第2話 肉布団

俺とダッチは、ただただ広がる荒野を歩き続けていた。どこを見ても地平線が途切れることなく続く、何もない風景。ふと目の前のダッチに視線を移した。うさぎの尻尾が揺れる後ろ姿の方が、どう考えてもこの殺風景な景色よりも目の保養になる。


ダッチの格好は「バニーガールナイト」とかいう謎の衣装。バニーガールのセクシーさと騎士の装備が不思議と混ざり合って、腰には長剣をぶら下げている。揺れる尻尾に、つい見入ってしまう。


「なあダッチ? そろそろ……いつもの日課、したいんだが?」


ダッチは足を止め、振り返って呆れたように言い放った。


「はぁ?友だちなんだろ?ならダメだっつの」


その言葉にしょんぼりと肩を落とした。しかしダッチはため息をつきながら、しばらく考えたあと、ぽつりと言う。


「……仕方ないな。いいよ、シッポだけなら、いつもみたいに触らせてやる」


その一言で心に火が点いた。


「ダッチ!ダッチ!ダッチ!ダッチ!ぅぅうううわぁあああああああああああああああああああん!!!

あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ダッチ!ダッチ!ダッチ!ぅううぁわぁああああ!!!

あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん

んはぁっ!ダッチたんの純白フワフワしっぽをクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!

間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!しっぽしっぽモフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!」


「……キモい……」


その一言で、ついに果てた。息を荒らげながら、ぽつりと満足げに呟いてしまう。


「はぁはぁ……最後の『キモい』が決め手だった……やっぱりダッチは最高のダチだ」


ダッチはあからさまに嫌そうな顔で俺を見て、深いため息をついた。


やがて日も傾き、辺りは薄暗くなり始めた。俺とダッチはここで一夜を過ごすことに決め、ビバークの準備を整える。そして星が瞬き出すと、俺たち二人は無言でその美しさを眺めた。冷え込みを感じ始めた頃、ダッチがやおら寄りかかり、俺を肉布団にして眠りに落ちた。


「おい、布団じゃねえんだぞ……まあ、いいけどよ」


道具みたいな扱いだが、誰かに頼られるのは嫌じゃない。傍でダッチがスヤスヤと眠る。


静かで落ち着く夜だ。

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