第11話


 

 写っている写真の中から手掛かりを見つけて芋蔓式に出てくる当時の話しは、どれも聞いていて面白かった。


 そうして、やっと修学旅行のページに来ると、かっこいい姿とやらの件に話題が変わった。



「修学旅行はどこにいるの?」


「どっかにいるはずだ。寝る前にクラスの奴らと一緒に組み立てやっててな、その写真がどっかに乗ってたはずだぜ?」


「へぇ。──この辺かな。あ、もしかしてコレ!?」



 指差したのは道弘が喋っていた通り、六人が二人一組の組み立て体操の技を披露している写真だった。


 その中の真ん中の土台役を道弘がやっていて、汗を流して笑っている姿は確かにキマっていて何処か男らしさがあった。



「結構、楽しそうだな」



 俺がボソリと呟くと、当時のことを思い出していたのか、道弘は満足げに笑っていた。



「楽しかったぜ。こん時、最後にタワーやろうとしたけど、先生に止められたんだよなぁ」


「いや。それ以前に良く部屋で組み立てしてたのを先生が許したね?」


「そりゃ、写真撮ってんのが保険の先生だったからじゃね? あと、途中で体育の先生も指導してくれたし」


「そんな先生で良かったの!?」


「そんなの知らねぇよ。指導するくらいだし、良かったんじゃね? そこまで大技ってわけじゃねぇし。……しっかし、楽しかったなぁ」


「学校の先生、自由過ぎでしょ……」



 しみじみする道弘とは真逆に、凜人は笑みを浮かべながらも呆れていた。


 同じ学校だから分かるが、多分、凜人は羨ましいのだろう。話しを聞いていて思い出したが、俺たちの先生は厳格だったと思う。



「こっちは体育の先生が厳しかったからなぁ」


「組み立ての練習なんてみっちりやらされたよな……」



 おかげで他の学年の先生たちからは、どの年よりも凄く綺麗に決まっていたと褒めていたらしいが、余り思い出したくない記憶だ。



「ねぇねぇ、なんでお兄ちゃんとリンちゃんはいないの?」


「にぃちゃ、りっちゃ、ないない?」


「俺と秋良はここにいないよ。こっちにいるからね」



 凜人が傍にあったカメラを手に取る。



「んじゃ、今度は秋良と凜人だな!」


「そろそろ見るか」


「はい、秋良。ブレてないといいねー」


「俺がやんのな……。いや、ブレてるだろ」



 ガキが撮ったやつが綺麗に取れる訳がない。


 凜人に対してツッコミを入れながら差し出されたカメラのボタンを適当に押して行く。



 アルバムのページはこのボタンを押せばいいのか?



「……あ」


「なに?」



 凜人の返しに何も答えず、俺はピッピッと鳴せながらカメラを操作していく。



 思わず声を出したのは、ファイリングされていた写真がズラリと出て来て、その中に中学校の卒業式があったからだ。


 けれど不思議に思うのは……、俺って撮ってたっけ?──と云う一点だ。



「なぁ、凜人。俺って中学校の卒業式に写真なんか撮ってたか?」


「えぇ? そんなん知らないよ。でも多分、秋良は撮ってないんじゃない?」


「……そう言や、やたらと先生が撮ってた……か?」


「……あぁ! そうだったね!」


「中学校の卒業式? 何かあったか?」



 中学校となると道弘ももちろん写り込んでいるが、忘れっぽい道弘のことを俺は端から当てにしてなかった。


 そんなのは日頃からで道弘はそのことに傷ついてはなくて、ただ心底不思議そうな顔をして俺を見ていた。


 俺はふと思い返して気になった、先生が持っていたカメラがどんなだったかを思い出そうと記憶を手繰り寄せていた。



 まさか、あの時のなのか……?


 思い返せば、撮られた時の場所とポーズが合ってる気がする。


 でも、なんで先生のカメラがあるんだ?


 ──これ、親父のだよな?


 ──一体、どうなってるんだ??



 何枚かの写真が押すボタンと連動して変わって行くと、次の写真が出て来なくなって、ファイリングしている写真の最後の写真なことに気づく。


 途中で見つけた三人の写真に戻してから、俺は凜人と道弘にも見れるように真ん中に置いた。



「結局なんだったの?」



 そう凜人に聞かれた俺は、ただ「見れば分かる」とだけ答えた。

 

 訝しげに俺を見ながら、恐る恐るカメラの画面に目を向ける凜人は、少ししてから俺が伝えたいことが分かったらしい。


 道弘は懐かしさに瑠輝と真依に絡みながらはしゃいでいた。



「これって……」


「1年しかたってねぇのに既に懐かしいよな」


「道弘はホント……。違和感感じないの?」


「違和感?」



 首を傾げながらもう一度、今度はカメラを手にとって眺める道弘。



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