第3話 ラブポイント
朝日が昇り、空が白み始めると、腹がぐうっと鳴った。昨夜は何も食わずに寝ちまったからな、空腹は当然だ。でも、この荒野に食べ物なんてあるわけもなく、どうしたもんかと考えていると、ダッチがふと口を開いた。
「ラブポイントを消費して、ニンジンでも召喚する?」
ラブポイント……まさかこのタイミングで聞くことになるとは。そういや、ダッチ——いや、公式にはエリス・プリンセスバニーって名前だったっけ——は、俺の趣味だった恋愛RPG「兎獣戦記‼︎ プリンセス♡バニー」のキャラクターなんだよな。
あのゲーム、なかなかエグいシステムがあって、ご主人様とバニーガールがイチャイチャすることで「ラブポイント」が貯まって、それを使えばいろんな瑞祥動物や物品を異世界から召喚できる。そのシステムがここでも使えるのか……。
「……なら、ミニスイートキャットが何発も出るラブバレットでもいいか?」
「はいよー」
あっさり承諾したダッチは、くるっと軽やかに動いて、手の中に二丁の拳銃——ラブバレットを取り出した。まさかそのラブバレットを俺に向けて構えるとは思ってもみなかったが、次の瞬間、ダッチの冷笑が一瞬だけ目に入った。
「じゃ、いっきまーす」
「えっ、ちょっ——」
撃たれた。
「ひぐぅ!!」
痛みで仰け反りながらも、俺の腹にズシンと埋まった何かに目をやる。見てみれば、拳銃から放たれたのはミニキャロットの弾丸だった。
ダッチは、俺の腹に減り込んだ弾をつまみ上げて口に入れると、「うん、瑞々しくって美味しい」とにっこり。俺もやむを得ず、自分の腹に埋まったミニキャロットを取り出して口に放り込んだが、確かにみずみずしくて美味い。
「でも……俺のお腹に撃ち込むなんて、酷くね?」
「だって、周りは荒野で受け皿がないんだもん」と、ダッチは肩をすくめて言いやがる。
まぁ、俺が食べる分も多めにくれたし、合計30発のミニキャロットのうち、20発は俺が食っていいって言われたから、文句はこれくらいにしておくか。
朝飯を終えて、さてこれからどうするかという話になった。ラブポイントの残りは301ポイント。ラブバレットを使ったせいで299ポイントに減っちまったが、今後も使うことを考えると、無駄遣いは避けたほうが良さそうだ。
「なあ、いつもみたいに愛し合えばラブポイント貯まるんじゃねえの?」
俺がぽつりと提案すると、ダッチは即座に無情な声で応じた。
「はーい、ダメでーす。友だちにはやらせませーん」
くそっ、友だち扱いされるのもなんだか釈然としねえし、かといってお預けもなんか不満だ。
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