大富豪の遺書
弁護士のアントはとある大富豪の顧問弁護士をしていた。
そして生い先が短くなった大富豪はアントの手伝いのもと遺書を書くこととなった。
数週間後大富豪が亡くなりアントは病室に集まった家族に遺書を公開することとなった。
莫大な遺産を誰が相続するのか家族全員が固唾を飲んで見守っていた。
「では、遺言を読み上げます」
アントは厳粛な口調で言った。
「まずは最愛の妻へ」
大富豪の妻の背筋が伸びる。
「君が欲しがっていた別荘は君のものだ」
「ほんと!?」
妻の顔が明るくなり、立ち上がってアントに聞き返した。
アントは頷き遺書の書かれている部分を見せて確認した。
そしてアントは続けた。
「次に長男へ」
長男が唾をごくりと飲み込んだ。
「君には家業の運営権を託す、これからは君が社長だ」
長男は拳を握りしめて静かに喜んだ。
「最後に娘へ」
娘はすでに破顔してアントの言葉を待っていた。
「君はずっと私の高級車コレクションを欲しがっていたね、すべて君に譲ろう」
「パパ大好き!」
娘は家族全員で肩を抱き合い父が残した遺産を喜び合っていた。
それを見てアントは少し咳ばらいをしてぽつりとこぼし始めた。
「言いにくいのですが、別荘を貰い受けるということは毎年かかる莫大な固定資産税を支払うという条件が付きます。たしか奥さんはいま働いていらっしゃらなかったですよね?」
「え……どういうこと?」
妻は驚いてアントに詰め寄る。
しかし、アントはそれを無視してさらに続けた。
「また、彼の会社は先日とあるプロ球団を買収したこともあり負債が300億ほどあります」
「なんだって!?」
「彼が所有していた車は両の手では数えきれないほどありましたので、それを維持するガレージの建設費と保険料はバカにはならないですね」
「うそでしょ!」
アントは静かに立ち上がると静かに歩いて病室の扉を開いた。
「財産の分配でお困りになるようでしたら、またなんでもご相談ください」
そう言い残しアントは去っていった。
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