赤髪の少女


 ゴーレムが構えながら僕を見定めている。


 今さっきこのゴーレムが簡単に俺の攻撃を喰らったのは油断していただけみたいだね。壁を背にしている僕の方が不利か。難しい。喧嘩すらしたことが僕にはなかったのだ。殺し合いなんてはじめてだ。だからここは自分の感覚に任せるしかない。


 動いたのは同時だった。

僕の選択肢は一歩相手に近づくことだ。それが一番無難な気がしたから。

 ゴーレムの素早い拳が迫ってきた。読んでいたわけではない。だけどゴーレムの拳に対して僕は棍棒をフルスイングした。


 激突。


 相手の攻撃は溜めがなかったので力で勝った。

 ゴーレムが怯んでる今がチャンスだ!機は逃さない!攻撃してきた腕に向かって棍棒を上からたたき落とす!


「ガガガガガガ!!」


 やっぱり効いたか!今なら攻撃を当てた右腕側は隙だらけなはず!

 僕はすかさず相手の右腕の上に向かって飛ぶ。


「お次はこれだ!喰らえ!」


 ゴーレムの顔に向かって思いっきり棍棒をスイングする。


「ガーーーーーーーー!!」


 ゴーレムは大きな声を出しながら吹き飛び壁にぶつかり大きな衝撃がした。


「今しかない!叩き込む!」


 僕はゴーレムに追撃するために一気に接近する。

 その時だった。相手が体制を立て直したのが見えたと思った瞬間、目の前に拳が迫ってきていた。


「はや……ぐぅ!」


 動きが速すぎて反応できなかった!追撃しようとしてたからモロに喰らってしまった!


「隙を狙っていたわけか……!」

 

 拳の衝撃で逆に反対側の壁にまで吹き飛ばされてしまった。


「痛い!痛い!なにこれ……」」


 骨にヒビがはいったのか!?初めての強烈な痛みだ!!

 そうしている間にもゴーレムが近づいてきているのに..!


 だけどここで死ぬわけにはいかない!

 僕は必死に立ち上がる。その時だった。




 静かな足音が出入り口から聞こえる。ゴーレムもそれに気づいたみたいで出入り口の方を向いている。

 助けてくれるかも!でも久しぶりの家族以外の人だよね。怖いな……


「これは...どういう状況かしら?」


 赤髪の少女……短剣を構えてる。自分と近い年齢くらいなのかな?

 綺麗な人……アニメの世界の人みたい……

 思わずその少女に僕は見惚れてしまう。


「あんた……一人でこんなところに来てなにをしているの?」


 説明はしたいけど、気が抜けないから話せないんだよね……


「あぁ、なるほどね。そこに動かずにいなさい。私がこいつを片付ける」


 へ!?消えた!?動きが見えない!!


 その瞬間大きな音がしてゴーレムが吹き飛ばされていた。先ほど敵のいた位置に少女が立っている。

 棍棒を持ってから僕は動体視力も反応速度も上がったはずなのに……!


『影刀裂波』


 少女がそう呟いたと同時に少女は速い速度で空を斬ると同時に、黒い縦の波動がゴーレムに向かって飛んでいった。


「ガガガガガ!!」


 少女は何度も空を斬り、黒い波動をゴーレムに飛ばす。自分の時より明らかに敵にダメージがはいっている。

 ゴーレムはなにも動けず、ただ黒い波動を喰らい続けている。


「終わらせる」


 そう少女は呟いたのが聞こえた時には、ゴーレムの目に短刀を突きさしていた。

そして短刀で目をえぐるように、引っ搔き回した。


「ガ……ガ……ガ……」


 そうするとゴーレムは動かなくなり消滅した。

 するとゴーレムのいたところに青い光が漂った。少女は袋のようなものを出した。すると袋の中に青い光が入っていき消えた。


「凄い……」


 その言葉しかでてこないよ。体の痛みも忘れるほどに。

 僕とはレベルが違いすぎる。


「さて、あなたも別の世界からきたのよね?

ダンジョンの中に出現するとは珍しい。運が悪かったわね。」


 少女は振り返り僕に対して言う。

 あれ?大体僕の事情を理解している?どういうことなんだろ?

 びっくりして言葉がでない。人と話すのも久しぶりだし……


「私はローシェ。人の心が私には読める」

「へ?」


 まるでファンタジーだなぁ……いやいやてことはさっき見惚れてたのバレてる。


 終わった……


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