第4話 この興奮はこのゲームのローンチ以来だ! あ! ガクブルかも

 俺たち一行は、ロリっ子リリサのお願いを聞き入れて、小舟に揺られアールポートへとやって来た。この港町の門を真っ先に飛び出したリリサは、正面に見えてくる建物を指さしながら振り向いた。


 「春ちゃーん! これ、前はなかったよね? あれ、何かにゃ?」


「なんだよリリ子、お前ルルに頼んで異世界リプレイ物でもしてるんか?」


「リプレイとか何のことか分かんないけど―――。なんかさ、そばで見てたんだよね、そん時は無かったにゃ」


「見てたって、だれのプレイを?」


「…‥‥」


「あ! ゴメン、そういう設定ね。ロールプレイは大事だ、このゲームはそのためにあるともいってよい」


「ここは私の出番ね、このアナ様が解説するわ―――」


 アナの解説によると、ロリっ子リリサが指さした建物は、10年にも及ぶこのゲームの運営中期に拡張されたもので、初心者の訓練やゲームを離れて久しい人たちへの、リハビリをするために用意されているという。


「PT(パーティー)には役目があるの、敵を引き付けるタンク、攻撃で受けたメンバーの傷をいやすヒーラー、そして、タンクの脇から敵を攻撃する役目を担う者をひっくるめてDPSと呼ぶが、これらの人たちでPTを組んでダンジョンへ出かけてゆくの―――」


 ※DPS:Damage Per Second(1秒あたりの与ダメージ)


 続けて解説するアナちゃんのいう通り、そのPT内での立ち回りをレクチャーしてくれるのがこの施設の役目というわけだ。


「そうなんだぁ~、中々進歩してるんだにゃぁ~!」


 感心しているロリっ子リリサのあとに、魔ペットのルルが割り込んで来た。


「アナ様、解説有難うございます。ですがルルが思うにご主人様のリリたんには、必要のない設備と思われます。これが僕の見解です」


「ルルたんありがとにゃ~! うんうん、アタイには必要なさそうだにゃ~、次行くにゃあ~!」


 ロリっ子リリサは傍で誰かのプレイを見ていたかの言い方だったが、ルルの見解からするとロリっ子リリサとは別キャラでもってプレイした経験があるともとれる。つまり、リリサとは新たに作ったキャラという説が浮かび上がってきた。これ、俺の見解―――


   ◇◇◇


「係員さん、ここはどこですか?」


 ダンジョンの入り口では、ロリっ子リリサの天然系の問いかけに、ルミンサの兵隊さんが謎めいた格言を放ってきた。


「サータシャ浸食洞へいくなら覚えとけ『死して屍拾う者なし』と言うのをな……」


 屍拾しかばねひろってどうすんねん、そんな奴おらんやろJK。


「そうか、ここが冒険者ギルドで言ってた【サータシャ浸食洞】か、では突撃だにゃあ~」


 俺は勢いをつけて飛び込もうとする彼女を慌てて引き留めた。


「まてまてリリ子、お前ジョブは何をやるんだ。まずはそこからだ」


 俺がそう尋ねるとロリっ子リリサは、右手の親指で胸をつつく素振りでかつ、目をつぶり見上げながら言う。


「なにって―――、見たまえ、廃魔導士だにゃ!?」


 いわゆる自慢する時のステレオタイプだった。


「見えね~し、そんなジョブね~よ!」


 すると、すかさずロリっ子リリサの魔ペットが解説を始めた。


「リリたんは始め赤魔導士を希望されたのですが、スキル回しとかめんどくさいから何とかならないかと希望されました」


「ほほう、それで?」


「そこで赤魔導士は黒魔法と白魔法を使いますが、【コテンパンチ】を攻撃、【なめときゃなオール】を回復魔法としてこの二つで何とかなるよう調整させていただきました」


「【コテンパンチ】とかよく分かんね~な、なんだそれ?」


 これを聞いたロリっ子リリサは、突然詠唱を始めた。


「お~ら、おらおらおらぁ~!」


 詠唱と同時に複数の拳が幻影となって浮かび上がり、彼女の周りを回転し始めた。かと思いきや次の瞬間、近くにのんびりと歩いていたモブのドーモ君めがけて発射された。無論ドーモ君はコテンパンにされたのである。


「春ちゃんどうかにゃ? なかなかっしょ!」


 じょじ○立をして、ウィンクを投げかけてくるロリっ子リリサ。


「あっ、ああ! それな、わかったわかった……」


「春ちゃん、次の【なめときゃなオール】もみせよっか?」


 うわぁ~っ!想像したくねえ。


「いや、それ、あんま使わんほうが良いと思うよ」


 そこへロリっ子リリサの魔ペットルルたんが補足してきた。


「【なめときゃなオール】は僕がクリエイトした魔法の中では絶品です。その仕組みは術者の愛がその効果に反映されます。もちろん効果は術者のレベルを超えないよう制限されていますが、時に想いがバーストして絶大な威力を発揮する…‥はずです」


 それを聞いた超長身うさ耳メスのヒヨは、俺にニヤ付いた眼を向けたかと思うと、右腕を俺の肩に載せてぐいぐい引き寄せてきた。


「なあ春樹、なかなか良さそうな魔法じゃないか、タンクとしてはそそるよな!? ぺろっ」


「や、やめろお~~~!」


「じゃあ、リリサさんがヒーラー、俺がDPSで春樹がタンクで決まりだな!」


「まってまって、私アナもお手伝いできますわ」


「いうまでもないが、この僕ルルも参戦です。きりっ!」


 やべ~っ! これ絶対フラグが立った奴だ―――。


「まあまあ、魔ペットのお二人さんはあまり本気を出さないでくださいね。ヒヨからのお願いぃ~」


 廃魔導士の解説はどっかへ行ってしまったが、まあいいか。だが助かる、持つべきは友だ。ヒヨがくぎを刺してくれたのでとりあえず安心!? だろう、たぶん……


   ◇◇◇


 こうして俺たち3人+2体のパーティーは、【サータシャ浸食洞】へ改めて突入することになるのだが……。


「春樹殿の魔ペット・アナ様、ここは僕のご主人リリたんのために、ルルがダンジョンをリ・クリエイト(再作成)させていただくっつうことでよろしいですね?」


「ああ、やっちまってくれにゃあ!」


 流石というべきか、地雷系風味のロリっ子リリサの片鱗が噴出している。


「リリ子、そこはお前が返事するとこじゃねえだろ」


「そうですわ、春ちゃんの言うとおり、このアナちゃんにも権限があるんですからねっ、ぷいっ」


 そこへ頼りになる超長身うさ耳メスキャラの友、ヒヨが仲裁に出てきた。


「まあまあ、いいじゃないですか。もともとリリサさんのお手伝いなんですから、ルルさんにお任せするのが筋じゃあないですかねえ?」


 なんとまともなことを言う友か、俺は納得せざるを得ない。


「ヒヨの言うとおりかもな、じゃあルル頼んだわ、お手柔らかにな!」


「かしこまってかしこ~! ぐーりぐりぐりぐり~っ、ぽぉ~~~ん!」


 多分この魔法詠唱みたいでひょうきんな掛け声は、ルルのアドリブなんだろうな、アナも良くやってたから間違いなかろう。


 次の瞬間、掛け声の通り俺たちの周りの空間がぐりぐり回転し始めると、体がふわっと浮いた感じを伴って画面が暗転した。そして、地面に着地した感じが伴うと辺りが開けてきた。


 ここは【サータシャ浸食洞】、もう十年も前から知っていて、何度か運営により改装されてきたが、今回はそれとは根本的にわけが違う。興奮とともに全身から汗が噴き出してくるようなこの感覚は、初めてこの世界に降り立った時のものよりはるかに強い。


「突撃だにゃぁ~~~!」


 はたして、俺たちの前に、どのような展開が待ち受けているのだろう……


つづく


◇◇◇


 初めて投稿した【この戦国ゲーム最高かよ! と思ったのは勘違いだった件】はノリと勢いで、毎話リアルタイムに書いていたがしんどかった。そこで次作はプロットなど作ってから執筆しようと企んだが上手くいかなかった。つうことで今回もノリと勢いで物語を進めております。そういう人も多いよね?

 執筆のエネルギーはハートとコメント、出来ればの星で物語は加速する、多分。なにとぞよろしゅうお願いいたします。

                              夏目吉春




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