第8話
慌てて玄関に向かうと、二人はすでに裸足で上がり框から降りていて、真依がドアノブに手を掛けて開いていた。
その時になっていつの間にか靴下を脱いでたことに気づく。
靴下どこやった!? いや、それより──
「「 らっしゃーい! 」」
子供の行動力ハンパねぇな……。
「真依ちゃん、瑠輝くん久しぶりだねー」
「元気だったか?」
開いた先から凜人と道弘が顔を出すと、直ぐさま真依は凜人に、瑠輝は道弘に抱きついた。
「リンちゃん!」
「みっちゃ!」
「真依ちゃん、今日は熱烈の歓迎だね」
「なんだ瑠輝。体重が重たくなってきたな!」
「…………」
二人のおもてなしに凜人も道弘と嬉々として抱き上げている。
「真依ちゃんのワンピース可愛いね!」
「ほんと!?」
「瑠輝のは迷彩パンツ、イカしてんな!」
「えへ!」
まるで天国にいるみたいに酔っていそうなほど喜ぶ友達二人に俺は遠い目をして言う。
「……お前ら本当に良かったな」
「そうだね。この前、俺と真依ちゃんを朝から夜まで二人きりにさせてくれて良かったよ」
いや、あれは急に親父から呼び出しくらったからでっ!
「語弊がある言い方すんじゃねぇ!!」
変な言いまわししやがって……!
今の知らねぇヤツが聞いたら、一発で誤解を生む言い方してたぞ!?
一緒にいたのは、“夜”までじゃなく、“夕方”までだろうが!!
話しをしていると、リビングの方から春良が顔を出してきた。
「こんばんは、凜人さん、道弘さん」
「あ、春良くん。こんばんは、久しぶりだね」
「久しぶりぃ! 相変わらず、兄貴に似ずに正統派イケメンだな」
「お久しぶりです。道弘さん、それだと兄さんが拗ねますよ」
「お前の言葉が一番傷つくわ!」
俺は春良の頭を軽く叩くと、春良は「そう?」ととぼけてくる。
「あ、凜人さんも道弘さんも上がって下さい」
「おじゃまします」
「おじゃましまーす」
「すみません。真依と瑠輝、もう少し抱いててもらって良いですか?」
靴を脱いで上がる二人にそう言うと、洗面所へ行って濡れたタオルを一枚持って来た。
「真依、瑠輝。裸足で降りちゃダメって何度も言ってるでしょ」
「「ごめんなさい……」」
「もうしちゃだめだよ。足汚れちゃうんだからね」
「「はーい」」
春良が優しい声音で怒ると、持って来たタオルで二人の足を拭いてあげていた。
綺麗になった足で下ろされた真依と瑠輝は、それぞれ凜人と道弘に「ありがとう」と言ってから居間へと案内をする。
ぞろぞろと揃って居間に入ると、料理をしていた紀子さんが笑顔で迎え入れた。
「凜人くんも道弘くんも、いらっしゃい。
夕飯はまだ食べてない? 秋良くんから聞いてるかしら」
「聞いてます!俺達の分も作ってくださってありがとうございます!」
「紀子さんの料理、楽しみにしてました!」
「ふふ、良かったわ」
照れたようなはにかんだ笑みを見せてから、思い出したように二人の荷物を見て言う。
「あら、悪いんだけど荷物は秋良くんの部屋に置いて来てもらえるかしら?」
「分かりました!」
「うっす!」
俺は凜人と道弘を連れて部屋に向かうと、階段を上がってる時に凜人が呼ばれた件について触れて来た。
「──それで。デジタルカメラって小学校の時の?」
「あぁ。俺が撮ってただろ?」
「うん。あの頃だと、俺と祐太が写ってそうだよね」
「あーそれな。……祐太か。連絡先知らねーんだよな」
「じゃぁ、知り合いに当たってみるよ」
「おぉ、よろしく」
忘れてた。小学校の頃は良く三人でつるんでたんだったな。
そんで確か、祐太は6年生に進級する時に引っ越したんだっけか。今どこにいんだろ……。
裕太とは中学校に進級して間もなく、部活やら仲の他に良い友達が出来て余り話さなくなってしまった。
高校に入学してからはもっとだ。そもそも同じ高校を受験してないから会うこともない。
携帯を持ち始めたのも高校生になってからだしな。連絡を取り合う手段がないんだから疎遠になって当たり前か……。
「しっかしお二人の小学生時代か。楽しみだな」
「そう言えばアレ持って来た? 小学生の頃の写真」
「持って来たぜ。卒業アルバムで良かったよな?」
「うん」
凜人と道弘の話しに何も聞かされていない俺は、訝しげに思って聞いていた。
「なんでそんなもん持って来たんだ?」
「折角だしと思ってさ。道弘は中学生から仲良くなったでしょ。
小学校の道弘がどんなだったかなんて、機会ないと見れないじゃん?」
「あぁ、まぁな」
「だから見せ合いっこでもしようかなと思ってさ」
なるほど。それで、卒業アルバムってわけか。
道弘の子供の頃とか、確かにすげぇ気になるもんな。ぜってぇ今と変ってねぇだろうな。
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