第3話 満足してもまた欲が出る

ナギさんはいつの間にか居なくなって、少し離れた所で美人なお姉さんをナンパしている。


「真帆、お爺様がまだ来てないみたいなんです。心配なのと、真帆を紹介したいので一緒に来ていただけますか?」


「王様っぽい人居ないなぁとは思ってたの。分かった。でも10秒待って」


「あ…はい…」


私は大きな深呼吸をする。そして。

「スゥーーーはぁーーー…」

(最初にお爺様の所行かなかったから、今日は挨拶しないセーーフって思ってたのに今かよー! もっとお嬢様言葉勉強してくるんだったーーーー!)


心の中で存分に叫んで満足した私。

でも何故か足が震えてる。


「よし、オッケー。行こう!」


「はい。 ふふっ」


軽く口を塞ぎながらサーラスは笑った。


「もしかして心読んだの?」


「読んでませんよ」


サーラスが今にも笑いそうで堪えてる。


「絶対読んだよね!」


「読んでません」


「読んだ!  あっ…」


言い合いに夢中になって居たら、ワンピースの裾を踏んでしまって前に転け…。


ばふっ!


目を開けるとサーラスが私の体を支えてくれている。私の体を支えながら仰向けにして、甘い顔で私を見てる。


「大丈夫ですか? お怪我はないですか?」


(あー、幸せ。 役って言っても顔アルベルトだし、推しに抱き寄せられるのって幸せ以外何者でも無いよ。もー、結婚しちゃう? このままキス? はたまた、髪ぱく来ちゃう?)


「心の中なのにすっごく早口ですね」


サーラスは目が無くなるような優しい笑顔だ。


「もう!また心読んだの?」


「だって返事がないから具合でも悪いのかと思ったんです。そんなにキスがしたいですか?」


「え…」


サーラスの顔がどんどん近づいて来る。

心臓やば。心臓の音で周りの音が何も聞こえないぐらいドキドキしてる。

そっと目を瞑る私。


「まだしない。真帆が本当の僕を好きになったその時には覚悟しててね」


甘々ボイスが私の耳の横で囁いた。


(女性ホルモン放出〜… 声だけで妊娠しちゃうよ)←不可能


「なんかこっち来てから私どんどん変態になって来てる気が… 」


サーラスは、頭を抱えてぶつぶつ言ってる私の手をそっと引いて、腕の中へ入れた。


「さ、お爺様の所へ行きますよ。緊張しなくても大丈夫です」


「うん… 頑張る」


私の歩幅に合わせて歩いてくれながら、お爺様のお部屋へ向かった。

お爺様ってどんな人なんだろう。


「サーラス様!帝王様が!」


向かっていると部屋の前に見張をして居た執事が走って来た。


「何かあったのか!?」


「とにかくこちらへ来てください!」


「ちょうど行くところだったんだ。急ごう!真帆すまないが少し走ります」


(きゅんっ)


腕に回してた私の手を握り走る。

非常事態かもしれない時にまたドキドキしてしまう。


パチンッ!

私は手を繋いでない方の手で頬を叩く。

(今はお爺様の様子が最優先!ドキドキしてる場合じゃない)


「はぁ、はぁ、はぁ。 お爺様!!」


ギーーーーィ!


サーラスはドアを強く開けた。


「お爺…」


サーラスの体で前が見えない。そっと覗くと…


「何してるんですか、お爺様」


「お……い」

「遅いよ〜さっちゃーん。うわーんうわーん。じぃ待ちくたびれたゾ⭐︎」


目の前の光景を把握するのに時間がかかった。部屋はすごく豪華で床は赤い絨毯、シャンデリア、窓には窓淵が数ヶ所あって、大きいソファなどもある、THE王の部屋って感じなんだけど…


「その座ってる椅子って、私の世界でも人気なgothisoじゃん!座ったらそこから動けなくなるやつ。いや、誰が使っても良いんだけど、ベッドの上で使ってるよ!このベッドも高そうで寝心地良さそうなのに、クッション×クッションの贅沢使い!!」


……はっ!


思わず口に出てしまった私は口を塞ぐ。


(何をあの執事さん慌ててたんだろう)




「遅いって、僕がここへ着いた時はもう準備が出来てると聞いたからお爺様が会場へもう来てると思ったんだ」


「そんなもん知らんわい!ワシは『会わせたい人がいる』と聞いたら、まず初めにワシの元へ来ると思うじゃろうが」


「まぁ…そうか、すまないお爺様」


「そうじゃよ!だってだって…」


お爺様の妄想ー

「お爺様、すごくお若い!本当にお爺様ですか?お肌もツルツルピカピカ、色気も漂って、この逞しい筋肉、もうお兄さ…ま…と呼んでも宜しいでしょうか」


お爺様の胸に密着する私。


「良いぞ、良いぞ。いっそのことワシの第2の妻にならんか」


すこぶるニヤけるお爺様。


「わ、私には大事な人が居るのですが… お爺様を見てしまってはこの感覚が忘れられません… 私はどうしたら…」



「ちょーーーーーーっと待ったーーー!」


サーラスの大声を初めて聞いた。


「お爺様、色々とヤバイです。訴えられますよ?」


(うん、そうだよね。ツッコミ所が多すぎていつ切ろうかと思ってたけどあまりにも生き生きとしすぎて。まぁ?確かにお肌ツルツルピカピカは合っ…てるけど、筋肉どこよ。もう今まで頑張って来たんだから見栄張らないで、今の自分でも十分自信持ってよ)


「お、お肌ツルツル〜ピカピカ〜ですぅ。まだ挨拶もしてませんので、密着はできませんがまた、機会があればよろし…」


私が話終わりそうな瞬間目の前のお爺様が消えた。…と思ったらすぐ横に来て居た。


「ツルツルピカピカは主に頭の事じゃろ。いくら爺さんでも気にする人は気にする、あんまり適当に話すと痛い目に合うぞ小娘…」


耳の横で、すごい圧のある低い声で話してきたお爺様の殺気が強烈だ。


「もし、そんな事を考えて居たら心が読める人がこんな爺さんでも魔法でイチコロだぞっ⭐︎ まー、ワシは心読めんのだけどな〜

あっはっはっは」


「ひゃっ」


私の耳に息を吹きかけて元の場所へ一瞬の速さで戻った。


(こ、怖い… 絶対心読めるだろこの人)


サーラスはこちらを向かずにうんと頷いた。


(ひぃーー、こえー。さっきの結婚するの撤回!早く条件満たして帰る!)


コロコロ気持ちが変わる私を見てるサーラスの顔がしゅんとしながら、言葉に出さなくても『帰らないで』と言っているのが分かった。


「お嬢さんちょっと怖がらせてしまったかのう?悪いな、ちょっとしたイタズラじゃよ。許してくれ」


「い、いえ…。お招きありがとうございます。私は新田 真帆、及びキュート・ラブと申します」


私はゆっくりと一礼した。



「では、キューちゃんと呼ばせてもらおう。キューちゃん、サーちゃんの1番好きな所はなんだ?」



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イセ婚 陽向アカネ @fuwawa-n

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