この恋に名前があるのなら、君はこの「 」になんてつけるのだろうか
@murayu-
第1話
目が覚めると、メガネが似合う君がいた。
終点、20時過ぎ。回りの人が切符や定期券を車掌さんに渡したり、見せたりしていなくなる中で、この車両は僕と君だけしかいない。
「起こしてあげた方がいいかな、、、」
そう小さくこぼすと君が目を覚まし、すぐに古びた車両から降りていく。
「また、話せなかったか」
いつか告白しよう。そう考えているうちに、君を好きになって5回目の夏がやってきた。
この恋に名前を付けるとしたら、僕は…
初めて君と話したのは中学一年の冬。
その学年最後の席替えがあった。僕の通っていた中学校では、初めから班長を決め、班長同士の話し合いで班員が決まっていく。
「おーい、阿月!お前、柚菜さんと同じ班になれるといいな」
「うるせぇ」
「"あの人"班長に選ばれたし、同じ班に選んでくれないかなぁ~とか、考えてるんじゃないの?」
「アホか」
僕に話しかけてきたのは、同じ部活で親友の大智だった。大智には僕の好きな人を教えてしまったので、それからずっと弄られている。だけど、大智にだったら弄られてもいいと思えるのは、きっとこいつを信用してるからだ。
「お前は好きな人いないのかよ」
「うーん、俺はまだいないかなぁ」
「だけど最近、雪李さんの方見てるじゃん」
「ばーか、俺じゃ無理だよ」
「意外といけるかも知んねーのにな」
そう話していると、授業開始チャイムが鳴ったのでそれぞれの席に着く。
たしか、席替えと新しい班の発表は今日の放課後だった。それまで少しの淡い期待を残しつつ僕は教室の外を眺める。
と言っても、ついこの間まで緑色の葉で着飾っていた木も葉が全部散り丸裸になったものしか見えないのだが。
時の流れはあっという間でもう放課後だ。
他クラスの連中が部活だ、帰宅だので廊下を走ったり騒いだりしては先生に注意されている。
僕のクラスでは、
「は~い、席替えの発表していくぞー」
先生がやる気のない声でそう言ったあとに続けて、班長が自分の班員と座席を発表している。
「私の班は…」
そして、その時がやってきた。
柚菜さんが1人また1人と班員を発表していき、残り二人になった。今の段階では僕の名前はあがっていなし、残りの班の数も少ない。それに、女子が半分発表されたのであとは男子だけた。
「大智くん。」
残り2人のうち1人は大智だった。
少し複雑な気持ちだ。
そして、最後の1人…
「阿月くん。」
僕の名前だった。聞き間違えかと思って黒板の方を見る。
座席表のところに貼られる自分の名前。
窓際で席自体はこの位置と差程変わらないが、右隣には柚菜さんの名前があった。
それだけで、ただただ嬉しく、心の内側から温まって感じた。
そして、一通り席替えの発表が終わりみんなが新しい席に机と椅子を移動させる。もう新しい班に慣れ始めている人も中にはいる。
そうやって周りを見ていると、
「一年最後の班、期間は短いけど、よろしくね!」
「は、はい。」
「何で敬語?」
緊張のあまり敬語なってしまった。その事が可笑しかったのか彼女は、思わずクスッと笑った。
僕もそれにつられて、緊張の糸が切れ、ふっと口もとが緩んだ。
「ごめんねー、君があまりにも緊張してたからつい。」
「いや、全然気にしてないよ!」
まだ笑いの余韻を残しつつ、少しだけ申し訳なく思ったのか謝ってくれた。僕は急いで気にしてないと伝える。
内心、君に笑われるのは嬉しいし、君の笑顔を見れるのはもっと嬉しい。
「改めてよろしくね!阿月くん!」
「よろしく柚菜さん!」|
これが君と僕の初めての会話だった。
この恋に名前があるのなら、君はこの「 」になんてつけるのだろうか @murayu-
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