第5話 九七式中戦車チハ

ちなみにダッチが冒険者ギルドの登録と依頼の手続きまで済ませてくれたと聞いて、俺は内心で歓喜した。ダッチ、さすがに頼りになるわー。これでラブラブできる関係だったら、文句なしに最高なんだけどなあ……なんて考えながらダッチを見ていると、彼女がふと真面目な顔をして話しかけてきた。


「キヨシ、わたしも長い付き合いだし、もちろんキヨシのことは好き。でもだからこそ、キヨシにはヒキニートを治してもらいたいの。私がずっと某タヌキ型ロボットみたいに便利道具を出してたら、いつまでたっても成長しないでしょ?」


「なんだよ、それ……まるで俺のママみたいじゃん」と呟くと、ダッチはふふっと笑って肩をすくめた。


「そりゃそうよ。キヨシは赤ちゃんプレイが好きだもんね。前の世界でも私相手に散々それしてたでしょ?」


その指摘に、俺はなんとも言えない不満顔になってしまう。……だって、こっちの世界に来る前は、確かにそうだったかもしれないけどよ。言われると、なんか悔しい。


「じゃ、こうしよう。冒険者の依頼を一つ達成できたら、一回だけラブラブさせてあげる。それでたぶん10ポイントくらい貯まるから、その範囲内で便利道具を出してあげてもいい」


ダッチの提案に、俺の中でやる気スイッチが一気に入った。


「よっしゃ!じゃあ早速、最初の依頼は何だ!?」


俺の勢いにダッチは少し苦笑しながら、手にした依頼書を見せてくる。


「えーっと、最初の依頼は……魔女に呪いをかけられて自立的に動くようになった九七式中戦車、チハの討伐ね。参考写真ももらったけど、どうやら私たちの世界にあった戦車と似てるみたい」


「チハ!? やった!あんなやられメカ、俺たちなら余裕だぜ!」


目標も定まって、二人は早速、依頼にある瓦礫の森に向かって歩き出した。

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