3-9 会談に向けて
明日はとうとう、隣国であるタンザ帝国との会談だ。会談は国境付近の会場で行われることになっている。国の代表として臨むアメリアの兄、王太子アルフレッドは、いつも通りの柔和な笑顔を浮かべてこう言った。
「アメリア。帝国には、お前をを拐かした代償を支払わせてやるからね」
アメリアは、身内の迫力に震えた。穏やかな兄の後ろに、修羅が見えたからである。
「お兄様、やりすぎないでね……?」
「アンリが付いてるから、大丈夫だよ。いなかったら向こうの皇太子に……うっかり手が出ちゃうかも?」
「しっかり見張ります」
兄はアメリアが思っていた以上の、猛獣だったようだ。
「俺が行ったら、確実に手を出してしまう。そっちはよろしくお願いします」
兄よりも更に強火の夫、レオンがそう言った。鋭い殺気を隠してもいない。
これにはアンリが若干心配そうに言った。
「お前……オリヴィエのことは、生かして捕らえてこいよ?奴には余罪が沢山あるだろう。自白させる必要がある」
「………………分かってる」
レオンは大変不服そうだ。こちらは、アメリアが見張る必要があるかもしれない。
国境付近を探りに入っていた騎士たちからは、次々と情報が入っていた。魔獣軍が少しずつ、こちらに輸送されているとのことだ。
武力で国境線に迫っていることをちらつかせ、会談を有利に進めてくるつもりなのだろう。卑怯な手に屈するわけにはいかない。
「明日は頑張りましょうね」
「アメリアのことは、必ず守るから」
アメリアが話しかけると、レオンの殺気は霧散した。勝負の日がやってくる。
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