第7話 魔女の呪い

村に戻り、ギルドにチハの残骸を見せると、ギルドは歓声で包まれた。聞けば、チハは「魔女の呪い」という災厄の一つで、今までいくつもの集落がこいつに潰されてきたらしい。かつては国王直轄の近衛重砲師団まで投入されたが、それでも倒せなかったとか。チハに苦しめられてきた人たちは、俺たちがチハを倒したと聞いて、まるで自分のことのように喜んでくれた。


村長も出てきて、村中の人たちがダッチと俺を囲み、口々に感謝を述べてくれる。正直、こんなに感謝されるのは初めての経験だ。俺もダッチも、まさかここまで大騒ぎになるとは思っていなかった。


やがて、村の女性神官ナターシャが現れ、チハの残骸に向かって何か呪文のようなものを唱え始めた。どうやら、残骸に宿っている「魔女の呪い」を浄化してくれるらしい。ナターシャの唱える呪文が響く中、やがてチハの残骸から幽体のような影が現れた。それは戦車兵のようで、どこか哀しげな表情を浮かべていた。


村長が彼らに語りかける。


「おそらく君たちは、愛するもののために戦った、名のない英雄だったのだろう。しかし、君たちを縛っていた魔女の呪いはもう散った。さあ、還るがいい」


その言葉に応えるように、兵士たちは光に包まれ、ゆっくりと天に昇っていく。俺も、ダッチも、村の人たちも、みんなでその光を見送りながら、彼らの終わった戦いに安堵の息をついた。


すぐに村では祝賀会が開かれ、みんながどんちゃん騒ぎで喜んでくれた。テーブルには料理が山のように並び、俺の目の前には見たこともないごちそうが次々と出されてくる。もともと俺はヒキニートだったから、こういう宴会の場は苦手なんだけど……それでも、こうして人の役に立てるのは、悪くないと思えてきた。


ふと目の前に、酒が入ったグラスを持って立っているダッチがいる。


「ニシシっ、こういうのも悪くないでしょ? これからもよろしくねっ、私の相棒くん」


そう言って、ダッチはグラスを差し出してくる。俺も照れ臭いけど、グラスを持ち上げ、ダッチとカチンと合わせる。


「……ああ、こっちこそよろしく、相棒」


ダッチと俺は、たしかに今、友だちでも相棒でもあるけど、ただそれだけじゃない。俺はこのとき、少しずつだけど「人」として、ダッチと対等な関係を築き始めている気がした。


夜空には眩しいくらい星が輝いていた。

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