第5話 助けた対価は
でも、
助けてもらったのだから、なにかを払わなければいけないとして、でも神さまはお金など使わないだろうし。
「あ、油揚げ? それか稲荷ずし?」
「おい。そんな毎日毎日供えられているものなんて、誰が欲しいと思うんだよ」
「だって、お狐さまの好物なんでしょ?」
「だから、俺は神さまだっつーの。もっと他の物があるだろう。お前の体とか。ま、初回だし、いきなりそんな大きな物はまずいか。そうだな、簡単なとこでベロチューとかどうだ?」
「は、変態。ベロチューして欲しいなんて言う神さまなんて、見たことも聞いたこともないわ。中二病か」
鼻で笑ったあと、ジトリと睨みつける。
「な、なんだよ。そんな虫けらでも見る目は。助けてもらって、失礼だろう」
「いやいや、女子高生にベロチューして欲しいなんて、もはや犯罪でしょう」
「俺はこの世界の理とは違うとこで生きてるからいいんだよ。だいたい、おまえ胸もませろって言っても、ないだろう。って、いてー」
言い終わるか終わらないかのところで、私は蹴りを入れる。
私の蹴りは見事に彼の
人が一番気にしていることを、大声で言う奴は敵でしかない。
これでもまだまだ成長途中なんだから。
「サイテー。ないわ」
「なんだよ、せっかく助けてやったのにそれはないだろう。じゃ、最大限に譲って……、よしパンツくれ」
「うわぁ、もう本当にありえない。
「そんな難しい言葉出してくるんじゃねーよ。パンツでいいって言ってるんだ。あ、おい、ちゃんと明日の朝までには供えておけよ。
彼の言葉を無視し、母屋へと歩き出す。
助けた神様が祟るって……。
「おい、千夏きーてるのか? 無視するんじゃない。それが嫌なら、軽いキスとかでも」
「まだ言うか……」
ダメだ、このお狐さまだか神さまだか。
顔はイケメンなのに、頭の中がエロくて残念過ぎる。
「ねぇ、そういえば名前聞くの忘れてた。なんて言うの?」
「ん、ああ……シンと呼んでくれ」
私が振り返ると、やや考えたように彼は答える。
ああ、まただ。
あのどこかもの悲しそうな瞳。
どうしてそんな目で私を見るのだろう。
「ねえ、もしかして、昔どこかで……」
「パンツは明日の朝までだからな。過ぎたら違うもの貰いに行くからな!」
「変態」
ドラマチックな想像をした自分を返して欲しい。
ただ少しだけ、先ほどまでの怖かった気持ちが薄れたということは絶対に言わない。
「またね、シン」
午後の山風が強く吹いたかと思うと、もうそこにシンと名乗った神さまの姿はなかった。
「ああ、おばあちゃんのパンツでも、いっか。どうせ、パンツはパンツだし」
絶対に何があっても深淵など覗くものかと誓いながら、私は心地よい風に吹かれ歩き出した。
神隠しから助けてくれたお狐さまの対価がエロいんですが 美杉。節約令嬢、書籍化進行中 @yy_misugi
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