第13話



 GW(ゴールデンウィーク)5日目の今日、俺たちは家から少し離れたところにある公園に来ていた。



「「ついたー!」」



 先に広場についた真依と瑠輝が思いっきり叫ぶと、その声は遠くまで響き渡り、広場に来ていた人たちを振り向かせた。


 そのまま走りまわる二人に俺は大声で注意する。



「周りに迷惑かけるなよー!」



 そんな声が届いたのか分からないが、真依と瑠輝はそこまで遠くには行かずに駆け回っていた。


 GWでたくさん人がいるかと思っていたが、連休にしては全くと言って良いほど遊びに来ている人が少なかった。


 いるのはカップルと家族くらいが数組くらいで。これなら周りを気にせず伸び伸び遊べだろう。



 広場を囲む並木の一本の下で、木陰を見つけて荷物を置くと、遅れてやって来た春良も隣りに荷物を下ろした。



「兄さん、自分たちのことはいいの?」


「は?」



 質問の意図が分からず振り向くと、春良はレジャーシートを取り出して側に広げている。



「周りに迷惑かけるなよって」


「俺らはかけてねぇ。毎日喧嘩してるわけでもねぇし」


「へぇー。このあいだのバイク走行は良いんだ?」


「…………」



 苦虫を噛み潰したような何とも言えない表情で(実際に何も言えないのだが……)俺が黙っていると、春良はクスクスと笑いながら「冗談だよ」と靴を脱いでシートの上に座った。



「別に棚に上げて注意しても良いと思うけどね。あの時は真依と瑠輝も楽しそうだったし」


「そりゃぁ二人に見せるためだけの暴走だからな。一応、警察に見つかる前の20分間の距離で終わられるようにもしたし」



 俺らみたいなのは本来、幼い子の教育上良くないだろう。


 だから大きくなっても暴走族なんてものに入らず、真面目に学校生活を送って欲しいと思っているし。


 大怪我をするようなことは絶対にして欲しくない。


 まぁこの間は、カッコイイ姿を見せたくてやったけど……。



「おにぃちゃーん!」


「にぃーちゃん!」



 お、戻ってきたか。



 息を切らしながら俺と春良のもとに来ると、真依と瑠輝も楽しそうに顔を綻ばせた。



「ふりすびーしよ!」


「ふりすびー!」



 さっそくフリスビーか。倉庫で下の奴らが遊んでたのが、だいぶ羨ましかったんだな。



 二人の言葉に春良はおもちゃが詰まった鞄から黄色いフリスビーを取り出すと真依に渡した。


 瑠輝は俺の服をぐいっぐいーと引っ張ってくる。



「ふりすびーするー!」


「分かった分かった。春良もするか?」


「俺は荷物番してるよ。瑠輝も真依も秋兄と遊んできな」


「「はぁーい!」」



 立ち上がると広場の中央まで歩きだす。


 途中で真依と瑠輝に待機するように言い、数十メートル離れた所で振り返った。


 真依と瑠輝の立つ方向の遠くの後ろでは、早速、春良は携帯を弄りながら寛いでいた。


 春良は最近高校生になったばかりだ。


 無事に第一志望の高校受験に合格して、入学して。やっと授業やクラスメイトに慣れた頃だろう。


 今まで気を張ってただろうし、ゆっくりさせておこうかと思って、俺は真依と瑠輝を見て手を上げた。



「いいぞー!」



 声を上げると、楽しそうに話しをしていた真依と瑠輝が反応する。



「いくよー!」



 真依が器用にフリスビーを投げると、弧を描きながら中間の芝生にパサッと落ちた。


 まだ幼い真依の力では投げられる距離はこんなもんだろう。駆け寄って拾い上げると、ちゃんと飛ばせた真依を褒める。



「真依、上手だなー!」


「いぇーい!」



 得意そうにピースする真依の隣りで瑠輝はパチパチと手を叩く。すると見ていた瑠輝もやりたくなったのか、手を上げてアピールをしだした。



「にぃちゃー!」



 ぴょんぴょんとジャンプして身体全体で意思表示する瑠輝はやる気満々だ。



「いくぞー!」


「「いいよぉ!!」」



 足を広げて構える二人。その真剣さに俺は吹き出して笑ってしまう。



 にしても、フリスビーなんて久しぶりにするな。小学校の頃の昼休み以来か?


 あまり力を入れずにやらねぇと……。



 そう思いながら小さく腕を振って投げたつもりだったが、フリスビーは真依と瑠輝の頭上を通り過ぎ、二人は叫びながら追いかけていた。



 力加減、普通にミスったわ!



 走って追いかけていた真依が後ろの方で落ちたのを拾うと瑠輝に渡していた。



「はい、るき!」


「ありがとっ!」



 旗から見てると微笑ましい様子に思わず頬が緩む。


 真依も瑠輝も家じゃずっと側にいるから仲が良いし、頼りになる真依とそれを見て真似をする瑠輝は確実に色々と出来るようになっていた。



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