖狐タマオ御前様を倒すとまれにドロップする代物、つまり狐の耳だった。


「春樹いいじゃねーかよ、東北ルン子の姉役のイタ○姉だって狐憑きなのに、にゃあにゃあ言ってるから、別にいいと思うぞ」


「なんかケモ耳で盛り上がってますね、では春ちゃんにも耳を生やしましょう。アナにお任せください」


 春樹の魔ペットアナちゃんは、大きく息を吸い込んだ。そして……


「おんうぉーうぉん、うぉ~お~~~~~~~っ!」


 アナちゃんはロリっ子リリサの魔ペットのルルに負けじと、これまたおかしな呪文の雄たけびをあげたのであった。


「おいおい、なんか生えてきたぞ!」


「春ちゃんどお?」


 そう言うと魔ペットのアナちゃんが、鏡を俺に向けてきた。もう呪文からどんなだか想像できていた、ウォーウルフの耳だ。そのモフモフ度では、ケモ耳系のアクセの中では抜群の人気を誇っている。


「いてて、これ取れねえけど、どうすんだよ、アナ」


「ダイジョブですよ、このダンジョン内だけのスペシャル・アクセですから」


「そうか…… なら仕方ねえ、我慢すっか」


「春樹よ、今日は俺たちケモ耳姉弟きょうだいだな。なんかうれしいぜ」


 超長身うさ耳メスのヒヨは、場を和ませようと気を配ってくれるところは流石だ。これだから俺たちは、これまで仲良くやって来たと言える。ありがとなヒヨ!


   ◇◇◇


 スタートは長話で遅れたが、タンクの俺を先頭にPTはダンジョンを進み始める。


「おいリリ子、お前なんで猫足忍び足してんだよ! お、あっ、こらぁ~」


 進み始めるはずだった……


「リリサさん気を付けてくださいね~、落ちると大変ですよ~!」


 超長身うさ耳メスのヒヨの言うとおりだ。ここ【サータシャ浸食洞】のスタート地点の洞窟内は、切り立った崖の上に伸びる十数メートル幅のテーブル状通路から始まっている。


 魔ペットのルルによってリ・クリエイト(再作成)されたとはいえ、どうやら基本構造は変わっていない。今のところは、なんだが……


「お~らおらおら、おら~!」


 どうなってんだ、魔法詠唱って立ち止まっていないと唱えられないはず。場合によっては、一定の確率で無詠唱で発動できるポイントが貯まるが、その回数には流石に制限がかかっている、はずだ。


「春樹よ、俺見て来るな!」


「例のヒントだな、ヒヨまかせたぜ」


 俺は一定期間超速となるアクション・ダッシュを使い、ロリっ子リリサを追いかけた。そして、敵モブの敵対心を必死にタンクである俺に向けようと試みた。だが、確かにそれは成功するのだが、リリサのオラオラで速攻モブが溶けてたおされてゆくのであまり意味をなさなかった。


「おい、ルル。お前、魔法の調整間違ってねえか? これじゃタンクの意味ねえじゃん」


「えぇ~~、そうですかぁ~? もう少し様子見てくださいよ」


「そか、そうすっか。見方によっちゃあ楽なもんだしな」


「はい~!」


 笑顔のルル、か、可愛い。俺はニヤ付きながら駆けっていると、なにやら呪文を唱える声が聞こえる。


「むんにゃ、むにゃむにゃ、ふふんのふぅ~~ん」


 カッ、パリパリパリ~、チュド~ン!


「うんぎゃぁ~~!」


 俺の魔ペットアナの放った魔法が、何故か頭の上に命中した。耳が避雷針の役目を果たしたのかもしれん、悟空の頭に付けられたあれかよ!


「あ~ら誤爆しちゃったようね、ごめんね春ちゃん、よそ見してはいけなくてよ、うふ!」


 ばれてる、俺は見たんだ。リリサの補助で、アナがひそかに魔法を打っていたのは知っていた。その最中アナは、さきほどのルルとの会話で、俺を見下ろすくらいの高さから、ちらりこちらを見てきた。そして可愛らしい唇をきっとゆがめた瞬間、それに気づいた時俺は、嫌な予感がしていたんだ。


「おい、アナ、この耳本当にダンジョンクリアしたら取れるんだろうな?」


「どしよっかな~!? 春ちゃん次第かも、うふっ」


「夫婦喧嘩ですか、ダンジョン攻略中ですよ! まじめにやって下さい」


 ロリっ子リリサの魔ペットルルが、眉をひそめて身をかがめ、上目づかいに牽制してきた。これもかわ―――、やめておこう。これは無理もない、確かにルルの言うとおりだからな。


「お~らおらおら、おらぁ~~~! あれ、もう敵がいなくなっちゃったねえ」


 スタート地点から続いて来た通路は、分かれ道は存在するが迷路とは言えない状態なため、すんなり一回目の、いわゆる中ボスエリアまでたどり着いていた。


「リリサさん、それ赤い奴でお願いね!」


「なんかこれ、キレイだにゃぁ~」


 ヒヨの助言、聞いてない、全く聞いてない。ロリっ子リリサは透き通って水色の、淡く優しい光を放つ、水晶のような珊瑚の柱に触れた。次の瞬間……


 ごごっ、ごごご、ごぉ~~~ぉ!


 こっ、これは。やってしまったな……


つづく


   ◇◇◇


 FF14をプレイした経験がある方ならすでにお気づきの事と思います。ジャンルの二次創作のところにFF14がなかったので、VRMMOタグが付いた作品の並ぶ【SF】を選びました。FF11からはや〇〇年、僕のゲームライフはこれ系ばっかりと言っていいかな。現行14へ課金だけは続けているので、執筆のため潜ってみたけど懐かしいですね。

 よろしかったら、ハート・コメント、出来たらお星様を戴けると嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

                           夏目吉春




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