第3話 恐るべし【AIコンテンツクリエーター】ルルたん

 ルミンサの波止場でPTを組んで会話する俺たち3人組であった。しかし、なんだか様子がおかしい、ヒヨのやつがロリっ子リリサと俺が呼び出した魔ペットを見て「俺、帰っていいか?」とか言い出して動揺しているのだ。


「もう帰っちゃうの~? ルル悲しいな~!」


 なんだこいつ、俺のアナちゃんよりAI学習が進んでいる。ところで、ルルはロリっ子リリサの魔ペットで、ラウンドエックスの運営するMMORPG【FirstFantasy14】で通常実装されているものとは違い、より高度なAIが組み込まれている。


 また、バディ(相棒)としての会話は勿論のこと、プレイ中のゲームマスター的な機能も備わっているのだ。


 その機能は【AIコンテンツクリエーター】としてラウンドエックスが極秘に開発中で、同社のゲームならどのゲームでも柔軟に機能するようプロジェクトが組まれている。場合によっては、プレイ中のゲーム内で別のゲームをインスタンスとしてリアルタイムで生成し、更にプレイすることも可能な仕様となっている優れものだ。まともに動けば…‥


「ねえねえ、ルルお願いがあるの、ヒヨ姉って呼んでもいい?」


「ヒ、ヒヨ姉って誰がだよ……」


 両指を絡ませて祈る状態にした手を右ほおに当てて、こ首をかしげてヒヨを上目遣いにしてくる仕草は、ロリっ子リリサの模倣と言ってもいいだろう。


「ルル、ヒヨ姉をからかっちゃダメだにゃ、困ってるじゃにゃいか」


「ヒヨ、どうしたんだ、こないだから俺のアナちゃんを見てるだろう。別にそんなにキョドる要素ねえはずだ」


「春樹、お前はそういうけどな、今の聞いたろ、どうみたってルルさんは中身入ってるだろ」


 超長身でうさ耳メスキャラのヒヨのほおが、いくらか色味がさしているのを俺は見逃さなかった。


「は、はあ? お前も、ヒヨ姉とか呼ばれて悪い気はしないってことでおk。かなぁ~?」


「バカゆうな春樹、そんなんじゃねえよ、ちょっと技術の進歩つうのを感じただけで……」


「だけで~? なにかなぁ~……」


 俺たちの会話を見上げているロリっ子リリサは、なんかじれている様子で俺の脇腹の装甲の隙間を狙ってつんつんしてきた。


「あのさ、さっきから色々だべってるけど、アタイのお願いの事を忘れてないかにゃ?」


「あっそうか、【サータシャ浸食洞】の件だったな、悪りい悪りい」


 俺は成り行きに任せ、今だキョドっているヒヨを半ば引きずるような恰好で、波止場に常駐する係員にお願いして、現地へ漕ぎ出す船に揺られながら出発したのであった。


   ◇◇◇


 めんどくせえ事になっちまった……


 もうね 「アタイ、おタマちゃんでプレイしたんだもん」とか言うセリフに動揺した俺は、船に揺られながらキャッキャしているロリっ子リリサを見つめていた。


「おいリリサ、お前始めは『お話聞かせて』とか言ってたのに、いつの間にか私の『お願い聞いて』になってるじゃねえか、いったいどうなってんだ?」


 ―――返事がない。まるで聞いてねえ……


「ご主人様に変わって、ルルがお答えいたします。リリたんは思い立ったら即実行に移す行動力の塊なんですよ」


 ロリっ子リリサに負けず劣らずのいで立ちをしたルルは、はしゃぎまわる主を代弁して答えてくれた。ルルの背中のトンボのような、透明でかつ玉虫色に輝く翅は勢いをなくしていた。そのうなだれた様子は身体を支えるのがやっとのようで、時折失速しては元の高さに戻るを繰り返していた。


「そういえば、なんかリリサって、おタマに性格が似てるな」


「それはルルが頼まれたから当然なんです」


「頼まれたからって何をだ?」


「春ちゃんはエックスのテストセンターで、Gコースの初期同期テストを受けていたんですよね?」


「そうだけど、ルルは何でそんなこと知ってるんだ?」


「分かるでしょ、アナちゃんと同じく、僕も【AIコンテンツクリエーター】なんですから……」


 俺はハッとした。確かにそうだな、ラウンドエックスのユーザーデータは無論のこと、世界中に蓄積されているビッグデータから、必要なデータを抜き出してアナライズする。そしてそれを基に、ご主人様の役に立つクリエイトが出来るように設計されているのだから。


「なんか想像するとやばいな、ルル、プライバシーはどうなるんだよ!」


「ご安心ください、それに関しては例えご主人様の要望であっても、リアル個人データにはセキュリティーがかかっていますので漏れる心配はありませんよ」


「リアルってことは、ゲーム内のものはある程度分かるってことか?」


「そうですね、実際Gコーステスターの中で春ちゃんを探してワールドを共有したいと希望されたので実行しました」


「まじかよ、確かに俺はネットプレイ許可したけど、共有プレイなのに何かしらのアナウンスもなかったから、ボッチプレイと信じて疑わなかったのに……」


「春ちゃんごめんよ、アタイが無理言ってルルにお願いしたんだにゃ」


 はしゃぎ回っていたロリっ子リリサが、いつの間にか隣に正座していた。


「何でだよ、分けわからねえ~……」


「うぃっく、いっく…… ご、ごめんなたい、ぎょめんな…… あい……」


 俺はロリっ子リリサが流す、大粒の涙には逆らえなかった。


「そうか…‥ まあ、理由なんかいいや。俺カッコいいからな、それだけでいいや」


「ねえねえ~ご主人さま~、アナちゃんはお呼びじゃないんですか?」


 今まで影の薄かった春樹の魔ペットアナちゃんが突然割り込んで来た。


「そのうちな」


「いやぁああ~! ルルたんたちとばっかりお喋りして、ず~る~いぃ~!」


「おい春樹、俺の事も忘れてないか?」


 超長身のくせに、影の薄いうさ耳メスキャラのヒヨがここにもいた。


   ◇◇◇


 アールポート、ここはルミンサの西方の数カイリほど離れた所にある港町だ。

 接岸されると俺たちは、さっそく町の中心ある、とある設備へと足を運んだ。


 その設備は、水色に透きとおった水晶体の柱で日の光を受けて輝きながらゆるりと回転し、その周囲を柱の回転軸とは角度の違った軸を持つ、土星の輪のような帯が逆方向に回転している。


「おい、リリ子。お前まだここは登録してねえよな」


「うん、アタイはしてないにゃ」


「アタイはって、どういう意味じゃい」


「内緒だにゃ~! それとぉ、できたらおタマって呼んで欲しいにゃ」


「ああいいぜ、猫耳が生えたらな」


「ぎんにゃあ~、いつか生やしてやるぅ~」


 なんかフラグが立ったようだ。

 ロリっ子リリサが登録するこの設備は、一度触れると転送魔法のメニューに登録される。そして魔法詠唱するたびにギラ(ゲーム内通過)が徴収されるが、その額は転送距離により自動計算される仕組みになっている。そしてそのギラは、この世界でこの設備をメンテする人たちへの報酬になるらしい。


 用を足した一行は、この小さな港町の出口にあたる門をくぐり抜けぬけて……


「ごおごお、ごぉ~! ―――― だ、にゃあ~!」


 真っ先に飛び出して行ったのは、ロリっ子リリサちゃんであった。


 いったい、どうなることやら……


つづく


◇◇◇


 ABEMAで【レンタル彼女】一気見したんだけど、うらやましいお話ですね。

 しかし残された虚無、これを埋めるのは、皆様からのコメントやハートなどに違いない。星ならなおさらだ! そして、それを胸に抱いて寝たならば、きっと良い夢が見られましょう。

あ! なんか臭いセリフだけど、小説書く練習なんだからね、そこんとこ……以下略

                              夏目吉春















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