第4話

結局、大型店へ行き、ベビー布団、ベビーカーや抱っこ紐も買ってしまった。粉ミルクも、新生児用の物や、液体ミルクも買った。ベビー石鹸やタオル類も買った。紙オムツも二袋買った。結構な出費だった。にぎにぎするおもちゃも買ってあげた。大きな荷物は宅配してもらった。

 服がびっくりするくらい高くて買えなかった。結局、陶子が二人の娘に、捨て子を拾ったことを打ち明けたのは、赤ん坊を見つけた二日後だった。二人ともびっくりして、最初は預かることに大反対した。しかし、施設に相談するつもりであること、警察に言って、母親の元に返されたら、かえって危険だと思うことを二人とも理解した。

「お母さん、子供服なら、すみれのお下がりあげるよ。」

 すみれというのは、陶子の四歳になる孫娘だ。

「助かる。高くて買えないのよ、ベビー服。」

「安いお店があるから、今度買って来てあげるよ。」

 二人の娘は赤ん坊を見に来た。そして、

「お母さんも咲子おばさんも、もう若くないんだから、赤ちゃんのお世話は無理があるわよ。」

「若くても大変なんだから。」

咲子は、

「私には子育ての経験がないから、うまくできるかどうか自信はないの。」

「このお母さんを探してみるのも手よ。この子が虐待されるとは限らないわよ。それに、そうだとしても、お母さんたちの責任じゃないんだから。」

「まあ、あなたはなんて冷たいことを言うの。」

「児童養護施設にはいつ相談するの?」

「じゃあ、明日行ってみるわ。こうやって毎日見ていると、情が湧いてしまいそう。」

「可愛い赤ちゃんね。」

「本当に。この子に罪はないのに、かわいそうに。」

 すみれは、ベビー布団に寝かされた赤ん坊を不思議そうにじっとみていた。

 「おばあちゃん、この赤ちゃんのママは誰?」

「うん。ちょっとこの赤ちゃんのママがおばあちゃんに赤ちゃんの面倒みてくださいって言ったのよ。」

「ふうん。」

 すみれは小さな手で赤ん坊のおでこを撫でた。

 陶子は深くため息をついた。咲子が、

「明日、お姉さんと二人で児童養護施設に相談に行ってくるわ。専門家の意見、聞いた方がいいわね。」

 二人の娘たちは、

「それがいいわ、そうして。」

と、声を揃えて言った。

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